韓国最大のクロハゲワシ越冬地と越冬する鳥たち【前編】

Report by 戸塚学 / 2024年1月12日~16日

 

なかなか参加者が集まらなかったのですが、現地通訳兼コーディネーターの朴さんから「まずやってみないと」という事で参加者3名、ガイド1名での催行となりましたが全日晴れで超少人数でのツアーは大成功だったと思います。

<1日目>

全員関空出発で、夕方釜山空港に到着だったのでまっすぐホテルへ向かいました。

<2日目>

クロハゲワシの給餌は10時からなので、8時にホテル隣のオモニ食堂で伝統的?韓国朝食をとって9時20分に出発です。遅いと思うだろうが現場まですぐなので十分間に合うのだ。現場近くになるとすでにクロハゲワシが飛んでいる姿が目に入ります。到着をして車の外に出るとすでに空いっぱいに怪鳥クロハゲワシが舞っています。観察用のテント内からエサに向って降りるクロハゲを狙いますが、風が向かい風なのですべてお尻向きなのが悔しい。次々と舞い降りるクロハゲワシであっという間に田が埋め尽くされる光景は圧巻です。時々餌を奪い合うために大騒ぎをすると砂ぼこりがこちらに来るので、これはマスクが必要だと実感!

空いっぱいに舞うクロハゲワシ
空いっぱいに舞うクロハゲワシ
クロハゲワシで田が埋め尽くされる
クロハゲワシで田が埋め尽くされる
クロハゲワシ群れ
クロハゲワシ群れ

光りがどうしても逆光側になるのでテントから外に出て光がいい場所に移動してから再び撮影続行です。3年前では考えられないぐらい近くまで来るので迫力満点!風も若干変わったことで降下してくる姿も撮影ができます。気がつけば12時を過ぎています。おなかを満たしたクロハゲワシたちは三々五々飛び立ち、半分以上が飛び立つとこれはこれで個体個体を撮影がしやすくなっていい感じ。予定時間をオーバーしましたが十分撮影を満喫できました。

クロハゲワシ
クロハゲワシ
降下するクロハゲワシ
降下するクロハゲワシ
クロハゲワシ
クロハゲワシ

昼食にサムゲタンを食べて午後のポイントに移動ですが、いつも行くポイントが昨年鳥インフルエンザで閉鎖されていたので今年は順天湾というところへ行きました。ここはナベヅルの越冬地で道路わきからはナベヅル、ヒシクイ、マガンの群れが見られ時折空をオオノスリやチョウゲンボウ、ハイイロチュウヒ、ノスリが飛んでいます。ここも残念ながら光が悪くなんともなりません。それでも順光側を飛ぶナベヅルやガン類の撮影を楽しみました。自然観察公園になっていて入場料を払うと園内に入れるのですが、時間がないのが悔しい。ここは1日中いたいなぁと思える雰囲気でした。夕食を食べてホテルに向かいました。

ナベヅル
ナベヅル
ヒシクイ
ヒシクイ

<3日目>

この日も前日と同じルーティーンでクロハゲワシのポイントへ向かうと???クロハゲワシもカラスもいない?アオサギの群れが畔にずらりと並んでいるだけ?お客さんはどんどん入るがクロハゲワシが集まらない・・・エサはあるのに。よく見るとまだビニールから出してない。これが原因か。暇なので給仕場の裏を覗くと参加者が「ギンムクドリが電線にとまっている」というので見てみるとムクドリと一緒にいます。石垣島で見ることはあってもまさかこんなところで見られるなんて!私も負けじと双眼鏡を覗くと???ヤツガシラが木の枝にとまっている!急いでみんなに知らせて説明をすると、先ほどの参加者が「こっちにもいます!」というのでそれを撮影しているともう1羽出てきて合計3羽も狭いエリアにいるではありませんか!畑で採餌したあとすべて飛び去りそれっきり姿を見せることはありませんでした。ギンムクドリがよく出る場所を観察しているとどうやら生ごみ置き場に集まっているようでした。そこで撮影と観察をしているとシロガシラがいるじゃありませんか!私はギンムクドリとシロガシラという沖縄の常連さんをこんな北の大地で見られるとは思いませんでした!

沖縄の常連ギンムクドリが!
沖縄の常連ギンムクドリが!
シロガシラ
シロガシラ

さて主役たちですがどうやら日曜日でお客さんや子供たちにレクチャーをしてから給餌を始めるようでエサを包んであるビニール袋を剥がすとすぐにカラスたちが集まってきます。その光景をどこかで見ていたようでクロハゲワシも集まってきますが、私たちは次のポイントへ移動するためここでタイムアップ!ただし昨日がっちりとクロハゲワシの撮影ができたので今日ができなくても大丈夫そうでした。それ以上にヤツガシラとギンムクドリが見られた方がよかったようです。次のポイントまで移動してここで昼食を食べ、そのままコウライバトの撮影を楽しみました。撮影をしているとそれまでのんびりとくつろいでいたハトたちがいきなり釣り鐘堂に飛び込んで行きます。おかしいなぁと思ったらオオタカ2羽が上空を飛んでいます!納得。ここでは昨年コイカルとオナガがたくさんいて撮影もできたのですが、今回は見当たらず残念です。この後は約2時間ほど、高速道路を走りホテルへ向かいました。

コウライバト
コウライバト
オオタカが上空を飛んでいた..!
オオタカが上空を飛んでいた..!

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

春の奄美大島でバードウォッチング三昧

Report by 吉成才丈 / 2022年3月17日~20日

<1日目>

予定通りに空港で集合。ローカルコンビニで軽い昼食をとった後、空港近くの港や海辺を観察しました。港にはめぼしい鳥の姿はありませんでしたが、潮が引いた海岸ではサルハマシギやトウネン、ムナグロ、オオメダイチドリなどのシギ・チドリが観察されました。
その後は建物で繁殖中のルリカケスをチェックし、早めにホテルにチェックイン。
そう、この夜はナイトツアーが控えているので、夜の準備をする必要があったのです。

早めの夕食をとった後に再出発し、夜の林道を巡るツアーに参加しました。直前まで雨が降っていて心配しましたが、林道のナイトツアーは雨上がりが一番よいコンディションなんだそうです。出発早々、日本で一番美しいというアマミイシカワガエルやアマミハナサキガエルなどが出現し、幸先の良いスタートとなりました。

アマミハナサキガエル(撮影:藤塚裕美様)

そろそろ鳥も..と期待していると、林道脇にアマミヤマシギも登場してくれました。2羽で並ぶ姿も見られましたが、オス・メスの識別は難しそうでしたね。
そしてナイトツアーの主役といえば、やはりアマミノクロウサギですね。この日は成獣から幼獣まで、いろいろな個体に出会うことができました。また、道路沿いにある巣穴も教えてもらい、アマミノクロウサギの生態を垣間見ることができました。

アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)

アマミノクロウサギ(撮影:藤塚裕美様)

 

主役も登場して満足していると、多くの人にとっては嬉しくない、あの危険ないきものも登場しました。「水たまりは危ない..」と脅かされましたが、どうやら脅しではなく、本当に危ないと身をもって感じることができましたね。(ハブやヒメハブの画像は出さないでおきます)
めったにできない体験に興奮しながらホテルに戻りました。

 

<2日目>

この日は暗いうちに出発し、地元のガイドさんに案内されて金作原に向かいました。金作原は奄美大島の中でも亜熱帯植物の原生林が残る自然ゆたかなエリアで、まさに奄美大島を象徴するスポットなのです。あいにくの雨模様で鳥の姿は少なかったのですが、アカヒゲやオオトラツグミの鳴声も聞かれ、奄美大島の自然を肌で感じることができました。

午後は名瀬から南の方面に向かい、森や草地、水辺の鳥をチェックしながら移動。オーストンオオアカゲラのドラミングのほか、カラスバトやズアカアオバトの鳴声、ササゴイ、クロサギ、ミサゴなどの姿を確認しました。昨夜は遅く、今朝も早かったので、この日も早めにホテルに戻ってお休みいただきました。

<3日目>

昨日も暗いうちに出発したのですが、この日はもっと早い時間に出発して、未明から明け方の観察を行いました。夜の鳥のメインターゲットは、初日のナイトツアーでは後ろ姿しか見られなかったリュウキュウコノハズクです。林道に入るとあちこちから鳴き声が聞こえ、姿もバッチリ確認することができました。全長20cmくらいしかない小さなフクロウは、本当にかわいいですよね。
リュウキュウコノハズクは耳で探し、目ではアマミヤマシギを探しながら、ゆっくりゆっくりと車を走らせてもらうと、道路脇にアマミヤマシギも発見。

リュウキュウコノハズク(撮影:藤塚裕美様 )

アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)

そして夜明け頃にはオオトラツグミの声も聞くことができ、未明時の探鳥は充実していました。
ホテルでの朝食後には、また別のスポットを訪ねてみました。小学校のグランド(というより草も生えている庭)では、ムクドリやツグミに混じってギンムクドリが採餌してました。
グランド際のアマミシジュウカラを見ていると、校舎のすぐ近くから、牛のようなカラスバトの声が..。まさかと思って探してみると、カラスバトが飛んで木の中に入りました。角度を変えて木の中を探すと、かろうじて頭だけ見ることができました。
それにしても、海沿いの学校なのに、ギンムクドリやカラスバトがいる学校なんて、すばらしいですよね。ちなみに登校日ではなかったので、学校にはだれもいませんでした。

ギンムクドリ(撮影:藤塚裕美様)

カラスバト

そして、奄美の知人に紹介してもらった場所に行ってみると、聞いていたとおりにルリカケスが近くで出迎えてくれました。ここは斜面上部に建物があるため、目線や眼下にルリカケスを見ることができるんですね。

ルリカケス(撮影:藤塚裕美様)

また道路際の斜面では、今回は姿はあきらめかけていたアカヒゲのオスが出現。ルリカケスに続いて大興奮でした。
午後は耕作地に立ち寄ると、予想していなかった暗色のサシバがいきなり出迎えてくれました。すぐに飛び立つと一気に移動し、その後は見つからなかったため、そのまま渡って行ったのかもしれません。とてもラッキーでした!

アカヒゲ(撮影:藤塚裕美様)

サシバ(暗色型)

<4日目>

最終日の朝は、ホテルの敷地でのんびり観察しました。近くで繁殖するルリカケスは定期的に現れ、駐車場のごみ箱などにもとまったりします。見ることすら大変だった過去があるとは思えない光景でした。

チェックアウト後には近くにクロサギでもいないか..と、海辺を流してもらいました。すると、岩にとまっているウミウを発見。しかしよく見ると、同じ岩にクロサギが座っていました。そう、陸から離れた海面に突き出した岩で抱卵していたのです。陸地からは適度な距離があったため、ちょっと観察させてもらいました。

 

クロサギ黒色型(撮影:藤塚裕美様)

また、もう少し進んだ海岸では、クロサギの白いタイプも発見。白いクロサギなんて紛らわしいですが、奄美大島には両方のタイプがいます。目の前を何度か飛んでくれたため、皆さん写真もバッチリ撮れたようです。

クロサギ白色型(撮影:藤塚裕美様)

そして空港近くの耕作地でサシバやシロハラクイナなどを観察し、ランチタイムには奄美パークで自由行動としました。銘々が田中一村の美術館を見たり敷地内で探鳥したりして楽しみ、奄美空港で解散しました。

今年はどこも冬鳥が少なく、奄美大島も例外ではありませんでしたが、いろいろな鳥たちに出会うことができ、ぐ~っと濃縮された4日間でした。

(観察種数60種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。