渡りの本流!韓国・春の離島【2024年5月 後編】

Report by 戸塚学 / 2024年5月1日~5日

 

3日目 晴れ

5時40分日の出と同時にスタートです。ところが・・・静かです。歩き出すと果樹畑にチュウサギとゴイサギが地面に嘴を突っ込みデカいミミズを引っ張り出して食べています。特にゴイサギはズグロミゾゴイに見えて仕方ない。チュウサギも負けじとミミズを引っ張り出していました。昨日あれほどいたムシクイ類がほとんどいない・・・抜けた予感がする。

ゴイサギ
ゴイサギ

しかし私たちの頭上をツバメ・コシアカツバメ・ショウドウツバメが乱舞しているという事はこの上に虫がたくさんいるのだろう。ホオジロ類は陽が上がり、明るくなると今までどこにいたのか、わらわらと地面と木の枝を行ったり来たりしています。8時に一旦食事に戻りました。食後は再び探しますが、午前中はパッとしません。早く鳥たちに来てもらいたいのですが、こればかりは仕方ありません。それでもカラアカハラのさえずる姿やオウチュウやコウライウグイスが飛んでいるのは確認できました。

カラアカハラ
カラアカハラ
オウチュウ
オウチュウ
 

ハイタカが飛び回っているのも鳥たちを隠す要因の一つになっているのかもしれない。昼食後はいったん休憩をしました。

ハイタカ
ハイタカ

14時再び鳥たちを探します。今回は2手に分かれて「待つ組」と「探査組」に分かれます。私は五百澤氏の「探査組」に同行しました。昨日水浴びでにぎやかだった水路はマヒワが来るぐらいでさっぱりでした。上空を2羽のハヤブサが喧嘩しながら飛んで行きます。

ハヤブサ
ハヤブサ

山の中の木道を進み広くなったデッキでしばし定点をすると、奥の樹上にとまるコウライウグイスのオス!交代で隙間からみんなで撮影をすることができました!

コウライウグイス
コウライウグイス

その後も鳥を探しながら移動をしますが、コイカルの声が響き渡り、時々ヒレンジャクも姿を確認できましたがパッとしないまま下山をすると・・・黒いスリムな鳥が?オウチュウです!しかし電線ばかりでいいところにとまってくれず飛び去られてしまった。下に来てみると今まで見なかった韓国のBWやカメラマンがたくさんいます。先ほど到着した船で来たようです。最近は韓国でも人口が増えていることを実感します。魚醤ポイントの近くまで来ると「待つ組」の二人が「韓国のカメラマンがエサを撒いたようで、さっきマミジロキビタキが撮れたの!」と興奮して教えてくれたのでそのポイントで待っていると、韓国の人たちも集まりかなりの人のフェンスが出来上がっています。これはもう無理かなと思って移動をすると小さな水たまりのところに若い韓国カメラマンがいて、なんと日本語でカメラのモニターに映し出された写真を見せ「これなんですか?」と聞いてきました。それはシマアオジのオス成鳥!それもドアップアップで撮っている!水場に来ていたところを撮ったとの事。探すと近くの木の枝にいたので何とか撮影をすることができました。しかしその後、草の中に入ってしまい姿が見えなくなってしまいました。

シマアオジ
シマアオジ

出てくるのを待っていると散歩のおじさんが歩いて来ると草むらから飛び出して魚醤ポイント方向に行ってしまった。見つかればいいなと歩いて行き魚醬ポイントで待っていると急に人が動き出した?イワミセキレイが出たのです。それをみんなで撮影することもできました。午前中は鳥たちが少なかったのですが、午後から結構な数と種類が補給されたようです。夕食は朴さんがオーダーをしてくれたサムギョプサルで祝杯を上げました。

イワミセキレイ
イワミセキレイ

 

4日目 晴れ

今日も5時40分からスタートです。昨日と違い外に出るとカラアカハラのさえずりの他にも鳥たちのさえずりが聞こえてきます。とはいえやはり鳥たちの姿があまり見当たりません。しかし日が昇り明るくなるとホオジロ類がわらわらと出現します。彼らは寝坊助なのかもしれない(笑)ムシクイ類はいますが光が悪いので撮影が難しい。昨日シマアオジが出た場所を見渡すと電線にとまったシマアオジを五百澤氏が発見!みんなで撮影をしますがすぐに飛び去ってしまった。とまっているであろうポイントを探しますが見つかりません。ここで各自好きなポイントへ移動しました。私はシマアオジが戻って来そうな気がいたので同じ場所で待っていると、何かが近くの枝にとまった。双眼鏡で見ると若いシマアオジだ!数枚撮影してふと周りを見渡すと誰もいない!「お~い、西遊チーム!」と呼ぶとみなさん集まってきたと同時に飛ばれてしまった!シマアオジがいたことを伝えてから魚醤ポイントへ移動を始めると朴さんから「シマノジコのオスが出ている」という情報が!!!カメラマンの塊の中に入るといた、きれいなオスです。よほど腹が減っているのか人間なんて気にせず餌をついばんでいます。時計を見ると朝食時間ですが、これは遅れても撮らねばならないのでしっかりと撮影をしてもらいました。やはり昨日の午後から鳥たちが入ってきたようです。そんな中、白っぽい鳥が飛んで行く姿を見て「どこかで見たような?」と考えていると韓国BWが大騒ぎし出した。私がチラ見したのはケリだったようで韓国では超レア物だったようです。

シマノジコ
シマノジコ

朝食はみなさんゆっくり食べる間もなく、食後はすぐに出発です。シマアオジもシマノジコもまだいて、撮影ができるのでこの日は島での3日間の総集編のような感じです。五百澤氏が「シベリアムクドリが出た!」といって探しに行くとさすがです、きっちり見つけてくれました。相当お疲れのようで時々眠っていたおかげでしっかりと全員撮影ができました。

シベリアムクドリ
シベリアムクドリ

みなさん満足のまま昼食を食べに戻りました。昼食は島で獲れた天然のアワビのおかゆに舌鼓。その後は荷物をまとめてもらい、船に乗るまでの1時間弱を各自での最後の悪あがき撮影をしてもらいます。持っている一部の方はシマノジコやシロハラホオジロを撮れたと喜んでいました!さて船着き場に行くとどこにこれだけ人がいたの?という人でごった返しています。明日から天気が崩れて3日ほど船が出ない危険性があるからでしょう。本土に上陸するともう1台の車が渋滞で30分遅れるという事で、港で待つ事になりましたが仁川に戻る時は逆方向なので渋滞に巻き込まれないため途中のSAで食事を食べて無事ホテルに戻ることができました。

 

5日目 最終日 雨

天気予報通り朝から雨です。予定よりもゆっくりと出発してクロツラヘラサギの繁殖する人工島に向かいました。ここには観察用のハイドがあるのでそこからの観察をしますが、雨と霧で視界が悪い。それでもたくさんのコアジサシが飛び回っています。繁殖しているクロツラヘラサギやモンゴルセグロカモメのヒナも確認できました。その後はロッテマートへお買い物に行き、関西空港組はここで先発、帰国となりました。成田組はもう少し時間があるので食事をしてから帰国の途に就きました。

 

本来は鉄板の「鳥たちが降る」シーズンだったはずですが、今年は渡りが少し早かったようでこればかりは申し訳ないですが私たちの力ではなんともなりません。でもそれなりにみなさんかなり楽しめたのではと思いました。撮影をメインにしている企画なので今回はちょっと悔しかったこととして、天気が良すぎて「陽炎」の影響がそこそこあったことです。来年は4月末からずらすことができれば行いたいと思います。

ご参加いただいたみなさまお疲れさまでした&そしてありがとうございました。

 

 

【撮れた鳥・主な見られた鳥・聞かれた鳥

ツクシガモ・ヨシガモ・オカヨシガモ・マガモ・カルガモ・ハシビロガモ・オナガガモ・コガモ・ホシハジロ・キンクロハジロ・スズガモ・コウライキジ・カイツブリ・カワウ・ウミウ・アオサギダイサギチュウサギコサギアマサギゴイサギクロツラヘラサギ

ツミ・ハイタカバンオオバンセイタカシギミヤコドリ・ダイゼン・ケリ・メダイチドリコチドリソリハシシギイソシギキアシシギ・ツルシギ・アオアシシギコアオアシシギタカブシギアカアシシギチュウシャクシギホウロクシギダイシャクシギオグロシギオオソリハシシギキョウジョシギオバシギコオバシギウズラシギヒバリシギトウネンハマシギ・コシギ・ハリオシギズグロカモメ・ユリカモメ・ウミネコモンゴルセグロカモメコアジサシ・ドバト・キジバト・コノハズク・アマツバメ・ブッポウソウ・アリスイ・アカゲラ・ヤマゲラ・チゴハヤブサハヤブサモズコウライウグイスオオチュウカササギ・オナガ・ハシブトガラス・ショウドウツバメ・ツバメコシアカツバメ・ハシブトガラ・シジュウカラシロガシラ・ヒヨドリ・ウグイス・チョウセンウグイスムジセッカキマユムシクイアムールムシクイセンダイムシクイカラフトムシクイダルマエナガ・メジロ・オジロビタキ・ジョウビタキ・イソヒヨドリ・カラアカハラ・クロツグミ・シロハラ・シベリアムクドリ・ギンムクドリ・ムクドリイワミセキレイキマユツメナガセキレイマミジロツメナガセキレイキセキレイタイワンハクセキレイマミジロタヒバリノビタキオオルリ・キビタキ・マミジロキビタキ・ムギマキ・コサメビタキツツドリビンズイムネアカタヒバリ・ヒレンジャク・シロハラホオジロ・ホオアカ・コホオアカヤマホオジロ・シマアオジシマノジコノジコシベリアアオジアトリ・カワラヒワ・コイカルマヒワ・シメ・スズメ

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

渡り鳥の楽園・春の与那国島【前編】

Report by 簗川堅治 / 2022年3月23日~26日

 

飛行機は20分遅れで与那国島に到着しました。春の琉球らしく(?)ぐずついた天気の中、スタート。まずは、好調のムクドリ類を抑えに久部良集落へ。到着早々、強風の中、バライロムクドリ成鳥を見ることができました。与那国島でもなかなか成鳥は見られません。しかし、ちょっと見ただけで飛んでいき、周囲を探すも見つからず。小休止を兼ねて久部良ミトへ。すると今度はヤツガシラが飛び出し、全員で観察。アマサギやシロガシラも複数いました。

ヤツガシラ(撮影:簗川)
ヤツガシラ

続いて祖納へ。集落を歩き回るも、小雨が降ってきたので退散。インドハッカを見た程度でした。田んぼでは、複数のタカブシギ、コチドリ、アマサギなどを見て、比川へと向かいました。

比川ではセイタカシギやシラサギ類の群れなどを見て、久部良へ戻りました。

セイタカシギ(撮影:簗川)
セイタカシギ

雨も上がったので集落を歩いて、バライロムクドリを探しました。ほどなく、ムクドリの群れにいるバライロムクドリ、カラムクドリ、ギンムクドリを発見し、時間を掛けてじっくりと楽しみました。

ムクドリ類(撮影:浅井賢治様)
ムクドリ類(撮影:浅井賢治様)

バライロムクドリの分布の西端が、今、世界中で心配されているウクライナの南東部、一躍有名になったマリウポリ辺りです。ロシアの侵攻で逃げてきたのか?と冗談にならない思いが巡りました。

バライロムクドリ(撮影:浅井賢治様)
バライロムクドリ(撮影:浅井賢治様)

2日目。夜明け前に出発して、祖納へ向かう林道を走りました。独特の「ファッ、ファッ……ファッ、ファッ……」というオオクイナの声を聞くことができました。道路に降りていたヤマシギも何度か飛びました。ヒヨドリの亜種タイワンヒヨドリやメジロの亜種リュウキュウメジロが鳴き始め、騒がしくなってきたところで祖納到着です。

 

まずは田んぼを見ました。早速、ツバメチドリを発見。疲れていたのか、じっとしています。何とも言えない独特の顔。コチドリ、タカブシギもいました。ムネアカタヒバリ、ツメナガセキレイが飛んできました。

ツバメチドリ(撮影:浅井賢治様)
ツバメチドリ(撮影:浅井賢治様)

朝食後、久部良集落と久部良バリを回りました。久部良バリでムナグロの群れとツメナガセキレイを見て、集落ではムクドリの群れにバライロムクドリ、カラムクドリも発見。まだいてくれたようです。

ムナグロ(撮影:浅井賢治様)
ムナグロ(撮影:浅井賢治様)

また、やたら人馴れしているアカモズの亜種シマアカモズをじっくりと観察しました。

アカモズの亜種シマアカモズ(撮影:浅井賢治様)
アカモズの亜種シマアカモズ(撮影:浅井賢治様)

港でハクセキレイの亜種ホオジロハクセキレイ、そして亜種タイワンハクセキレイを見ていたら、いつの間にかヤツガシラがいました!大人気のヤツガシラ、みなさん、気分も高まります。しきりに地面をつついて採餌しています。ウグイスの亜種チョウセンウグイスはさえずりのみでしたが、聞くことができました。その後は久部良ミトへ移動し、アカガシラサギ夏羽も見ることができました。

アカガシラサギ(撮影:浅井賢治様)
アカガシラサギ(撮影:浅井賢治様)

祖納へ行く途中、水の張った田んぼでは、たくさんのセイタカシギ、タカブシギに混じって、ツルシギとオジロトウネンがいました。川の藪ではコムシクイの地鳴きが聞こえていました。

セイタカシギ(撮影:上山功夫様)
セイタカシギ(撮影:上山功夫様)

再び祖納です。オウチュウ情報があった場所でしばらく探しましたが、出会えず。タイワンハクセキレイ、ホオジロハクセキレイ、チョウゲンボウ、インドハッカなどで楽しみました。田んぼへ移動し、オジロトウネンを観察したあと、オウチュウ発見!全員で堪能することができました。お気に入りの場所からフライング・キャッチを繰り返して虫を捕っていました。

オウチュウ(撮影:上山功夫様)
オウチュウ(撮影:上山功夫様)

続いて東崎。マミジロタヒバリ、ムネアカタヒバリがいましたが、じっくり見る前に飛ばれてしまい、残念。比川に行く途中、ヤツガシラ情報の場所に行くものの、こちらは出会えず。

 

比川では、普段はあまりよく見られないシロハラクイナを見ることができました。森林公園で休憩し、最後は観光で日本最西端の西崎へ行き、この日を終えました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!