初夏の道東ワイルドライフフォトスペシャル【後編】

Report by 戸塚学 / 2024年6月17日~22日

4日目 

波もなく、風も穏やかでいい天気です。朝食後、相泊港からクマクルーズの船に乗りますが、なかなかクマが見つかりません。途中でまたしてもウミネコやオオセグロカモメの群れの中にミツユビカモメがいたので船を近づけて撮影しました。昨日の事もあるのでミツユビカモメが出ると本命に当たらないような気がしてきてしまう。かわいいカモメで個人的には好きなのですが、彼ら以外の本命に当たってほしい。

ミツユビカモメ

時々上空や崖の上にオジロワシが悠然と飛ぶがヒグマの姿は見つかりませんでした。あとで聞いた話だが昨年あまりにもクマが多くなったので30数頭撃ったという。もしかしたらその影響もあるのかもしれない。一旦羅臼港に戻り13時の乗船を待ちながら各自昼食を食べてから乗船しました。乗船前に「シャチがメインなら上のデッキの方が見つけやすい」ことを伝える。下のデッキは目線が低いので山をバックに入れるにはいいが、目線が高い方が有利になる。しかしせっかく全員上に乗ったのにお客さんが多くて前が見えないのが困りもの。しばらくするとすぐにシャチが見つかり、かなりの数が出ているようでほぼシャチに囲まれている感じ。どれを狙っていいのか悩ましい。また子供がジャンプをするが低いので撮影にはかなり厳しく非常にストレスがたまる(まぁ嬉しい悩みだが)みなさんワーワーキャーキャーと子供のようにはしゃぎながら撮影を楽しんでいます。途中クロアシアホウドリも出たのですが、近づく前に飛ばれてしまいました。とにかくシャチだらけでみなさん大満足での下船となりました。

シャチ群れ
シャチのスパイホップ

今夜もシマフクロウの撮影があるので17時30分食事スタートで19時にシマフクロウ撮影に出発です。この日は全員参加でシマフクロウを待ちます。20時からオスが鳴き出し、その後ペアでの鳴き交わしに変わりました。徐々に声が近づいてきたので期待するもまた声は遠ざかる。ふと緊張の糸が切れた時だった。オスが飛んできました!魚を1尾捕らえるとすぐに食べてしまった。もう1尾捕まえるが食べようとしない。どうやらヒナに持って行くのだとわかったのでみなさんに狙ってもらうように伝える。その瞬間、飛び去って行った。無事その姿はみなさんに聞いたら撮れたとのことでほっとする。その後メスが来るのを待つが来ない・・・。結局この日は23時まで粘ったがメスは現れず、オスの飛来が1回だけだった。昨年の2日間ダメだったことを考えれば今年はいい方だろう。

シマフクロウのオス

 

5日目

朝、カーテンを開けるとそこは真っ白な世界だった。ひどい霧だ!とはいえ風や波がひどく無ければ出航をするし、電話もないので予定通り朝食を食べ車に荷物を積み込み港へ向かいました。霧は午前便では普通の事で、沖に出ると晴れることもあるのでそれに期待をします。さて出航しても霧は一向に晴れません。進路は岬側に移動後、国後方面へ。国境近くに向かいます。船長的にはここら辺が一番出会う確率が高いのでヤマを張って向かいますが、とにかく何も見えない(笑)そんな中、11時方向に黒い塊?クロアシアホウドリかな?と双眼鏡で見ると黒い塊は上に伸びる?シャチだ!と叫ぶとなんと霧の中からシャチの背びれがあちこちからにょきにょき生え出した(笑)「ブッシュ―」というブロー音も近く、リアルに息遣いを感じる。シャチたちは波が穏やかな分のんびりと泳いでいる。中には浮かんだまま泳がないものまで。またこれが近い!もちろん少し遠ければ霧で見えないのだから。子供がジャンプをするが霧が濃くてピントが合わないのが悔しい!しかしよくもまぁこんな状況で出てくれたとシャチたちに感謝をしたいくらいだ。霧によるダメモードだったが、このシャチの出現に船上は狂喜乱舞の熱に沸いていた。フルマカモメが近くを飛んでも誰も真剣に撮影していない様子はおかしかった。

濃霧の中あらわれたシャチ
フルマカモメ

下船後はまず道の駅でトイレタイム。みんなが戻ってくると同時に大型バスが到着してどっとお客さんがトイレに向かう。早く着いてよかった!コンビニで昼食を買って車の中で食べながら知床峠に向かいます。ドライバーさんが良くヒグマが出る場所では速度を下げて探してくれますがヒグマとの遭遇はありませんでした。途中までかなり濃い霧で「大丈夫かな?」と心配していましたが、峠は霧が抜け視界が広がっていました。まずいつも見られる場所で探していると、少し離れた場所のカメラマンが私が見ている方向とは違う方向にレンズを向けているのが見えた。レンズの先を双眼鏡で覗くとウソがいた!みなさんに伝えてその場所へ行くが、残念飛ばれてしまった!ただ1名だけは撮れたと喜んでいた。タンポポの綿毛を食べるので戻ってくることを期待しましたがそれっきりだった。

ウソ

その後も霧雨や雨が降るたび車内に逃げ込みつつも、アマツバメ・ノビタキ・アオジ・ウグイスを確認、遠くでツツドリ・コマドリ・オオジシギの声を確認するも本命のギンザンマシコはが出ないし、さえずりも聞こえない。ハイマツの実をかじった後は確認できるのでいるはずなのだが。その後ウソがペアで出始めてくれたおかげでウソだけは撮ることができました。16時になったのでここで終了にしました。天気が良ければ夕日がきれいなウトロ側を通過するので「なにか」に期待を売るのですが、イマイチな天気なのでなんともなりません。海岸の岩にとまるオジロワシを眺めつつホテルに到着してこの日は終了となりました。

 

 

最終日 

朝は朝食の関係で8時に出発にしましたが、大型バスが2台分お客さんを降ろしているので、朝食会場は長蛇の列!ここで気がついた、今日は土曜日だった!朝食を慌てて食べて何とか時間通り小清水原生花園に到着。まずは木道を歩きながら各ポイントの説明を始めると、いきなりオオジシギがとまっている姿を確認したので撮影をしてもらいます。その途中で「ジィジィジープ」と鳴き出し、声も堪能してもらえました。原生花園側ではノビタキの巣の位置を下見の時に確認しておいたのですが、巣立ってしまったようで親も子も近くで見られなかった、残念。かわりにホオアカのヒナが大きくなったようで頻繁に給餌をするので近くで撮影をしてもらいます。私は周囲を探しますが、エゾセンニュウの鳴き声もしないし、下見で出ていた場所にノゴマの姿も見つけられなかった。

ホオアカ

一名の参加者が「お花の撮影もしたい」という事で望遠、広角、スマホでのお花の撮影レクチャーをして楽しんでいただきました。原生花園一面に白い花が咲いたよう見えるのはエゾシロチョウが一気に羽化したようで、夜に雨が降ったことと気温が低いので木や花にとまっている姿だった。10時30分になるとエゾシロチョウがあちこちで群れ飛ぶ姿に見送られ、小清水原生花園を後にします。

エゾシロチョウ

そしてこのツアー最後のポイントへ移動です。女満別駅近くのキャンプ場で下見の時にアカゲラの巣を確認してあったのですが、その時も巣穴からヒナの声が激しく聞こえていたので巣立ちしているのでは?とちょっぴり不安もありました。もう一つの期待は結構クマゲラの食痕があるのでもしかしたらクマゲラが出るかもという淡い期待もありました。キャンプ場から歩き出すと網走湖にオカヨシガモが浮かんでいます。オシドリも多いので驚かさないように探すとペアを見つけることができました。さて気になるアカゲラの巣に近づくとオス親が警戒の声を上げている。ちょっと申し訳ないがその姿を撮影させてもらう。

アカゲラ

「ごめんごめん」と早々に立ち去ると枯れ木にコムクドリがペアでとまっている・・・しかし遠い。ベニマシコの声がするがなかなか姿が見えない。簡単に片付くと思っていたコヨシキリには結局最後まで悩まされた。小鳥の塊が動いてきたのでシマエナガか!と思ったらハシブトガラの家族群で親鳥はヒナにエサを与えながら移動をしています。しかし柳の葉が邪魔だし暗くて撮影に苦労する。終了時間が迫ってきたので専用車向かって戻る途中にカモ類の群れが葦原の奥から飛び立ちます、オシドリの群れだ!飛翔する姿を撮影してもらうとちょうど時間となりました。しおりに書いてある予定よりも30分早いが、空港で食事やらお土産を買う時間や、パッキング時間もあるので空港にみなさまを送り届け終了となりました。ご参加いただいたみなさま、お疲れさまでした。そしてありがとうございました。

ハシブトガラ

撮れた生き物
スズガモ・オシドリ・オカヨシガモ・フルマカモメ・ハシボソミズナギドリ・ハイイロミズナギドリ・チシマウガラス・アオサギ・タンチョウ・カッコウ・ツツドリ・アマツバメ・オオジシギ・ミツユビカモメ・ウミネコ・オオセグロカモメ・ウミスズメ・ウトウ・エトピリカ・トビ・オジロワシ・シマフクロウ・モズ・ヒバリ・ハシブトガラ・ウグイス・エゾムシクイ・シマセンニュウ・コヨシキリ・コムクドリ・ノビタキ・カワラヒワ・オオカワラヒワ・ベニマシコ・ウソ・ホオアカ・アオジ・オオジュリン・エゾシカ・キタキツネ・ラッコ・ゼニガタアザラシ・ゴマフアザラシ・シャチ

見れた生き物・聞かれた鳥
ヒドリガモ・マガモ・オナガガモ・ホシハジロ・カワアイサ・キジバト・ドバト・アオバト・シロエリオオハム・クロアシアホウドリ・ウミウ・カワウ・ヒメウ・ダイサギ・コサギ・シロカモメ・ハシブトガラス・ハシボソガラス・ミヤマカケス・ショウドウツバメ・ヒヨドリ・ヤブサメ・マキノセンニュウ・エゾセンニュウ・コマドリ・スズメ・ハクセキレイ


この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

冬の鶴居村でタンチョウ撮影三昧【前編】

Report by 戸塚学 / 2024年1月7日~10日

 

好評のこのツアーも今年で3年目。今年は過去最高な出来だったと思います。全日晴れと予想以上に気温も下がり霧氷が朝陽に輝く情景はもちろんダイヤモンドダストまで撮影できるチャンスに恵まれました。

<1日目>

昨年も参加された方が2名、このツアー初参加が3名の5名での開催になりました。空港と先入りの方をホテルでピックアップして現地に向かいます。

天気は快晴でまだ道路わきの木々の枝に霧氷が残り、陽光に輝いています。今回泊まるホテルTAITOに不要な荷物を置いてすぐにタンチョウサンクチュアリーへ向かいます。コンビニで買ったお昼ご飯を食べながらしっかりと撮影をしていただきました。残念なのは風向きが悪くこちらに向かって飛んでくれないのが悔しい。ただし今年は珍しくマナヅルが1羽来ていてるのでこちらを撮れたのはラッキーでした。夕方は夕鶴を狙えるポイントへ向かってチャンスを待ちますが・・・残念ながら不発で終わってしまいましたが、まだ初日です。残りの日に期待をすることにしてホテルに戻りました。

タンチョウサンクチュアリー
タンチョウサンクチュアリー
タンチョウ
タンチョウ
一羽のマナヅルと出会えました
一羽のマナヅルと出会えました
一羽のマナヅルと出会えました
一羽のマナヅルと出会えました

<2日目>

TAITOのオーナー和田さんから「明日は天気がよさそうだから5時30分に出発しよう!」と提案をされていたのでまだ暗い中の出発です。さほど冷えてる感じはなかったのですが、晴れています。現場に到着するとまだ辺りは真っ暗です。私たち以外にほとんど人がいないのでいいポイントを確保できました。空には細い月が浮かび、川面には月の光の帯と星が映り込んでいましたのでそれらも撮っていただきました。徐々に明るくなるタイミングで撮影を楽しんでいただきながらアドバイスを伝えました。

タンチョウのねぐら
タンチョウのねぐら
タンチョウのねぐら
タンチョウのねぐら

本来は午後エゾフクロウポイントへ行く予定でしたが、和田さんの提案でそのままエゾフクロウの撮影を楽しみました。ペアが並んでいる姿を期待しましたが、今年も1羽だけ。それでもしっかりと楽しむことができました。

エゾフクロウ
エゾフクロウ

一旦ホテルに戻り、凍える身体で朝ご飯を食べると元気のいい参加者はすぐにホテルの庭に来るエゾリスを撮るために飛び出してゆきましたが、残念ながら撮影はできなかったようです。しかし日中は昨日と風が反対側から吹くのでこちらに向かって来るタンチョウを撮影するチャンスに恵まれたのですが、すぐ頭の上を飛ぶので望遠では撮れません!レンズの選択が難しく皆さんの歓喜と嘆きの声が交互に響きます。(笑)昨日同様今日も各自コンビニで買ったお弁当を食べながらの撮影を楽しみました。

真上を飛んでいったタンチョウ
真上を飛んでいったタンチョウ

夕方移動をして希望者だけタンチョウの飛翔を狙いつつ小鳥の撮影を楽しみます。ここではエサ台がありシマエナガ、シジュウカラ、ハシブトガラ、ミヤマカケス、アカゲラの撮影を楽しみました。太陽と飛翔を絡めた撮影はイマイチでしたが、十分楽しめた1日だと思います。

シマエナガ
シマエナガ
ハシブトガラ
ハシブトガラ
アカゲラ
アカゲラ

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

秋深まる野付半島から十勝平野へ
~ハクガン・コクガンの群れとナキウサギ~【後編】

Report by 今堀魁人 / 2021年10月26日~30日

3日目は日の出前からメインであるハクガンを探しに行きます。到着後何やら騒がしいと外を見ると、ガンが乱舞しています!

ハクガンとシジュウカラガンの飛翔

降りた沼を見に行くとハクガンとシジュウカラガンが見られました。その後何度も1000羽ほどのハクガンが上空を旋回してくれたり、車内から比較的近距離で観察できたりと、とても贅沢な時間を過ごすことができました。

ハクガンとシジュウカラガン

ハクガンの飛翔

午後は2日目とは別なエゾフクロウのポイントに行きましたが、残念ながら出会えませんでした。公園ではエゾリスがチョロチョロと姿を現し、可愛い姿が見られました。

エゾリス

エゾリス

夕方再度シジュウカラガンを探した時は、朝とは全く違うところにおり、夕方の光の中美しい光景が広がっていました。

シジュウカラガン

夕暮れの空を舞うハクガンとシジュウカラガン

4日目は山にナキウサギを探しに行きました。午前中静かに待っていると、鳴き声とともにちらっと姿を見せてくれました!途中ガサッという音とともに遠くにヒグマの姿を確認したため安全のため下山しました。帰り際車の近くで探すと、ここでも姿を現し皆さん大興奮です。

ナキウサギ

ナキウサギ

山から下山し、午後はエゾリス探しです。イチョウの黄葉の絨毯に佇む可愛らしいエゾリスの姿を見ることができました。

エゾリス

夕方はリクエストのあったエゾライチョウ探しです。写真には撮れませんでしたが、目の前をオスのエゾライチョウが飛んでいくシーンは格好良かったです。日高山脈に沈む夕日を展望台で眺め、この日は終了です。

日高山脈のシルエット

最終日は再度日の出前にハクガンを探しに出発しましたが、何やら沼が静かです。日が昇ると沼には1羽もガンがいません。どうやら一昨日の夕方を最後に、本州へ渡っていってしまったようです。見ることはできませんでしたが、静かになった沼を見て渡っていったハクガンの無事を祈りました。

沼の日の出

最後は帯広市内の公園で小鳥を探します。今回のツアーではまだ観察していなかったアカゲラやハシブトガラ、ゴジュウカラなどの定番の小鳥を間近で観察し、さらにエゾリスも観察できました。

アカゲラ

ハシブトガラ

ゴジュウカラ

今回のツアーでガン類を合計7種観察することができました。日本で見られるガン類の多くを一度のツアーで全て見られるのは渡りのシーズンと、その観察ポイントに簡単に移動できる北海道ならではではないでしょうか。春には残雪の残った風景とともにガンが帰ってきますので、ぜひお迎えをしにまたお越しください。皆様お疲れ様でした!

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!