秋の石垣島・西表島 珍鳥とオリイヤマガラに挑戦!【前編】

Report by 簗川堅治 / 2022年11月18日~22日

渡りの終盤に石垣島と西表島にやってくる珍鳥、そして種に格上げされる予定のヤマガラの亜種オリイヤマガラを見ようというツアーです。

 

1日目。羽田空港発、那覇空港発の飛行機が大幅に遅れましたが、無事揃い、スタートしました。

まずはオニアジサシを見に行きました。しかし、お留守だったので、白いクロサギなどを観察。続いては、田んぼへ。そろそろ稲刈りの時期の田んぼでは、なんと、石垣島的珍鳥のコハクチョウにご対面。暑そうです(笑)セイタカシギやツルシギ、クサシギなど忙しそうに採餌中でした。他、ツメナガセキレイやベニバトを探すもいないようです。

コハクチョウ(撮影:上山功夫様)

 

続いて薄暗い公園でズグロミゾゴイを見ました。幼鳥が2羽いましたが、虹彩の色が1羽は暗色、もう1羽は淡色でした。この違いは何なんでしょう?

更に移動途中でアカガシラサギを見つけました。地味な冬羽をじっくりと観察できました。

アカガシラサギ(撮影:上山功夫様)

今度はまだいるらしいアカツクシガモに挑戦です。でも、見つけた途端に飛ばれてしましました。ものすごい警戒心です。同じ場所にハシビロガモ、コガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロ、セイタカシギ、アオアシシギなどがいました。その他、タシギが飛び出し、草むらからはヒクイナの声もしました。

また移動し、マガン、そしてカリガネを見ました。ハイイロガンもいるらしいのですが、見当たらず。コハクチョウに続き、ガンまでいるとは、南の国に来た感じがしません(笑)

この日最後はクロヅル。その移動中に運よく、白いクジャクとヤエヤマオオコウモリを観察できました。クロヅルはアカツクシガモ同様、見つけた途端、飛ばれて、飛んだ姿だけはじっくりと観察できました。

白いクジャク(撮影:上山功夫様)

2日目。昨日、見られなかったハイイロガンを探しに行き、あっさりと見ることができました。マガン、カリガネも健在です。水面に映るハイイロガン、とても綺麗でした。

ハイイロガン(撮影:上山功夫様)
カリガネ(撮影:上山功夫様)
マガン(撮影:上山功夫様)

昨日、飛ばれて終わったクロヅルにも再挑戦。この日は近くでじっくりと観察。

クロヅル(撮影:上山功夫様)

その後はアカツクシガモをまた見て、さらに別の場所でクロハラアジサシの群れも見ることができました。

アカツクシガモ(撮影:上山功夫様)
クロハラアジサシ(撮影:上山功夫様)

今度はカンムリワシの幼鳥を探しです。しかし、見当たらず。今年はあまり繁殖しなかったのでしょうか?お昼を挟んで、移動中に飛翔するツバメチドリの群れや大きなミミズを食べるズグロミゾゴイを観察。

ツバメチドリ(撮影:上山功夫様)
ズグロミゾゴイ(撮影:上山功夫様)

移動して、ツメナガセキレイを探します。数羽のムナグロとたくさんのツメナガセキレイを見ることができました。まだ夏羽が残った黄色い個体も何羽かいました。

今度は海岸へ移動して、シギチの観察です。メダイチドリを中心に、シロチドリ、ムナグロ、キョウジョシギ、キアシシギなどが400羽以上はいたでしょうか?その中にオオメダイチドリも複数入っていました。クロサギも白色型、黒色型の両方を見ることができました。

オオメダイチドリとメダイチドリ

最後はカタグロトビ。なかなか見つかりませんでしたが、ようやく電線に止まっている個体とホバリングしている個体を見ることができました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

秋の石垣島で
アカハラダカ・カンムリワシ・ムラサキサギを狙う

Report by 戸塚学 / 2022年9月23日~25日

 

台風14号の影響で、下見の出発が1日遅れたものの無事石垣島へ入ることができた。現地の方たちから情報が入るものの・・・シギやチドリが少ない。どうやら抜けたようだ。

ツアーは23日~25日なのでまだ時間があるものの24・25日が雨予報。ところが23日に天気予報が一気に変わり前日の晴れ!特に24日は今年初めての大当たり!他にも連日鳥たちの撮影を堪能できてみなさま大満足の3日間となりました。

 

*本文中「リュウキュウ○○」という表記を「R」に省略させていただきます。

<1日目>

空港に時間通りみなさん集合されたので、専用車でまずは前日から出ているソリハシセイタカシギ(アボセット)の出ている田へ直行します。少し遠いのですが、超珍鳥なので時間をかけてしっかりと撮影を楽しんでいただきました。他にも周辺の田をゆっくりと車で流しながらシギやチドリを堪能します。途中数は減りましたが、まだクロハラアジサシやハジロクロハラアジサシが飛んでいるので、車から降りて撮影を楽しみました。

クロハラアジサシ
クロハラアジサシ

カンムリワシが飛んできたのですが、すぐに飛んで行ってしまったことで撮影ができず悔しい思いもしましたが次回のチャンスという事で引き続き時間いっぱいまで鳥たちを探しては撮影を繰り返しました。一旦18時にホテルに戻り、各自食事をとっていただいた後、ナイトサファリは19時30分から開始です。現地ガイドさんの案内で、Rアオバズク、Rコノハズク、ヤエヤマオオコウモリを無事撮影ができたので別の場所へ。

ヤエヤマオオコウモリ
ヤエヤマオオコウモリ
リュウキュウコノハズク
リュウキュウコノハズク

この場所は遊歩道を歩きながら生き物を探すスタイル。外来種のオオヒキガエルやサソリモドキ、オカヤドカリ、各種ゴキブリ、Rアオヘビも撮影しました。鳥はRコノハズク、ズグロミゾゴイの成鳥が撮れたのはラッキーでした!

オオヒキガエル
オオヒキガエル
ズグロミゾゴイ
ズグロミゾゴイ
リュウキュウアカショウビン
リュウキュウアカショウビン

<2日目>

7時にホテルを出発して展望台を目指します。アカハラダカはだいたい8時から10時の間に飛ぶのですが、少し早めに来て場所の説明や光の回り方、アカハラダカの出現の仕方を説明して待ちました。チョウゲンボウが皮切りに飛び出した後、ズアカアオバトがとまっているのを発見して撮影をすることができました。

ズアカアオバト
ズアカアオバト

風もいい、晴れているというベストコンディション。そして今年はまだアカハラダカの大きなあたりが無いので「今日が当たるかも・爆発ですよ!」なんて冗談交じりに参加者の皆さんには話していたのが、本当になっちゃった!パラパラ飛んできたかなと思ったら頭上でタカ柱!遠くに見つけたタカ柱が上空高くに消えたかと思ったらいきなり目の前にジャンジャン飛んできたりとみなさん大興奮!

タカ柱
タカ柱
アカハラダカ♀
アカハラダカ♀
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂

この時一番驚いたのはカンムリワシが目線でこちらに向かって飛んできたこと!こんなことは滅多にないし、私も初体験で焦ってしまった。

カンムリワシ
カンムリワシ

9時30分を過ぎた頃には渡りも落ち着いてきたのでシベリアムクドリ・カラムクドリが出ているポイントへ早めに移動。現地に着くと知り合いの現地ガイドさんがいて、いろいろと教えてもらい大助かり。おかげでシベリアムクドリ・カラムクドリは撮れました。

シベリアムクドリ
シベリアムクドリ

11時~15時まで休憩を入れてあるので、ここで一時解散です。この状況でみなさん歩いてホテルまで戻るわけもないので、好きなだけここで撮影をしてもらう事にしました。ただ水分補給だけは忘れないように伝えて私はホテルへ戻りました。さて皆さんの撮影結果はRサンコウチョウ、サメビタキ、シロガシラ、オサハシブトガラス、イソヒヨドリが撮れたと後から報告をいただきました。

シロガシラ
シロガシラ

15時専用車で再び田んぼを巡る旅です。もしかしてアボセットが昨日より近い場所にいるかもと行くと・・・本当にいた!昨日よりも撮りやすく近くて、がっつり撮影ができました!「とまっているカンムリワシ~」というリクエストで探すが見つからない。かわりにツメナガセキレイ、アカガシラサギ、ムラサキサギを撮ることができてみなさん満足そうです。時間になったのでホテルに戻りました。

ツメナガセキレイ
ツメナガセキレイ
アカガシラサギ
アカガシラサギ
ムラサキサギ
ムラサキサギ

<3日目>

ホテルの前の電線にツバメがとまっていた。朝日に照らされ若干赤っぽく見えていた。何気なく双眼鏡で見ると???Rツバメだった。今回ツバメは多かったがRツバメは見られなかったので急に撮影大会になってしまった。

リュウキュウツバメ
リュウキュウツバメ

とはいえいつまでも撮影していては本命がおろそかになるので、展望台へ向かいます。みなさんの期待が高まるも昨日のようにアカハラダカが爆発しません。時折近くに出てもそういう時に限って太陽が雲に隠れてしまう。この日はアカハラダカ以外にチョウゲンボウ・チゴハヤブサ・ハヤブサを見ることができました。残念ながら昨日を超える渡りは望めませんでした。10時なったので田んぼ巡りを開始です。やはり今日も「とまってるカンムリワシ~」というリクエストでカンムリワシを探します。飛んでいる姿を確認できたが見失ってしまった・・・残念。そんな時ドライバーさんが「あのスプリンクラーの上は違うかな?」と指さす先に、いた!カンムリワシです。ちょっと距離はあったがしっかりとその雄姿を撮影ができました。

その後も田を巡り最後まで撮影を楽しみます。12時近くになったので空港近くの田に移動します。運が良ければ何か入っていないかなと思っているとまたしてもドライバーさんが「あれ、何?」と指さす先にムラサキサギの成鳥が!みなさん夢中で撮っていると、突然ムラサキサギは飛び立った!時計を見ると12時30分まるで時計を持っているかのような行動です。本当に最後の最後まで撮影を堪能して空港で無事終了解散となりました。

みなさまお疲れさまでしたね、それにしても超ツキまくりの3日間でした。

リュウキュウツミ
リュウキュウツミ
シマアカモズ
シマアカモズ

 


撮れた鳥
ズグロミゾゴイ・アカガシラサギ・アマサギ・ダイサギ・チュウサギ・コサギ・アオサギ・ムラサキサギ・カルガモ・アカハラダカ・Rツミ・カンムリワシ・ハヤブサ・チョウゲンボウ・チゴハヤブサ・シロハラクイナ・バン・コチドリ・トウネン・ヒバリシギ・エリマキシギ・アカアシシギ・コアオアシシギ・アオアシシギ・クサシギ・イソシギ・タシギ・(チュウシャクシギ?)・セイタカシギ・ソリハシセイタカシギ・クロハラアジサシ・ズアカアオバト・Rコノハズク・Rアオバズク・Rアカショウビン・ツメナガセキレイ・シロガシラ・Rサンコウチョウ・シマアカモズ・イソヒヨドリ・サメビタキ・セッカ・カラムクドリ・シベリアムクドリ・オサハシブトガラス

 

観られた鳥・さえずり
Rヨシゴイ・シマアジ・コガモ・ムナグロ・ツバメチドリ・ハジロクロハラアジサシ・Rキジバト・キセキレイ・Rサンショウクイ・Rヒヨドリ・Rメジロ

 

その他
ヤエヤマオオコウモリ・サキシマキノボリトカゲ・サツマゴキブリ・サソリモドキ・オオヒキガエル・Rアオヘビ

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

渡り鳥の楽園・春の与那国島【前編】

Report by 簗川堅治 / 2022年3月23日~26日

 

飛行機は20分遅れで与那国島に到着しました。春の琉球らしく(?)ぐずついた天気の中、スタート。まずは、好調のムクドリ類を抑えに久部良集落へ。到着早々、強風の中、バライロムクドリ成鳥を見ることができました。与那国島でもなかなか成鳥は見られません。しかし、ちょっと見ただけで飛んでいき、周囲を探すも見つからず。小休止を兼ねて久部良ミトへ。すると今度はヤツガシラが飛び出し、全員で観察。アマサギやシロガシラも複数いました。

ヤツガシラ(撮影:簗川)
ヤツガシラ

続いて祖納へ。集落を歩き回るも、小雨が降ってきたので退散。インドハッカを見た程度でした。田んぼでは、複数のタカブシギ、コチドリ、アマサギなどを見て、比川へと向かいました。

比川ではセイタカシギやシラサギ類の群れなどを見て、久部良へ戻りました。

セイタカシギ(撮影:簗川)
セイタカシギ

雨も上がったので集落を歩いて、バライロムクドリを探しました。ほどなく、ムクドリの群れにいるバライロムクドリ、カラムクドリ、ギンムクドリを発見し、時間を掛けてじっくりと楽しみました。

ムクドリ類(撮影:浅井賢治様)
ムクドリ類(撮影:浅井賢治様)

バライロムクドリの分布の西端が、今、世界中で心配されているウクライナの南東部、一躍有名になったマリウポリ辺りです。ロシアの侵攻で逃げてきたのか?と冗談にならない思いが巡りました。

バライロムクドリ(撮影:浅井賢治様)
バライロムクドリ(撮影:浅井賢治様)

2日目。夜明け前に出発して、祖納へ向かう林道を走りました。独特の「ファッ、ファッ……ファッ、ファッ……」というオオクイナの声を聞くことができました。道路に降りていたヤマシギも何度か飛びました。ヒヨドリの亜種タイワンヒヨドリやメジロの亜種リュウキュウメジロが鳴き始め、騒がしくなってきたところで祖納到着です。

 

まずは田んぼを見ました。早速、ツバメチドリを発見。疲れていたのか、じっとしています。何とも言えない独特の顔。コチドリ、タカブシギもいました。ムネアカタヒバリ、ツメナガセキレイが飛んできました。

ツバメチドリ(撮影:浅井賢治様)
ツバメチドリ(撮影:浅井賢治様)

朝食後、久部良集落と久部良バリを回りました。久部良バリでムナグロの群れとツメナガセキレイを見て、集落ではムクドリの群れにバライロムクドリ、カラムクドリも発見。まだいてくれたようです。

ムナグロ(撮影:浅井賢治様)
ムナグロ(撮影:浅井賢治様)

また、やたら人馴れしているアカモズの亜種シマアカモズをじっくりと観察しました。

アカモズの亜種シマアカモズ(撮影:浅井賢治様)
アカモズの亜種シマアカモズ(撮影:浅井賢治様)

港でハクセキレイの亜種ホオジロハクセキレイ、そして亜種タイワンハクセキレイを見ていたら、いつの間にかヤツガシラがいました!大人気のヤツガシラ、みなさん、気分も高まります。しきりに地面をつついて採餌しています。ウグイスの亜種チョウセンウグイスはさえずりのみでしたが、聞くことができました。その後は久部良ミトへ移動し、アカガシラサギ夏羽も見ることができました。

アカガシラサギ(撮影:浅井賢治様)
アカガシラサギ(撮影:浅井賢治様)

祖納へ行く途中、水の張った田んぼでは、たくさんのセイタカシギ、タカブシギに混じって、ツルシギとオジロトウネンがいました。川の藪ではコムシクイの地鳴きが聞こえていました。

セイタカシギ(撮影:上山功夫様)
セイタカシギ(撮影:上山功夫様)

再び祖納です。オウチュウ情報があった場所でしばらく探しましたが、出会えず。タイワンハクセキレイ、ホオジロハクセキレイ、チョウゲンボウ、インドハッカなどで楽しみました。田んぼへ移動し、オジロトウネンを観察したあと、オウチュウ発見!全員で堪能することができました。お気に入りの場所からフライング・キャッチを繰り返して虫を捕っていました。

オウチュウ(撮影:上山功夫様)
オウチュウ(撮影:上山功夫様)

続いて東崎。マミジロタヒバリ、ムネアカタヒバリがいましたが、じっくり見る前に飛ばれてしまい、残念。比川に行く途中、ヤツガシラ情報の場所に行くものの、こちらは出会えず。

 

比川では、普段はあまりよく見られないシロハラクイナを見ることができました。森林公園で休憩し、最後は観光で日本最西端の西崎へ行き、この日を終えました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

珍鳥が渡る交差点!秋の与那国島5日間【前編】

Report by 大西敏一 / 2021年10月1日~5日

 

沖縄県にはずっと非常事態宣言が出ていてツアーの開催が危ぶまれていましたが、9月末で解除になるというニュースが飛び込み、ほっと胸を撫で下ろしての実施となりました。

以前は春秋冬と幾度も探鳥に訪れていましたが、久方ぶりの与那国島です。聞くところによると道路事情にさほど変わりはありませんが、大きな自衛隊の駐屯地が出来上がり、鳥のポイントだったゴミ捨て場が無くなるなど様々と環境に変化があるようです。また、多くの水田は放棄されて草地に置き換わり、2期作もやらなくなったせいで湿地環境がほとんど無い様子で以前とは鳥を見るポイントも変わっているようでした。予報では10月1日からの5日間はほぼ晴天です。さあ、どういう探鳥になるのか期待半分、不安半分の始まりとなりました。

 

ツアー1日目

今回は現地集合、現地解散の探鳥です。台風の接近で参加が危ぶまれた方もいらっしゃいましたが、誰ひとり欠けること無く全員が集まれたのはツアーの成功を暗示しているようでした。皆さん思い思いに昼食を済ませてから宿で合流し出発です。集合前にサンコウチョウやアカチョウビンの鳴き声、中にはアサクラサンショウクイ!を観察された方もいらっしゃいました。これは否が応でも期待が膨らみます。

アサクラサンショウクイ(撮影:早川弘美さま)

まずは比川へ向かいました。島には北東部に祖納、南部に比川、西部に久部良と3つの集落があり、比川は一番こじんまりしている集落です。テレビドラマのDr.コトーの撮影地で一躍有名になった地でもあります。

Dr.コトーの建物

水田に水が無いせいで水路などに水辺の鳥たちの姿がありました。セイタカシギが出迎えてくれて、ゴイサギは隠れるようにそっといます。よく見るとオジロトウネンやヒバリシギ、アカアシシギの姿も。顔の黄色い今年生まれのホオジロハクセキレイなどを見ながら幼鳥と成鳥の違いなどを観察しました。

セイタカシギ(撮影:伊原やよいさま)

アカアシシギ

浜へ出てシギチ探しをしたあとはベニバトのポイントを経由して田原川へ。セイタカシギやインドハッカなどを観察していると目の前を色鮮やかな鳥が飛びました。キンバトの雄です。すぐ近くの林へ飛び込みましたが、その後姿を表すことはありませんでした。近くの農耕地ではツメナガセキレイがわらわらといます。キガシラセキレイの姿はないようです。お客さんの二人が電線に止まるクロヒヨドリを見つけたようですが、タッチアンドゴーですぐに飛去してしまったとのことで、残念。田原川では小鳥の塒入りを待ちましたが、結果はシロガシラばかりでめぼしい鳥は現れず、クイナ類の声も聞けませんでした。やはり環境が変わったせいでしょうか寂しい限りです。遠くの電線に止まる塒入り前のカラムクドリを見ていると「チュッ チュッ」と上空をセジロタヒバリが飛びます。その辺の畑に降りてくれないかなあと言いながら日の入りを迎え、初日の探鳥は終了しました。夕食後に鳥合わせを行い、本日54種の確認となりました。

探鳥風景

ツメナガセキレイ(撮影:早川弘美さま)

ツアー2日目

今日は日の出の時間に合わせて弁当持参で東崎(あがりざき)へ出発です。着いた頃には丁度水平線から太陽が登ったところでした。遠く西表島を右手に見ながら登る朝陽の下で食べる朝食は格別です。放牧地ではオオチドリやマミジロタヒバリを期待しましたが、ムナグロとツメナガセキレイのみでした。

東崎の日の出

与那国馬

食事後は祖納(そない)へ向かいました。浦田墓地では草むらから飛び出すアカガシラサギを発見。磯に降りたのを観察していると上空をムネアカタヒバリが飛びます。岩礁にはメダイチドリとムナグロもいるようです。本来は祖納の集落の中も探鳥ポイントの一つなのですが、緊急事態宣言が開けたとはいえ、今回は各集落の中を探鳥することは見送りました。その後、比川へ。水路のシギが増えています。3羽になったヒバリシギが割と近く、トウネンも一緒にいたので2種の幼鳥の違いをじっくりと観察しました。

アカガシラサギ冬羽(撮影:早川弘美さま)

ヒバリシギ幼鳥(撮影:早川弘美さま)

林道ではゆっくりと車で流しながら鳥を探します。この時期ならブッポウソウがいるはずと思っていると電線に止まるブッポウソウを発見。皆さん撮影タイムです。公園の広場でチゴハヤブサやコサメビタキを見ているともうお昼の時間です。昨日から島の飲食店はようやく再開した様子でした。テーブルを一人ずつのパーテションで仕切ったコロナ対策がしっかりしているお店を見つけ、皆で与那国そばをいただきました。

ブッポウソウ幼鳥(撮影:早川弘美さま)

与那国そば

食後は再び山へ。狙いはハイイロオウチュウやキンバトです。広場で鳥を待っていると上空にはハリオアマツバメやチゴハヤブサが飛びます。林の中を探索していると「コウモリ!」の声。よく見ると大きなコウモリが梢にぶら下がっています。ヤエヤマオオコウモリです。鳥ではありませんが今回これも見ておきたかった動物です。「顔がタヌキみたい」などと言いながらじっくりと堪能した後はアヤミハビル館へ向かいました。

ヤエヤマオオコウモリ

アヤミハビルとは与那国の言葉で世界最大級の蛾であるヨナグニサンのことです。「アヤミ」は「模様のある」、「ハビル」は「蝶」を意味します。同館はヨナグニサンの生態や亜熱帯の自然の素晴らしさを体感できる施設で、与那国島の動植物や人々とヨナグニサンの関わりなどを学ぶ貴重な機会となりました。鳥だけじゃなくこういったツアーも良いねと参加者の皆さんも喜んでおられました。

アヤミハビル館・玄関

アヤミハビル館・館内

館を出たあとは耕作地のツメナガセキレイの大群などを見ながら、久部良ミトゥに到着。久部良ミトゥは久部良集落の東側にある大きな湿地(池)で、水路で久部良漁港とつながっています。

久部良ミトゥ

着くといきなりアカガシラサギが飛び出します。この時期は冬羽で地味ですが、飛ぶと翼の白と背面のあずき色とのコントラストが綺麗です。池の奥では70羽ほどのダイサギ、アマサギ、コサギの群れが休んでいました。飛来したクロハラアジサシの群れの中にハジロクロハラアジサシが1羽混ざっていました。ここではコホオアカ、ムジセッカ、コヨシキリなどの新顔も出てくれました。シロガシラが増えてきてどこかでねぐらを取っているようでした。

コホオアカ(撮影:早川弘美さま)

日がかなり傾いたので本日締めの西崎(いりざき)へと向かいます。夕方、西崎にいると上空を鳴きながら渡っていく小鳥たちを見られることも多いので、夕陽とセットで期待します。与那国島での夕陽は水平線に沈むのでなく、はるか台湾の山並みに沈んでいきます。素晴らしい景色とかすかに聞こえる小鳥の声を聞きながら2日目の探鳥が終了となりました。夕食後に鳥合わせを行い、本日は58種の確認となりました。

西崎の日の入り

最西端の碑

この記事を書いた人

大西 敏一 おおにし としかず
1961年生まれ。大阪府在住。野鳥歴45年。フリーランスとして鳥類調査をメインに執筆、講演、ツアーガイドなどに携わる。離島の渡りに関心があり、韓国の島嶼にも長年通い続けている。シギ・チドリ類やムシクイ・ヨシキリ類などが好み。主な著書に「日本の野鳥590/650」(平凡社)、「世界のカワセミハンドブック」(文一総合出版)などがあり、協力図書も多い。

クマゲラの棲む利尻の森と礼文島・サロベツ湿原【後編】

Report by 今堀魁人 / 2021年5月15日~19日

3日目は天気が回復し、午前中礼文島南部と高山植物の花畑となる桃岩展望台へ。桃岩展望台では、礼文島固有種のレブンコザクラ、そしてハクサンイチゲを観察しながら野鳥を探します。

レブンコザクラ
レブンコザクラ

利尻島をバックに、レブンコザクラとハクサンイチゲ
利尻島をバックに、レブンコザクラとハクサンイチゲ

道中、何度か上空をイスカの群れが飛び、そしてノビタキが道端で姿を見せ楽しませてくれます。ふと大きなシルエットが見え、双眼鏡で覗くとチュウヒでした。旋回し、上空高くどこかへ飛んでいきましたが、ここからサハリンまで渡っていくのでしょうか。桃岩展望台を見たあと、車で戻る際にハイタカ属の姿が。見ると北海道では珍鳥のサシバのオスです。本当に離島は何が出るのかわかりません。

ウトウ
利尻島へ向かう途中に出会ったウトウ

午後からは利尻島へ向かいます。利尻島到着後、早速ガイドさんとともに今回のツアー最大の目的であるクマゲラを探しに行きます。
森の中を歩いているとそばから「ゴッゴッ」と鈍器で殴っているような音が。見ると5mほどのところでクマゲラのメスが木をつついています。皆さん驚きです。

クマゲラ
クマゲラ(メス)

その後今年の営巣木に案内して頂き、静かに抱卵交代する瞬間を待ちます。抱卵していたオスがメスの帰宅が遅いため何度も外を見たり巣のなかで叩いて交代を催促したりとなかなか見ることのできないシーンを観察できました。

 

4日目は、日の出の時間から皆さんの宿のそばにある公園で散策です。「利尻コマ」と呼ばれるだけあって、周辺にはコマドリの声があちこちから響いています。
声の方向を見ているとオスが目線の高さにぴょんと上がり、目の前で囀りを披露してくれました。日本三大鳴鳥の囀りを目の前で聞くと格別です。

コマドリ
コマドリ

コマドリ
コマドリ

そして、そばの草原にはなんとキマユホオジロがいました。以外なところにいる珍鳥の姿に皆さん興奮です。かなり敏感で姿を捉える前にどこか飛んでいってしまうので観察は難しかったですが、ほとんどの方がその姿を見ることができたかなと思います。

キマユホオジロ
キマユホオジロ

朝食後は再度クマゲラ探し、そして利尻島を一周しながらバードウォッチングです。昨日とは違う巣穴に向かいます。ここでも姿を隠し声を出さずに静かに待ちます。
2時間ほど経ち、やっとメスの帰宅です。メスが交代のために巣穴を覗くとオスが飛び出し、目の前を飛んでいってくれました。とても貴重な瞬間でしたね。

クマゲラ(オス)
クマゲラ(オス)

その後は利尻島を巡ります。沓形岬公園では、ノゴマが利尻島背景にこちらを向いて囀りを披露してくれました。

ノゴマ
ノゴマ

オタトマリ沼では、綺麗なチュウサギやダイサギ、そして散策すると夏羽のアカガシラサギを発見し、観察することができました。北海道ではシラサギは基本的に珍鳥、繁殖もしていないのですが、離島では毎年多くのシラサギが見られます。これは離島の特徴の一つです。

チュウサギ
チュウサギ

アカガシラサギ
アカガシラサギ(夏羽)

帰り際、お土産を買うため売店に立ち寄ると、サバクヒタキとシラガホオジロのメスが!一瞬の出来事で見たのはほんの一瞬でしたが、どこにどんな鳥が出るのかは本当にわかりません。

 

最終日も早朝宿のそばの公園で散策です。コマドリは昨日とはうって変わり姿をなかなか現さず、森を歩くとクロジやイスカ、カシラダカが姿を見せてくれました。

クロジ
クロジ

クロジ
クロジ

カシラダカ
カシラダカ

宿へ戻る際には再度キマユホオジロが姿を見せてくれ、そしてマミチャジナイが目の前で採餌していたりと、最後まで楽しませてくれたツアーとなりました。

マミチャジナイ
マミチャジナイ

離島のツアーは本当に何がどこに出るかわからないというのも魅力です。そして利尻島はクマゲラ、コマドリが数多く生息し出会える可能性が高いというのも大きな魅力です。是非また訪れて頂き、今回とは違う魅力を再発見していただけると幸いです。ツアーにご参加された皆様お疲れさまでした!

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!