渡りの本流!韓国・春の離島【2本目・後編】

Report by 五百澤日丸 / 2023年5月2日~7日

 

ツアー4日目

今日は韓国のこどもの日です。どこも人や車で混雑する見込みです。朝起きると・・・信じられないことに強風、雨、霧と3悪の天候です。これはどうみても今日も欠航だろうと思いました。案の定、すぐに欠航連絡がありました。今日行けないとなると、もうほぼ終わりです。明日、行けたところで、7日の飛行機には間に合いません。絶望の中、このあとどうするかを、今日も総力をあげて考えます。雨が強いので、まずは鳥のセンターに向かいました。ここでは韓国の鳥の剥製を見学し、近くの人工塔の上で繁殖するコウノトリの2羽のヒナと成鳥を観察しました。詳しくは分かりませんが、どうやらこのコウノトリは日本で増えた一部がやって来ているようでした。

人工塔の上の巣とコウノトリ

この悪天なら、離島では普通鳥たちがたまっていくので、昨日、ほとんど鳥がいなかった岬も同様に鳥が入ってきているのではないか、ということで岬へ向かいます。さらに暴風ぎみになってきてガスも濃くなってきました。観察には辛い状況ですが、きっと、鳥は増えているはず、と期待に胸が膨らみます。現地に着くと、視界も200mもないような濃霧となっていました。畑は林縁を探すと、やはりいました。シベリアアオジ、キマユムシクイ、アムールムシクイ、シマノジコなどが確認でき、少し盛り上がりました。海の方からは続々と鳥が入ってきている感じでした。そして、クロウタドリが出現し、この日の一番の盛り上がりをみせました。島に渡れなかった韓国のバーダーたちも、この地に数人来られて、一緒にクロウタドリを観察しました。やはり皆さんも苦労されたようです。この岬の付け根にあるホテルを何とかとることも出来て、明日の朝に期待して各自、部屋に戻るのでした。
この日は66種確認しました。

シマノジコ

ツアー5日目

今日も起きると宿の周辺は、濃いガスの中でした。これはいい条件だ、と部屋の窓を開けて外を見ていると、すぐそばでシマゴマの声がしたので、外に出てみました。霧雨が結構強く降っていて、なかなか辛い状況でしたが、朝食前に、皆で歩いて探鳥です。ポイントにつくと、ツメナガセキレイの夏羽が数羽、タイワンハクセキレイも数羽、ハリオシギが裸地に見られ、畑には、コホオアカ、シロハラホオジロ、キマユホオジロ、ノジコ、ムネアカタヒバリ、コサメビタキと続々と出現し、ようやく「らしい」状況となりました。

ダルマエナガ
コイカル

ヒタキ類がさっぱりで残念ではありましたが、今日もクロウタドリが出現し、昨日よりもじっくり観察出来て本当に良かったです。朝食の後は、霧雨から土砂降りに近い状況になったので、昼近くまで宿でしばらく休憩を取ることにしました。午後になり雨も少し落ち着いてきて、15時まで岬のポイントで楽しみました。このあと、仁川に向けて北上しました。多少、渋滞しましたが、ほぼ予定通りに仁川に到着し、夕食を取った後、ホテルに入り休みました。考えてみると、もし、初日に島に渡ることが出来ていたとしても、この日も欠航だったため、我々は島流しにあい、帰れなくなるところでした。そう思うと、ゾッとするのでした。いいのか、悪いのか、複雑な心境になりましたが・・・。
この日は49種確認しました。

クロウタドリ
クロウタドリ

 

ツアー6日目

今日は曇で、雨も上がりまあまあの天気です。ホテルで朝食後、荷物を積んで出発しました。ツアー最終日です。まずは、ソウルの郊外西方にある水田地帯へ向かいます。ここでは夏羽のクロツラヘラサギを間近に見ることが出来る場所です。到着すると、その水田地帯に隣接する丘の林からシマゴマの声がたくさんしています。こちらも荒天続きだったせいか、鳥たちが入ってきているようでした。しかし、その姿をみることは出来ませんでした。水田地帯では、タカブシギやヒバリシギ、オオヨシキリなどを堪能しました。次は最後の探鳥地、クロツラヘラサギの繁殖地に向かいます。現地に着くと、クロツラヘラサギの巣には雛がだいぶ大きくなっているものや、生まれたてのような可愛いヒナが見られました。モンゴルセグロカモメもヒナが孵っています。近くの松林ではシマノジコやシマゴマがいましたが、姿は一瞬で、不完全燃焼でした。これでタイムアップです。関西方面は飛行機の時間が早いため、先に大西さんと、戸塚さんを空港でお別れし、残りは空港の滑走路を望む食堂で最後のお昼ご飯、キンパ(韓国風太巻き)を食べてから空港に向かいました。その上空を1羽のブッポウソウがフワフワと飛んでいく姿を最後に、ツアーは終了しました。

クロツラヘラサギ
クロツラヘラサギ

この日は57種でした。6日間のトータルは、129種という結果となりました。
今回は、一度も島に渡れず、極めて残念でした。天候にはどうしても勝てませんでした。来年は欠航が少ない島に行く内容にしようと考えております。どうか宜しくお願い致します。

この記事を書いた人

五百澤 日丸 いおざわ ひまる
新潟県在住。(有)レイヴン・所属。鳥類調査を中心に、執筆、写真撮影、ツアーガイドを行う。一番の関心事は、ヒマラヤ山脈から台湾・南西諸島・朝鮮半島・日本にかけての鳥類の分類・分布。主な著書に「日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版」(共著/文一総合出版)、「日本の野鳥650」(共著/平凡社)など。他にも著書多数。

渡りの本流!韓国・春の離島【2本目・前編】

Report by 五百澤日丸 / 2023年5月2日~7日

 

ツアー1日目

韓国の離島に大西敏一さんの誘いのお陰で渡ってから、早13年が経ちました。コロナ禍のため4年ぶりのツアーとなりました。4月25日の1本目のツアーについで、2本目のツアー開始です。
現状では成田発、仁川着の飛行機が15:50着という夕方になるため、初日はホテルへの移動のみとなりました。1本目のツアー後は、大西さんと仁川にて1日の休日を挟んでホテル待機でした。成田から8名様を空港でお出迎え、無事に合流しました。今回は、来年のために下見で参加する写真家の戸塚学さんも一緒です。総勢、11名は一路、ホテルに向かいます。車中から見掛けた鳥や、高速道路のサービスエリアに隣接するちょっとした林を覗いた程度でしたが、この日は29種ほどを確認しました。だいぶ暗くなっていたとはいえ、時差は無いものの日本よりやや西側になるのでまだ多少明るかったのは救いでした。夕食は参鶏湯を食べてからホテル入りしました。明日の船に向けてゆっくり休みます。

参鶏湯

 

ツアー2日目

朝起きると、晴れていて風も微風。これは文句なしの出航日和です。期待を胸に朝食会場まで歩いて行きます。気持ちの良い朝です。潮の関係で、船は午後便となってしまったが、韓国本土も見どころはいっぱい、余裕の気持ちで朝食をとりました。ところが、その期待の午後便も欠航する、との連絡が入ってしまいました。過去に潮の関係で欠航になったことはありませんでした。聞くところによるとかなりの大潮で、港に船が入れないから、というところのようです。しかたが無いので朝食後、今回の旅の目玉のひとつである、ワシミミズクのポイントに向かいます。1本目のツアーで行った場所と同じところです。1本目のツアーレポートの中で大西さんが書いておられるように、マナーの悪い一部の地元カメラマンのせいで?すぐに逃げてしまう場所になってしまいましたが、遠くから何とか成鳥とヒナを全員で見ることが出来ました。

ワシミミズクの幼鳥

早々に移動して、昼食を食べに移動します。昼食後、今度はちょうど満潮になる、河口干潟に向かいます。思惑通り、だいぶ満ちてきていてシギ・チドリ類は結構近いところに集まってきています。ホウロクシギが多い。ダイシャクシギもいる。チュウシャクシギ、キアシシギ、ソリハシシギ、オオソリハシシギ、オグロシギ、ウズラシギ、トウネン、ハマシギ、エリマキシギ、アカアシシギ、シマアジ・・・などなど2,000羽くらいはいただろうか。十分に観察でき満喫することができました。明日はきっと大丈夫だろうと期待しながらホテル近くで夕食をとり、各自、部屋に戻りました。この日は84種確認しました。

河口干潟とシギ・チドリ類
オグロシギ群飛

 

ツアー3日目

朝起きると、空気は冷たく風が出始めている。これまでこの程度の楓は問題なく出航してきたので、大西さんも現地の人も安心していました。朝食を取っていると、なにやら現地ガイドさんの携帯に電話がなった。ガイドの朴さんの顔が曇る・・・。まさか・・・。電話を切った朴さんの話では、船会社からの連絡で午前便は欠航とのお知らせだったとこのと・・。何と言うことでしょう・・・。午後便が出航になることが決まるのは11時頃だと言うので、今度はすぐ戻れる岬へと出向く。ここは本土でも渡りの鳥が多少見られる場所です。落ち込んでいても始まらないし、今後、どうやって鳥を多く楽しめるかを考えながら進めていくしかありません。しかし、岬へ行っても鳥が少ない・・・。今、ここで少ないと言うことは、離島も同様に少ないことが予想されます。それでも離島の方が、当然、何かしらいるのは間違いないでしょう。考えてもしかたが無いので、とにかく必死に鳥を探します。地つきのダルマエナガが多少見られたのと、あとはせいぜいシベリアアオジやムジセッカの声がする程度でした。

シベリアジュリン

11時頃、朴さんの携帯に連絡が入る。固唾を飲んで遠くから見守っていると、朴さんの手が「ばってん」と、示しました・・・。午後便も欠航となったのです。ショックが大きすぎて、しばらく思考停止・・・するも、この後どうするかを考えなくてはなりません。大西さんは現地の友人とやりとりし、朴さんも知り合いの研究者からポイントを訪ね、五百澤もかつて韓国で10年ほど調査していた友人に連絡してポイントを教えて貰うなどしました。昼食後は、これらの3つのポイントを巡りましたが、やはり天候のせいでしょうか、どこも鳥が少なくて、全体的には非常に物足りないものでした。しかし、本当にどうしようもありません。それでも、カラアカハラ、シベリアジュリン、シギ・チドリ類を堪能して、宿に戻りました。旅程変更のため、本土の宿もいよいよ明日からほぼとれない状況です。不安の中、部屋に戻り、この日も終わりました。

ハシブトガラ
昼食の海鮮カルグクス

 

この日は71種確認しました。多くの情報を教えてくださった、現地のバーダーや研究者、友人に心から深く感謝致します。ありがとうございました。

この記事を書いた人

五百澤 日丸 いおざわ ひまる
新潟県在住。(有)レイヴン・所属。鳥類調査を中心に、執筆、写真撮影、ツアーガイドを行う。一番の関心事は、ヒマラヤ山脈から台湾・南西諸島・朝鮮半島・日本にかけての鳥類の分類・分布。主な著書に「日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版」(共著/文一総合出版)、「日本の野鳥650」(共著/平凡社)など。他にも著書多数。

夏の仲ノ御神島&石垣島アジサシ観察

Report by 五百澤日丸 / 2021年7月15日~7月18日

ツアー下見のため、4日前から石垣島に入って島内を細かく見て回りました。何度も来ている石垣島ですが、毎年同じ場所にいるとは限りません。環境の改変によって、ポイントも大きく変わるので、ツアー直前の下見は非常に大切です。心配していた海況も、非常に穏やかでクルーズ船の航行には問題が無いことを確認し、胸をなでおろしました。

 

初日、石垣空港で参加者の皆様と無事に合流しました。皆さん、挨拶もそこそこに開口一番「船は大丈夫ですか!?」でした。海況は穏やかで問題が無いことをお伝えすると、仲ノ御神島クルーズに2回行こうとして、2回とも欠航で悔しい思いをしているので心配されていたとのことでした。

 

潮の時間がちょうど良く、引き始めで干潟が拡がりつつある状況を生かして、まずは海岸へ向かいます。7月中旬にもなると、シギ・チドリ類が増え始める頃です。干潟には、トウネン、キアシシギ、アカアシシギ、キョウジョシギ、オオメダイチドリ、ダイゼンなどの姿が見られました。今回のメインとなる、アジサシ類はエリグロアジサシとコアジサシが干潟に降りて休んでいました。強い陽射しの中、真っ白い姿は暑さを忘れさせてくれるほど美しかったです。

エリグロアジサシ
エリグロアジサシ(撮影:長谷川誠様)
クロアジサシ
クロアジサシ(撮影:長谷川誠様)

続いて住宅地にある林、水田地帯、その他のポイントを巡り、リュウキュウアカショウビン、シロハラクイナ、ムラサキサギ、移入種で世界的に分布を拡げつつあるカバイロハッカなどを確認して、この日は明日に備えてホテルへ入りました。

 

翌朝、外は今日もいい天気です。皆さんの体調も万全です。朝食後、ホテルから歩いてクルーズ船へ向かいました。すでにクルーズ船のスタッフの方は準備して待っていました。以前にもお世話になった船長さんと挨拶し、今日は穏やかな海況であるとのことで、参加者の皆さんのテンションもあがります。

仲ノ神島遠景(船上より)
仲ノ神島遠景(船上より)(撮影:長谷川誠様)

石垣港を就航して、リーフ内を滑るように船は進みます。竹富島や黒島などを見ながら、所々にある灯浮標にとまるオオアジサシ、エリグロアジサシなどを観察しました。リーフを出ると、さすがにうねりが出てきます。それでも今日はかなり穏やかな方です。遠くに仲ノ御神島が見えてくると、周辺の海域にはアナドリ、クロアジサシ、カツオドリなどが飛び始めます。やがて仲ノ御神島が目の前に迫ってくると、たくさんのカツオドリが船の上に集まってきました。ごく近くを大きなカツオドリが飛ぶと迫力があります。その表情もはっきりと分かります。

仲ノ神島近景(船上より)
仲ノ神島近景(船上より)(撮影:長谷川誠様)

波の少し穏やかな場所へ入り、聳える岩壁を見上げると、白っぽいカツオドリがいます。例年、白い綿羽に覆われたカツオドリのヒナがたくさんいる時期なので、「白いのはカツオドリの幼鳥です」と説明して、双眼鏡を覗いてびっくり!しました。なんと、アオツラカツオドリの成鳥でした。それもあちこちにいます!私を含め、船上は騒然となりました。数えること、最大同時64羽のアオツラカツオドリを確認しました。これは国内でも最大級の数です。巣は確認出来なかったので、これから繁殖するのか、たまたまやってきたものなのかわかりませんでした。

アオツラカツオドリ
アオツラカツオドリ(撮影:長谷川誠様)

島を1週しながら、一番波がおだやかな場所へ行きます。セグロアジサシ、マミジロアジサシ、クロアジサシが無数に舞い、夢のようなひとときを楽しみます。島の北東側でアンカーをおろし、しばし、観察を楽しみます。斜面を飛ぶ白いカツオドリがいます。「こちらにもアオツラがいますね・・・」と、言いかけてまたしてもびっくり!しました。なんと尾が白いのです。「アカアシカツオドリです!」と、またしても予想外の展開に、皆さんと再び大興奮となりました。飛んできたアカアシカツオドリがとまった木には12羽のアカアシカツオドリがとまっているではありませんか!それも巣があり抱卵中?の個体もいます。茶色いのは幼鳥ではなく、褐色型のようです。さあ、次はネッタイチョウ類!と、期待しながら待ちますが、残念ながらそれらは出ませんでした。それでもアオツラカツオドリとアカアシカツオドリがたくさん見られただけでも十分贅沢な瞬間でした。こうしているうちに、あっという間に蛙時間となりました。アジサシ類とカツオドリ類の大コロニーの島、仲ノ御神島をあとに、心地よい疲労感の中、船は一路石垣島へと向かいました。

アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ(撮影:長谷川誠様)

翌日は、石垣島内の各ポイントを巡ります。穏やかな海だったとはいえ、やはり揺れない陸地は快適です。島の各ポイントを巡り、カンムリワシ、シロハラクイナ、リュウキュウツバメ、ムラサキサギ、ズグロミゾゴイ、オオアジサシ、クロハラアジサシなどを観察しました。今年は、石垣島で繁殖するアジサシ類は例年よりも少なくて、やや物足りない状況でした。ちょっと残念ですが、これも自然界のことです。来年に期待したいところです。

カンムリワシ
カンムリワシ(撮影:長谷川誠様)
ズグロミゾゴイ
ズグロミゾゴイ(撮影:長谷川誠様)
リュウキュウアオバズク幼鳥
リュウキュウアオバズク幼鳥(撮影:長谷川誠様)

最終日、皆さんにどこで何を目的に回るか相談して、そのリクエストに応える形にしました。まだ行っていない地域を中心に出現する可能性がある、オニカッコウのポイントのほか、リュウキュウアカショウビン、オリイヤマガラ、カタグロトビなどを探しました。時間があまりなかったので、粘ることは出来ず、全部は見られませんでしたが、それなりに楽しむことができました。

リュウキュウアカショウビン
リュウキュウアカショウビン(撮影:長谷川誠様)

とにかく暑くて大変でしたが、最大の目的である、チャーター船で行く仲ノ御神島クルーズが欠航することなく、無事に終了することが出来たのはなによりでした。やはり石垣島は何度来ても素晴らしいところでした。参加者の皆さん、お疲れ様でした。そしてありがとうございました。

この記事を書いた人

五百澤 日丸 いおざわ ひまる
新潟県在住。(有)レイヴン・所属。鳥類調査を中心に、執筆、写真撮影、ツアーガイドを行う。一番の関心事は、ヒマラヤ山脈から台湾・南西諸島・朝鮮半島・日本にかけての鳥類の分類・分布。主な著書に「日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版」(共著/文一総合出版)、「日本の野鳥650」(共著/平凡社)など。他にも著書多数。