渡り鳥の楽園・春の飛島

Report by 簗川堅治 / 2021年5月6日~11日

 

出発前の予報では、予定通り初日の7日は出航するものの、帰りの日の9日、そしてその次の10日は欠航の可能性が高いようでしたが、ツアーは予定通り行うこととなりました。

 

まずは初日。この日は全国的に暖かくなる予報で、穏やかな中、スタートしました。宿泊先前には昨日まで珍鳥セグロサバクヒタキ♀がいたのですが、渡っていってしまったようで、その姿はありませんでした。残念!

キビタキ(撮影:樽井一郎様)

お昼をとりながら、ダムサイトでヒタキやムシクイの観察です。早速、キビタキ♂が現れました。

なかなか奥から出てきませんでしたが、最終的には目の前で見ることができました。他、エゾムシクイなども見ることができました。

キマユホオジロ(撮影:樽井一郎様)

続いて3の畑です。コウライウグイス情報がありましたが、現れず。小休憩をしたあと、お花畑と呼ばれる畑へ。道中、現れたのは珍鳥キマユホオジロです。草地にいて、なかなかじっくりと観察撮影できずにいたところ、珍鳥コホオアカも登場。なんと珍鳥2羽並んでの採餌を見ることができました。さすが飛島ならではの光景です。肝心のお花畑は、お目当てのシマノジコはいなくなっていたようです。その後、マミジロキビタキやムギマキ情報があったので立ち寄りましたが、残念ながら見られず。最後は校庭で、コホオアカ、ホオアカ、ノジコなどを見て、この日を終えました。

 

2日目。朝食前に校庭に行きました。風がやや強いです。鳥影はあまりなく、種類も昨日とあまり変わり映えしませんでした。そんな中、寺島の住人、ハヤブサが現れ、小鳥たちは一斉に藪へと消えました。朝食後はカラスバトに挑戦です。とあるポイントで待つことしばし。「グルル……グルル……」と飛翔時に発する独特の鳴き声を出しながら、カラスバトが現れ、枝に止まりました。ちょっと枝被りながらも姿が見えるところに止まってくれ、全員姿を見ることができました。

 

アマツバメとウミネコの営巣地を見たあとは、ハヤブサです。子育て中と思われるハヤブサ。苦労の末、こちらも見ることができました。今度は畑を回ります。しかし、晴れ続きなので鳥影はまばらです。離島の宿命です。ムギマキのさえずりや綺麗なオオルリを確認したくらいでした。お昼になり、ダムサイトで昼食をとりながら、鳥待ちです。ここでも現れる鳥たちは昨日と変わり映えしませんでした。どうにも、うまくいきません。すると、オジロビタキ♂情報が入ったので、現場へ向かいました。

コサメビタキ(撮影:浅井賢治様)

現場到着。複数のコサメビタキを中心に、キビタキ、センダイムシクイ、エゾムシクイなどがフライングキャッチをしている姿がありました。

ムギマキ(撮影:浅井賢治様)

目の前まで飛んできては虫を捕らえ、翻って戻っていきます。軽業です。すると、ムギマキ♂が現れました。しかし、全員ゆっくりと見ることはできず、どこかへ行ってしまいました。また、肝心のオジロビタキ♂も見当たらず。小休止を挟み、山グランドでムギマキを探します。複数いるとの情報です。探し始めて間もなく、まずは1羽目。♀の若い個体のようです。それにしても、止まったと思うとすぐに飛んで、なかなか思うように観察できません。そうこうしているうちに、2羽目、♂の若い個体が出てきました。しかし、これもじっとしてくれません。今度は♂の成鳥が来ました。少なくとも3羽はいたようで、なんとかじっくり見ることができました。

 

続いてはヘリポートです。休憩しながら鳥待ちしていると、またムギマキが出てきました。綺麗な個体です。今年はムギマキの当たり年のようです。鼻戸崎も鳥影は少なかったものの、珍鳥シマゴマが鳴いてくれたので、藪から出てくることを祈りつつ、しばし待ちました。3度鳴いてくれたものの、結局、現れず。最後は校庭です。朝よりもさらに鳥影は減り、ホオアカを見た程度で2日目を終えました。

 

3日目。早朝は自由行動とし、みなさん、それぞれに楽しまれたようです。朝食中に「本日の定期船は海上荒天のため、欠航となりましたのでお知らせします」の島内アナウンスが流れました。1泊の延長を余儀なくされました。朝食後、1の畑でムギマキ♂を見て、西にある御積島が見える展望台へ寄り、2の畑へ行きました。オオルリ、キマユムシクイ、キマユホオジロがいました。3の畑でトイレ休憩をした時に、上空をツミが通過していきました。そのうが膨らんでいたので、食事直後のようでした(この時刻のちょっと前に、違う場所でツミがアカハラを捕食した場面を撮影した別のバーダーがいて、どうやら同一個体のようです)。この日は林道を歩くことにしました。しかし、全く鳥影なしでした。

オジロビタキとムギマキ(撮影:吉田徹様)

昨日、ムギマキやムシクイがたくさんいた四谷ダムへ向かいました。昨日同様、コサメビタキやムギマキ、ムシクイ類がたくさん出てきました。珍鳥オジロビタキ♂、発見です。時折「ジジジジ……」と鳴いては、比較的近くまできました。オジロビタキの後ろにムギマキが止まった場面も。楽しく、あっという間の時間を過ごしました。

カラフトムジセッカ(撮影:吉田徹様)

法木では、珍鳥カラフトムジセッカが道路に出てくる場面に遭遇しました。山グランドやヘリポートでムギマキ♂なども見ました。鼻戸崎ではコルリ♀、カラスバトを観察。最後は校庭へ行きましたが、いい鳥はいませんでした。

チゴモズ(撮影:簗川堅治)

4日目。この日も残念ながら欠航です。希望者のみ、案内することとなりました。朝、ヘリポートへ行ってみると、5月下旬に出るチゴモズがもう来たという情報が入りました。しばしチゴモズ待ちです。結果として、出たは出たのですが、一部の方だけが見れたようです。それでも、珍鳥コウライウグイスが飛んできて、みなさん騒然となった場面もありました。続いて珍鳥アカガシラサギ情報が入り、今度はそれを探します。しかし、残念ながら会えず。最後は再びチゴモズ狙いでヘリポートへ。到着早々、チゴモズに出会うことができました。

 

島流しに遭い、2日も延泊となったツアーでしたが、みなさんそれぞれにいい鳥に出会え、楽しいひとときを過ごすことができたようです。離島での鳥との出会いは、やはり格別です。参加者のみなさん、お疲れ様でした。

 

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

立山のライチョウを撮る 4月編

Report by 戸塚学 / 2021年4月23日~24日

白いオスのライチョウ

スタートの前日に立山側から約1時間早く到着すると連絡を受けていたので、1時間早く集合場所で合流。いったん外に出て二人がサングラスを付けていなかったので装着をお願いするが、持ってきていないというので、急遽売店で購入していただく。4~6月の高山帯の紫外線は平地の比ではなく、危険なので私の案内の時は必ず絶対条件としています。一旦雪目になってしまうとひどい場合は1週間目が見えなくなることもあるのでどうしても安全のためには従っていただくことにしている。

さて雪道を歩きながら約20分かけてみくりが池温泉に到着。1時間早いので食事の前に朝見つけておいたライチョウを撮影に行くことに。ポイントに到着すると白いライチョウのオスは「待っていました」というようにハイマツの下から動き出し、何とか撮影できました。その後は人が入れないエリアに移動してしまったので食事に行きましょうかと伝え歩き出す。とその時、別のオスが同じ場所から出てきたので慌ててこちらも撮影してもらう。この個体も私たちが入ることができないエリアに移動してしまった。昼飯前のライチョウもとりあえず撮れたので心にも余裕ができた状態で昼食を食べながら簡単なミーティングとライチョウの行動と撮影のコツを伝え、宿の施設の案内をする。本来ならこのまま日没まで撮影なのだが「ライチョウがよく活動をする15時まで休憩したい」という希望で休憩決定。

オコジョ
オコジョ

15時宿のフロントに集合してポイントを巡ります。近場のポイントにライチョウが見当たらないので少し離れたポイントへ。到着すると白いライチョウのペアがいたが、どちらもハイマツの中でまったり。いなければ探すが、いるのだから待つことに。1時間待つとようやく動き出し、なんと山をバックにペアを撮影することができた!再びハイマツに隠れてしまったので夕日のポイントへ移動するとここにも白いオスがいた。夕陽と絡むことを祈ったがそこまではうまく事は運ばなかった。

夕食後は月明かりに照る立山の撮影をするか聞いてみると、少し雲が出ていてあまりいい条件ではないのでパス!ということで初日は終了しました。

 

2日目は5時に集合してライチョウを探してポイントを巡るが見当たらない。途中小鳥の羽が散乱している場所をお客様に見ていただき「状況から猛禽ではなくオコジョかテンかもしれませんね」と説明をしてしばらく歩くとお客様から「あっ、オコジョ!」と叫び声。まさかと思いながらも指さす方向を見ると、いた!なんとその後、私たちの目の前の岩の周辺を出たり入ったりを繰り返す。撮影をしようとしてもすばしこくってかなり苦戦するがなんとか撮影することができた。いやぁ~早起きは三文以上の得になってしまった。お客様は撮影ができなかったようだが、この距離でしっかり見られただけでも超ラッキーだ。なんといっても20年通っている私でさえこれで6度目なんです。

ライチョウのペア

朝食を食べた後は荷物整理をして8時に出発。昨日のペアがいたポイントまで移動するとすでにカメラマンがライチョウの周りに集まっていたので探す手間が省けた。今日もハイマツに入って動かないので動くのを待つことに。その間に立山の上にハロが出ていたのでそちらも撮影してもらいながらライチョウが動くのを待つと1時間ぐらいで動き出してくれ今日もばっちりと撮影することができた。

立山とライチョウのペア

1時間早くスタートしたということでもないが目的の白いライチョウがしっかりと撮ることができたので早めに下山したいということで、食事を済ませ1時間早い便で一緒に下山しました。

ライチョウはあまり天気がいい日中は暑さが苦手なのでハイマツの下に潜って外に出てこないことが多く、2日間の好天はうれしいような、困ったような(笑)天気だったが、無事白いライチョウのオスとメス、ペアまで撮ることができました。他にもイワツバメ・イワヒバリ・カヤクグリも姿を見せましたが、撮影は白いライチョウだけでいいようでした。

地獄谷雲煙とオスのライチョウ

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員