山形・天童でチゴハヤブサの親子を観る(1本目) 

Report by 簗川堅治 / 2022年8月20日~21日

 

毎年恒例のツアーですが、昨年はチゴハヤブサの繫殖率が過去最も悪かったため中止となりました。今年は順調ですべての営巣地でツアー前に無事巣立ちました。初日は全国的にぐずついた天気で雨が降るのか心配な中、スタート。結果的には、何とか降らずに済んだのは幸いでした。

 

1ヶ所目に行きました。ほどなく、スギに止まる巣立った幼鳥を見つけました。すでに餌をもらって満腹なのか、じっとしています。

チゴハヤブサの幼鳥
チゴハヤブサの幼鳥

早速、近づいて観察撮影です。今度は別の幼鳥が飛び出して、離れたスギに止まりました。巣立って一週間になり、飛翔力もそれなりになってきたようです。しばらくすると、親が餌を持ってきました。幼鳥は親に比べるとか弱い声で「キィキィキィ……」と鳴きながら、餌乞いします。その後も何度か、親や幼鳥が飛び回りました。

飛ぶチゴハヤブサの親
飛ぶチゴハヤブサの親

この頃は、♀親が餌やりの中心になり、♂はあまり見られなくなることが多いようですが、ここの♂親はじっくりと観察することができました。

チゴハヤブサの親
チゴハヤブサの親

2日目。予報では朝から一日中、晴れとなっていました。朝食前に前日とは別の場所に行きました。ところが途中はけっこうな霧で視界不良です。これは参ったなと思っていましたが、観察場所は霧がかかっておらず、ほっとしました。住宅街の観察場所だったため、細心の注意を払いながらとっておきの場所で観察を始めました。♀親と巣立った幼鳥が3羽、高いヒマラヤスギに止まっていました。しばらく動きがなかったものの、♀親が狩りにいき、セミやトンボを捕ってきては幼鳥に与えるシーンが何度かありました。

セミを食べるチゴハヤブサの幼鳥
セミを食べる幼鳥

育雛中は小鳥を与えることが圧倒的に多いのに対し、巣立ち後はセミやトンボなどの昆虫が多くなります。セミやトンボを食べて腹いっぱいになるのか?と心配になりますが、その心配が無用のようです。元気な幼鳥は、何度か飛び回ってくれました。

 

一泊二日、しかも夕方と早朝のみの観察でしたが、山形の夏の風物詩・チゴハヤブサを堪能できました。参加者のみなさん、ありがとうございました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

夏の富士山・奥庭の野鳥と大磯海岸でのアオバト観察

Report by 吉成才丈 / 2022年8月22日~24日

<1日目>

途中から乗車する方を除き、新宿のバスターミナルに集合。ここから乗り換えなしで、標高約2,300mの富士山五合目まで行かれるのは本当に便利です。

予定より少し遅れて奥庭荘に着き、先着組に様子を聞くと、「この日の午前中はウソが1回出ただけ..」という不安な返答。

奥庭荘の水場
奥庭荘の水場

たしかに、昼食を済ませてじっと待っても、小鳥たちは出てきてくれません。

雨が多いことも影響しているのだろうと思ってさらに待つと、夕方になってようやく、ルリビタキやウソ、キクイタダキなどが出てきてくれました。
頂いた写真はどれもどアップですが、被写体までの近さが感じられますよね。

ルリビタキ(冨安市子様撮影)
ルリビタキ(冨安市子様撮影)
ウソ(冨安市子様撮影)
ウソ(冨安市子様撮影)

奥庭荘は山小屋なので夜間の消灯も早いのですが、早めの夕食後には、ガスの中で赤く染まる富士山も見られました。

ちなみに、奥庭荘の夕食は山小屋にしては豪華でウナギもついており、皆さん驚かれていました。

夕方の富士山山頂付近
夕方の富士山山頂付近

<2日目>

昨夜は時折強い雨が降ったものの、未明には雲がない時間帯もあったようで、素晴らしい星空の写真を撮られていた方がいて驚かされました。

夜明けの富士山の風景も美しく、これだけでも来る価値があると思います。

夜明けの富士山
夜明けの富士山

昨日は水場への飛来が少なくハラハラしましたが、この日は朝からルリビタキやウソ、メボソムシクイ、ヒガラなどがコンスタントに出てくれました。

メボソムシクイ(冨安市子様撮影)
メボソムシクイ(冨安市子様撮影)

光線状態もよく、シャッターチャンスも多かったと思いますが、平地では見慣れないウソの幼鳥はかわいかったですね。

ウソの幼鳥
ウソの幼鳥

そして、水場には降りてきませんでしたが、ホシガラスは近くのカラマツなどにとまってくれました。

ホシガラス(冨安市子様撮影)
ホシガラス(冨安市子様撮影)

奥庭荘の水場はすぐ目の前にあり、最短のポジションだと10mを切るほどの近さなので、観察は双眼鏡でも十分楽しめ、撮影は大砲レンズでなくても大丈夫です。

また奥庭荘の良さは、自分のペースで鳥見や撮影が楽しめる点にもあり、近くの散策路で景色や植物を見ながら鳥を探したり、奥庭荘で頼めるコーヒーを飲みながら座敷で鳥を見ることもできます。

なかには2階の室内から窓を開けて見下ろす方もおり、銘々に亜高山の鳥を楽しんでいただきました。

翌日のアオバト観察に備え、昼食後には大磯方面へ移動しました。

<3日目>

大磯・照ヶ崎海岸のアオバトは早朝からの飛来が多いため早めに現着したものの、すでに10名以上のカメラマンがスタンバイしていました。

アオバトは数羽から30羽ほどの群れがコンスタントに飛来し、磯におりては海水を飲む行動が観察されました。

アオバトの群れ
アオバトの群れ
アオバト
アオバト
海水を飲みに降りたアオバト
海水を飲みに降りたアオバト

しかし、この日はハヤブサ幼鳥が頻繁にアオバトを狙って群れに突っ込み、アオバトも落ち着いて海水を飲んでいられませんでした。

ハヤブサは若く、狩りも未熟なため、なかなかアオバトを捕らえることができません。おかげで(?)、緊迫の狩りの様子を何度も見ることができました。

やっとアオバトを捕らえたと思ったら、その後、海上に獲物を落としてしまいました…

獲物を捕らえたハヤブサ
獲物を捕らえたハヤブサ

アオバト以外にもクロサギやカワセミが出たり、ミサゴが海に飛び込んだりで、あっという間に時間が過ぎていきました。

トビ(冨安市子様撮影)
トビ(冨安市子様撮影)
ミサゴ
ミサゴ
クロサギ(冨安市子様撮影)
クロサギ(冨安市子様撮影)

暑さもあり、アオバトの飛来も少なくなるので早めに切り上げて解散しましたが、皆さん、チェックアウトしていなかった部屋に戻り、シャワーを浴びてお帰りになられたと思います。

大磯のアオバトは早朝の時間帯がよいので奥庭荘と組み合わせてみましたが、環境にも鳥にも変化があり、バラエティに富んだ鳥見ができたと思います。

また、ほぼ歩かずに自分のペースで楽しめるので、のんびり楽しみたい方には最適だと感じました。

(観察種数29種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

渡り鳥の楽園・春の飛島

Report by 簗川堅治 / 2022年5月14日~16日

 

日本海側の離島は、渡りの時期は鳥、鳥、鳥…色々な鳥が所せましとあちこちで見られるのが特徴です。はてさて、今春は……?

 

1日目。一足早く島に入っていたガイドの簗川ですが、なんて言うことでしょう!島に鳥がいません。珍鳥どころか、普通種もいない有様。本当にほとんどいません。原因は晴天続きなことが考えられます。鳥が島に降りるのは、理屈上は天気が悪い時です。大海原を渡っている時に天気が崩れると、緊急避難的に島に降ります。逆に天気がいいと、島には降りませんし、島にいたものは飛び立っていきます。

 

そんな中でのスタートとなりました。何もいない島内をただただ歩くだけの時間が過ぎていきました。ようやく法木でミヤマホオジロ♂とキビタキ♀を見ました。

ミヤマホオジロ
ミヤマホオジロ(撮影・日下部様)

ヘリポートではチゴハヤブサがあっという間に通り過ぎ、サンショウクイが林縁に出てきました。

サンショウクイ
サンショウクイ

鼻戸崎では夕方恒例のアマツバメの乱舞が観察できました。

アマツバメ
アマツバメ(撮影・大林様)

校庭にも寄りました。ここも鳥がいませんでしたが、桜の木の下に鳥影がありました。アカハラです。

アカハラ
アカハラ(撮影・日下部様)
校庭での探鳥
校庭での探鳥

すると今度は冬鳥のジョウビタキ♂の登場です。

ジョウビタキ
ジョウビタキ(撮影・日下部様)

まだいるとは驚きです。帰り道では中村集落でムギマキのさえずりが聞こえてきましたが、姿は見えず。コシアカツバメの声がすると思ったら、上空を飛ぶ姿を確認しました。手前の電線にコシアカツバメがいて、ツバメと並んでいました。

コシアカツバメ
コシアカツバメ(撮影・大林様)

2日目。早朝、カラスバト狙いで定点です。いつもは30分も待っていれば現れて、そこそこじっくりと見られるのですが、ついてない時はついてないらしく、現れてくれませんでした。続いて校庭へと向かいました。今日もジョウビタキがいました。オオルリのさえずりが聞こえてきたので、辺りを見渡すと、いました。

オオルリ
オオルリ

緑に青がきれいです。続いて「ツィー」と小声で飛び出してきたのはマミチャジナイです。

マミチャジナイ
マミチャジナイ(撮影・日下部様)

さて、この日は1便欠航です。朝食後、ウミネコのコロニーを観察し、孵ったばかりのヒナを確認。

ウミネコのコロニー
ウミネコのコロニー(撮影・日下部様)

お隣の崖には、常連のハヤブサが登場。そのうがパンパンに膨れています。

ハヤブサ
ハヤブサ(撮影・日下部様)

鳥は相変わらずしないので、観光がてらに柏木山に登り、御積島を眺めました。

白瀬沢ダムでは、昼食をとりながらセンダイムシクイとオオルリなどが少し観察できました。マミジロのさえずりも聞こえました。

センダイムシクイ
センダイムシクイ(撮影・大林様)

四谷ダムも鳥影はなく、林道を進んで八幡崎へ。すると、2の畑でアカモズの亜種カラアカモズが出たとの情報が入り、戻って再び2の畑へ。島中のバードウォッチャーが集まったかのように人だかりが!探すことしばし、いました、いました、カラアカモズ!

やや遠いものの、いい所に止まっては地面に降りて、餌をとることを繰り返しています。ようやく鳥を見た感が出てきました(笑)

亜種カラアカモズ
亜種カラアカモズ(撮影・日下部様)

3日目、最終日です。今日も鳥はいません。昨日同様、ウミネコのコロニーとハヤブサを観察。

ウミネコの親子
ウミネコの親子(撮影・大林様)
ハヤブサ
ハヤブサ(撮影・大林様)

風もなく天気もいいので、一路、荒崎へ向かいました。御積島を眺めつつ、名物のカンムリウミスズメを探します。ベタ凪なので好都合です。すると、200m程度は離れているものの、6羽のカンムリウミスズメを確認!うち3羽は少し手前にいます。これはラッキーです。御積島とカンムリウミスズメを見ながら昼食をとり、今回のツアーを終えました。

カンムリウミスズメ
カンムリウミスズメ(撮影・大林様)

 

天気が良すぎて生憎、鳥はいませんでしたが、これも離島の宿命です。次回はきっといい鳥に出会えることを期待しながら、解散しました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

初夏のみちのく山形 海から山まで -目指せ100種!-

Report by 簗川堅治 / 2022年6月9日~12日

 

山形県を一周し、初夏の鳥たちをできるだけ多く楽しむツアーです。結果としては雨も降らなかったことが幸いし、104種を確認することができました。

 

1日目。出発はガイドの簗川の地元・天童市です。まずは「こんな所で?」という場所でコチドリを観察。ヒバリが鳴き、ノスリが電柱に止まっています。

続いては神社へ。沼のほとりで朝をとるヨシゴイ、飛び交うコムクドリ、そして「キーキーキー」と鳴くチゴハヤブサを確認。次の目的地に移動中にオナガをゲット。

ヨシゴイ
ヨシゴイ
チゴハヤブサ
チゴハヤブサ

今度は違う神社で巣立って大きくなったフクロウを観察。かわいい!また移動して、こちらでも巣立って大きくなったバンの兄弟を観察。

フクロウ
フクロウ

今度は猛禽類を観察しに行く途中で、越夏中のキンクロハジロをゲットし、山間部へ到着です。猛禽類の定点です。しばらくしてノジコを観察、サシバが登場し、オシドリが通過。残念ながら、イヌワシ、クマタカは出ませんでした。

ノジコ
ノジコ

次の場所に移動中にハリオアマツバメとアマツバメなどを追加し、この日、最後の場所でトラフズクを観察しました。

トラフズク
トラフズク

2日目。早朝探鳥でアカショウビン、キバシリ、そしてオオアカゲラを狙います。しかし、それどころか、他の鳥もあまり鳴いておらず閑古鳥状態。結局、キバシリとアカショウビンは声のみ、オオアカゲラはそれらしい声は聞こえましたが確認まで至らず。他、ノジコやコサメビタキ、コガラ、ニュウナイスズメなどを確認して朝食の時間となりました。

山頂
山頂

朝食後は山間部で猛禽類を探すも時間帯が早かったせいもあり収穫はなし。河原ではカワガラスやオシドリを確認しました。

続いては、ちょっと難関のコジュリンとオオジュリン、そしてアリスイに挑戦。見づらかったものの、コジュリン、オオジュリンは確認できました。アリスイは声すらせず。他、コヨシキリやホオアカ、そして居残りのオオハクチョウを観察しました。

コヨシキリ
コヨシキリ

お昼を挟んで、シロチドリ探しです。いるはいるものの、遠すぎて陽炎ゆらゆらの中での観察でした。キアシシギは思わぬ収穫です。

続いて、ミサゴの巣を離れた場所から観察しようとしたところ、真上につがいが登場!ラッキーでした。

ミサゴ
ミサゴ

今度は、これまた難関のチゴモズです。しかし、けっこうあっさりと登場。オオタカも確認できました。おまけはイスカでした。

チゴモズ
チゴモズ

なかなか順調なので、ササゴイに挑戦。しかし、現れてくれませんでした。それでもカッコウやノスリ、そして小鳥を追いかけるオオタカの姿が観察できした。

この日最後はコアジサシを探しました。ところが今年はひと月前に100羽ほどいた群れが全くいなくなり、残念な結果になりました。それでも愛想の良いシロチドリで楽しいひとときを過ごしました。

シロチドリ
シロチドリ

3日目。まずは山形県唯一のカンムリカイツブリの繁殖地へ。無事見られ、マガモも追加。しかし、他はパッとしなかったため、山へ移動し、巣材をくわえたイカルや巣立ったエナガなどを観察しました。

イカル
イカル
カンムリカイツブリ
カンムリカイツブリ

朝食後は移動途中でハヤブサの親子と観察し、その後、コシアカツバメをじっくりと観察し、山間部へ。ここでまたクマタカを待つも現れず。移動中にクロサギを探すも、これまた現れず。

コシアカツバメ
コシアカツバメ

一旦、新潟県に入り、再び山形県内へ入り、ブッポウソウを待ちます。無事、観察できました。クマタカも期待しましたが、今度も現れず。

ブッポウソウ
ブッポウソウ

移動して湿地帯でケリを探しましたが、これも外しました。しかし、チョウゲンボウと山形県ではもっとも見づらい鳥のひとつ、セッカを確認。

この日の最後は、急きょ予定を早め亜高山帯へ。翌日が雨予報だったためです。高山帯では、きれいなウソが間近で見られたり、ホシガラス、メボソムシクイなどを追加確認しました。

4日目。雨予報でしたが、結果としては降らずに済みました。ラッキーです。早朝、ビンズイ、ルリビタキなどで楽しみ、朝食後は㊙の鳥を観察。

ルリビタキ
ルリビタキ

解散の時間も迫ってくる中、市街地の公園でアオバズクやチゴハヤブサを観察して、すべての行程を終え、最後は山形名物「冷たい肉そば」でお腹も満腹にして解散しました。

アオバズク
アオバズク

せわしない日程でしたが、たくさんの鳥を観察することができました。ありがとうございました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

珍鳥が渡る交差点!秋の与那国島5日間【後編】

Report by 大西敏一 / 2021年10月1日~5日

 

ツアー3日目

島の朝はゆっくりです。この時期の日の出は6時半頃。朝食を7時にとって出発です。宿の前が小・中学校なので朝食までの30分を利用して散歩がてら久部良バリまでを往復するプチ朝探へ。途中、学校脇の電線に止まっている3羽のカラムクドリが見られました。

カラムクドリ(撮影:早川弘美さま)

島での探鳥は各所にあるポイントを丹念に回るスタイルです。平地では歩きながら探鳥をしたいところですが、今年は予想を上回る暑さで、島の人が「これまでで一番暑い」というほどです。なので灼然の炎天下を延々と歩くのは諦めて、ここという場所を効果的に歩きました。今日こそは皆さん一番のリクエスト、セジロタヒバリとハイイロオウチュウを狙います。

島ではツメナガセキレイが一番目につきます。次に多いのは留鳥組のシロガシラ。次いでヒヨドリやアカモズとなります。島のヒヨドリはタイワンヒヨドリという亜種、アカモズはシマアカモズという亜種なのがいかにも与那国的です。

シロガシラ
タイワンヒヨドリ
シマアカモズ

比川ではいつもの顔ぶれに、ハマシギとジシギ類が加わっていました。顔つきや羽衣などからチュウジシギと思われましたが念のために尾羽も確認しOK。与那国岳に向かう林道を歩いていると蝶の姿が目に付きます。オオゴマダラ、リュウキュウアサギマダラ、ツマベニチョウ、ウスキシロチョウ、ベニモンアゲハ、ミカドアゲハなどが沢山飛んでいて、一時は蝶の撮影会に。ここではエゾビタキ、コサメビタキ、オオルリなどのヒタキ類やブッポウソウもチラホラと現れました。ブッポウソウは昨日よりも増えていて5羽以上はいましたが、どれも今年生まれの幼鳥でした。

チュウジシギ(撮影:早川弘美さま)
エゾビタキ(撮影:伊原やよいさま)
オオルリ雄若鳥(撮影:早川弘美さま)

今日のお昼はピクニックランチ。といっても売店で買ったパンなどですが、自然の中で食べるのはなぜか違って美味しいのです。遠くの梢に止まるブッポウソウを見ながらお昼のひと時を過ごしました。

与那国島ならではのシュモクザメを模った手作りパン

午後からは目標の2種に絞って探鳥を進めることに。両種のいそうな場所を狙ってこまめに探していると、いました!セジロタヒバリです。地面で餌を採っていると、すぐにキセキレイがやってきて飛ばされてしまいます。炎天下の中、粘り強く待ち続け、ようやくじっくりと観察できました。カメラの方も無事シャッターに収めることが出来て喜んでおられました。

セジロタヒバリ(撮影:早川弘美さま)

次はハイイロオウチュウを求めて探します。島で一番の巨木「ドゥナンタギノアグ」(オオバアコウ)の場所でオオルリ、エゾビタキ、サメビタキ、コムシクイ、南牧場でマミジロタヒバリ、久部良ミトゥではヨシゴイなどを見ながらお目当てのものを探します。と林縁から飛び出す1羽の鳥が。ハイイロオウチュウです。まずは飛ばさないように遠目から観察していると盛んにフライキャッチして虫を食べています。そのうち向こうから飛んできて近くの電線に止まりました。皆さんここぞとばかりのシャッターチャンスです。プロミナー組はドアップで観察。わずかの時間ですが本種を堪能することが出来て皆さん大満足の様子でした。

ハイイロオウチュウ(岡本圭祐さま)
コムシクイ(撮影:早川弘美さま)
島一番の巨木「ドゥナンタギノアグ」(撮影:門永洋子さま)

宿に帰る前に立ち寄った久部良漁港でクロハラアジサシを観察し、3日目の探鳥を終了しました。夕食後に鳥合わせと皆さんからの質問を受ける形でちょっとした識別講座を行い、本日56種の確認となりました。

クロハラアジサシ(撮影:伊原やよいさま)

ツアー4日目

今朝も久部良バリまでの散策で始まり、アカガシラサギやツメナガセキレイなどを観察。今日の朝食は洋食で皆さん嬉しい様子。まずは北牧場を覗きます。牧場へ向かう小道を歩いていると、ちょうど朝イチの飛行機が来る時間です。滑走路の端で待機していると、晴天をバックに頭上をかすめて着陸するシーンが見られとても感激しました。牧場内はツメナガセキレイが多く、ムナグロも沢山います。マミジロタヒバリを見つけ観察していると「ツグミみたいなのがいます」の声。見ると胸がよだれかけ状に赤く、腹の白い鳥が。すぐに飛びましたが上面は綺麗なスレート色でした。ノドアカツグミの雄です。その後、飛去した方向を捜索しましたが出会いは一瞬の出来事でした。

マミジロタヒバリ(撮影:早川弘美さま)

祖納のゴミ捨場跡地をチェックしたあと、東へ車を走らせ鳥を探します。丹念に電線をチェックしていると再びハイイロオウチュウを発見。昨日とは場所も違い、体色にも違いがあるので別個体です。ここでも良い感じの距離で観察ができました。島を半周回る形で鳥を探し、途中の小さな貯水池ではカイツブリ、セイタカシギ、コアオアシシギ、チュウジシギなどを確認。ヒバリシギは冬羽に換羽しているのがいて幼羽との違いをゆっくり観察できました。

コアオアシシギ

昼食と少しの休憩を挟んで探鳥の再開です。比川でアカガシラサギをゆっくり観察したあと、山へ向かいます。遊歩道で鳥を探している時にお客さんの一人がヨナグニサンの繭を発見。当たり前ですがアヤミハビル館で見たものそのものです。よくもまあこんなのを見つけたものだと皆さん感心しきりでした。その後、ラッキーなことにヨナグニカラスバトが飛ぶところが見られました。

ヨナグニサンの繭
アオムネスジタマムシ(撮影:門永洋子さま)
アオミオカタニシ(撮影:門永洋子さま)

山を離れ、平地へと移動し、各所のポイントを回りましたが、昨日のセジロタヒバリの姿は既になく、新しい種にも出会わず顔ぶれは同じでした。夕方の久部良ミトゥは塒入り前のシロガシラがうるさく騒いでいます。セイタカシギは8羽に増えていて、クロハラアジサシの小群が上空を舞っています。近くのさとうきび畑でキガシラセキレイを探していると黒く大きなものが林に飛び込んだとのこと。「オオコウモリかもしれませんよ」と話しているとお客さんが木にぶら下がっているのを見つけられたところで本日の探鳥は終了となりました。夕食後に鳥合わせと今日もプチ識別講座を。実際の音源を聞きながら、見た目での識別が難しい種などの識別を学びました。本日の確認種は60種でした。この3日間、リュウキュウコノハズクの声を聞こうと真っ暗な中を久部良ミトゥ近くまで歩いてみましたが、結局声は聞けませんでした。新しく建った自衛隊の施設が影響しているのかもしれませんね。

宿の夕食

ツアー5日日

いよいよ今日が最終日です。朝の散歩探鳥ではチュウシャクシギ、ケリ(昔は南西諸島では珍しかったが最近は時々記録されます)、ムナグロをゆっくり観察。夕日の見える丘では海上からセジロタヒバリ5羽の群れが鳴きながら飛来し、島内へ飛んでいきました。

今日は昼前のフライトなので探鳥の時間はそれほどありません。皆さんのリクエストから北牧場と森林公園を小1時間ほど探鳥することに。北牧場ではマミジロタヒバリ、ハヤブサなどをじっくり見て、森林公園ではアカヒゲの囀りを聞くことが出来ました。公園近くの林内でオオゴマダラとリュウキュウアサギマダラが鈴なりになっている木があり、皆さん感動しておられました。

ハヤブサ(撮影:早川弘美さま)
オオゴマダラの群れ

終了時に東の外れでベニバトの情報が舞い込みましたが、時間切れのため残念でした。空港で搭乗手続きを済ませたあとで鳥合わせを行い、5日間のバードウォッチングの旅が終了となりました。

今回はずっと晴天続きで鳥影が薄く、毎日30度超えの猛暑の中での探鳥になりました。また、水のある水田が無いなど環境的に厳しいこともありましたが、終わってみれば出現種は91種とまずまずの結果でした。お目当てのハイイロオウチュウとセジロタヒバリをじっくりと観察・撮影を出来たのは何よりで、色々と厳しい条件下でもやはり与那国島は珍鳥の渡る交差点なのだと思わせてくれるツアーでした。ご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました。またどこかでお会いできるのを楽しみにしております。

この記事を書いた人

大西 敏一 おおにし としかず
1961年生まれ。大阪府在住。野鳥歴45年。フリーランスとして鳥類調査をメインに執筆、講演、ツアーガイドなどに携わる。離島の渡りに関心があり、韓国の島嶼にも長年通い続けている。シギ・チドリ類やムシクイ・ヨシキリ類などが好み。主な著書に「日本の野鳥590/650」(平凡社)、「世界のカワセミハンドブック」(文一総合出版)などがあり、協力図書も多い。