渡り鳥の交差点・春の与那国島【前編】

Report by 簗川堅治 / 2023年3月28日~31日

春の琉球らしく、ぐずついた天気の中、条件付きで飛んだ飛行機は無事到着しました。まずはムクドリ類を求めて比川へ。しかし、見当たらなかったので、とりあえず昼食をとりました。その後、雨が上がっている隙に集落内を歩き、ムクドリ類を探していたら、コホオアカやクロウタドリが現れました!比較的じっくりと観察。

 

クロウタドリ

今度は久部良へ移動し、ムクドリ類を発見!100羽ほどのギンムクドリにカラムクドリ数羽、ホシムクドリ2羽が混じっていました。中学校のグランドではマミジロタヒバリ、亜種ホオジロハクセキレイの姿がありました。

 

ムクドリ類の群れ

次は祖納へ。小学校のグランドでヤツガシラを発見!樹上休んで、その後、地面で採餌する姿を観察撮影しました。大盛り上がりです!近すぎて車外には出られなかったので、座席を替わりながら撮影大会となりました。

 

ヤツガシラ

田んぼではハクセキレイの亜種ホオジロハクセキレイ、亜種タイワンハクセキレイ、そして亜種シベリアハクセキレイがいました。ツバメチドリもいました。

 

 

亜種シベリアハクセキレイ
ツバメチドリ

この日の最後は、オオノスリとアカツクシガモを待ちましたが、現れず。明日に持ち越しです。

2日目。夜明け前に出発し、林道へ。狙いのオオクイナ、リュウキュウコノハズクの声はしなかったものの、車中からヤマシギ1羽とミゾゴイ2羽をじっくりと観察できました。その後、アカツクシガモ3羽とオオノスリ1羽も何とか見れました。

 

ヤマシギ
ミゾゴイ

朝食後は東崎に行き、多数のツメナガセキレイとムネアカタヒバリ1羽を観察しました。

 

亜種ツメナガセキレイの群れ

その後、祖納の集落を歩くも、インドハッカを見た程度。昨日、ヤツガシラを見た場所にも行きましたが、お留守。なかなかぱっとしません。

昼食を挟んで、比川へ行き、集落を歩きました。耕作放棄地にコホオアカが5羽以上いて、チュウジシギらしいジシギも観察しました。狙いのムクドリ類は、今日も現れず。ただ、最後にヤツガシラが飛び立ち、後ろ姿のみ見れました。

今度は祖納の田んぼで主にハクセキレイの各亜種を観察し、この日も亜種シベリアハクセキレイが1羽、亜種タイワンハクセキレイが2羽、亜種ホオジロハクセキレイが複数いました。そして、オジロトウネンの姿も。

 

オジロトウネン

最後は違う田んぼで土砂降りの雨の中、アメリカウズラシギの夏羽を見て、この日を終えました。

 

アメリカウズラシギ夏羽

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

奄美大島・固有種を狙う撮影三昧の4日間 【2本目】

Report by 戸塚学 / 2023年4月9日~12日

世界遺産になってからの初めての奄美大島ツアー2本目。
1本目と打って変わり天気は基本晴れ。奄美大島とは思えないほど乾燥した空気でさわやかな気候に戸惑いましたが、最終日は雨上がりの蒸し暑い奄美大島本来の空気を感じられたと思います。1本目に続き2本目も予定をしていた種類を2日目でほぼクリア!残念だったのはナイトツアーでアマミノクロウサギ以外は出現率が低く、リュウキュウコノハズクは見られただけ、アマミヤマシギに至っては出現すらないというのは残念な状況でしたが、それも自然相手のことなので仕方がありませんが、他の固有種の鳥たちはがっつりと撮影ができたようでみなさま笑顔でお帰りいただきました。

 

絶景

1日目

空港へ到着するとすでにほとんどのみなさんが到着されていました。全員そろったのでジャンボタクシーに乗り込み現場へ向かいます。まずは森に入る前に注意事項を伝えて、各ポイントを廻りました。とりあえずはアカヒゲから狙いましょうと話して歩きはじめると私の足元から何か「コツコツ」という音が???下の草むらに目を移すと?オオアカゲラが!慌てて、そして静かに離れ参加者のみなさんに手招きして撮影を楽しんでもらいます。かなり愛想のいいメスでしっかりと撮影をすることができました。アカヒゲポイントに行く前に思わぬうれしいハプニングでした。

 

さてアカヒゲポイントへ到着するもさえずりは聞こえて来ません。静かにさえずりが始まるまで待つこと10分、さえずりが始まりました。声のする方へ移動しながらじっと目を凝らしながら待ちます。手前の低木の葉の奥に小さな黒い塊を見つけたので双眼鏡で覗くとアカヒゲのオスです。みなさんを集めて場所の説明をするのですが、だいたい1ヶ所に1人しか見えるすき間が無いので苦労します。あちこち探して、撮影できるすき間を探してなんとか全員確認はできたようでほっとします。あとはさえずった後に移動するので同じように探して撮影をしてもらいました。

 

アカヒゲ

 

次は問題のオオトラツグミです。ポイントに到着した時に「ぼ~っと」周囲を見てください。じっと1点を凝視しても見つかりません。動いたらオオトラツグミですから撮影してくださいと伝えました。何度も出てくれるのですがこれがやはり手強い。それでもとりあえず全員撮れたとのことでほっとします。ルリカケスは目視となんとなく枝被りしつつも撮影はできたようなので明日以降に持ち越しという事で終了しました。

 

オオトラツグミ

 

2日目

5時にホテルを出発して薄暗い森を進み絶景ポイントで朝陽を待ちます。その後はここでお弁当を食べて出発です。まずは人でごった返す前にオオトラツグミを狙います。近くにルリカケスがやって来るのでなんだろうと見ていると木の洞に入った?その後落ち葉をくわえて入った?2羽で入った?どうやら巣を造っているようです。あまりこちらを気にはしていないようなのでこちらも刺激をしないようにオオトラツグミを待ちます。やはり5回ほど出るも近くに来ない。あと1回来たらポイントを移動しましょうと言った後、来た!どんどん近づきこちらの前に!いやぁ~ついてるわ。

 

大満足でアカヒゲポイントへ移動します。こちらも昨日同様アカヒゲが良く出てくれます。昨日の「ちょっとだけよ」ストレスも完全に吹き飛んだようです。そして水場の近くでルリカケスを待ちますがなかなか下に降りてくれません。そのうちチャンスがあるから後回しにしましょうと歩き出すとまたしても私の足元で「コツコツ」黒い頭が上下しています。オーストンオオアカゲラです。今日は昨日よりも長時間移動をしながらしっかりと近くで撮影を楽しめました!残念なのはオスも近くに飛んできたのに撮影ができなかったこと。二兎ならぬ二鳥を追うもの一鳥も得ずを実感してしまった。この日は夜にナイトツアーがあるので12時に終了して夜まで休憩にします。

 

オーストンオオアカゲラ・♀

 

21時30分ホテルのフロントに集合してナイトツアーのジープを待ちます。少し早い時間に到着したので乗り込み出発です。コースの入り口でナイトツアーの注意事項や説明を聞いてジープが走り出すとすぐにヒメハブを発見!

 

ヒメハブ

 

その後は道路が乾燥しているせいかカエルが見つかりません。イシカワガエルに出会えるか少し心配になります。そんな心配をよそに次々とアマミノクロウサギが出てくれますが、あまりじっとしてくれず撮影に苦労します。

 

アマミノクロウサギ・仔ウサギ

 

そしてリュウキュウコノハズクは鳴いてはいますが、なかなか発見できません。ようやく見つけたのですが、小さいし木の枝のこぶにしか見えないので、説明中に飛ばれてしまい・・・それっきり見つけることはできませんでした。期待しているアマミヤマシギも出ません。一番期待のダートコースもクロウサギは出ますがヤマシギはさっぱり・・・痛い。乾燥&気温が低いことが関係しているのか?それともすれ違った一般観光客の2台の車が来たせいかわからなかった。今回のナイトツアーは生き物の少ない結果となってしまった。

 

3日目

昨夜が遅かったのでこの日はゆっくりと9時に出発します。アマミヤマシギ・リュウキュウコノハズクは夜しか期待できないので諦めるとしても他はすでにいい感じに撮れています。ので、今日は自分の「狙いたいものをがっつり狙う」日にします。私は各ポイントを廻りアドバイスしたり、探す手伝いをしつつポイントを移動する作戦です。これのいいところは少人数とはいえ6人でぞろぞろ歩いたり、待ったりするよりもより少人数の方が撮影チャンスが高くなるのです。お昼を挟んで約9時間たっぷり時間を取ったことでしっかりと撮影できたとみなさん満足顔でした!

 

4日目

夜にしっかり降った雨がまだ少し残っているようでしたが、現場手前では止んでしまいました。しかしちょっと気になるのは標高が高いので「霧」が気になります。予想通り標高が上がると車のヘッドライトに霧が反射してほとんど前が見えません。ノロノロ運転で進んでゆくとドライバーさんが「ハブよ!」と車を停めて道路わきを逃げて行くハブを見ることができましたが・・・。ちょっぴり心配になります。ようやく到着です。まずは荷物を降ろして雨がしのげる庇の下で待機しますがキリが濃すぎるし夜明け前で暗い。霧のせいで視界は悪いし、何よりもハブを見ちまったのでうかつに森を歩けません。6時を過ぎるとだいぶ明るくなったのでお弁当を食べます。そして6時30分移動開始です。絶景ポイントは景色も足場周辺も視界があるのでここで1時間待機。ようやく視界が開けてきたので昨日同様各自好きなポイントで撮影をしてもらいます。

 

9時を過ぎると一気に霧がはれてきました。絶景ポイントではルリカケスが群れで飛びまわったり、リュウキュウサンショウクイ、カラスバトも確認できました。

 

ルリカケス
ルリカケス
ルリカケス
ルリカケス

リュウキュウサンショウクイ

カラスバト

 

残念ながらサシバの渡りはピークを過ぎてしまったようで1羽だけ確認ができました。他にもリュウキュウメジロ・アマミシジュウカラ・アマミヤマガラも出てくれ撮影もできました。森の中では二ホンミツバチの分蜂を一部の参加者と見ることもできました。そしてオオアカゲラはなぜか私が遭遇するのはメスばかり!

 

リュウキュウメジロ

 

時間になったので空港に向かいます。しっかり撮れてハイテンションで明るい車内となるはずが、みなさん疲れて眠りこけたまま空港到着してしまいました(笑)そしてそれぞれ帰路に付かれました。ご参加していただいたみなさまお疲れまでした!

 


撮影できた鳥・生き物
アマミコゲラ・オーストンオオアカゲラ・リュウキュウサンショウクイ・アマミヒヨドリ・アカヒゲ・シロハラ・アトリ・オオトラツグミ・アマミヤマガラ・アマミシジュウカラ・リュウキュウメジロ・ズアカアオバト・ルリカケス・アマミノクロウサギ・ヒメハブ・シリケンイモリ・二ホンミツバチ
見られた鳥・生き物
リュウキュウツミ・リュウキュウキジバト・リュウキュウツバメ・ツバメ・ダイサギ・リュウキュウハシブトガラス・アカハラ・アマミトゲネズミ・クマネズミ(外)

 

声が聞かれた
アオバズク・カラスバト・リュウキュウコノハズク

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

奄美大島・固有種を狙う撮影三昧の4日間 【1本目】

Report by 戸塚学 / 2023年4月5日~8日

世界遺産になってからの初めての奄美大島ツアー。2年連続で新型コロナの影響もあり中止になっていたため、ある意味手探りな部分もありました。予定していた場所が現地ガイドと一緒でないと立ち入り禁止等の新ルールに戸惑いましたが、メインにしていた場所にもオオトラツグミが定着してくれたことで2日目にしてすべての撮影予定種を撮影でき、あいにくな天気であったもののナイトツアーもジープを利用することでスムーズな撮影ができました。またマングース・ノネコの駆除が上手く行っているようで過去最高の生き物との遭遇と撮影を楽しめました。

ルリカケス

1日目

天気予報では曇り時々雨がなんとか晴れています。
みなさん飛行機の到着時間の関係で予定時間よりも早く奄美空港に到着していたようで集合時間前に集まられていたので、ジャンボタクシーの到着とともにポイントへ移動します。ここでは今回一番難しく苦労するであろうオオトラツグミがあっけらかんと到着早々に撮影することができました。引き続きアカヒゲポイントへ移動するとこれまたすぐ近く!最短では1.5mのところまで来ることも!!!近すぎても撮影には向かないのでアカヒゲが移動して枝や木の倒木に上がったところをがっつり撮影することができました。早々に手強い2種を撮影できたことで余裕ができるのですが、一番たくさんいて撮りやすいはずのルリカケスがなかなか撮影させてくれません。以前水浴びをする鉄板のポイントも今年は下見時を含めちっとも水浴びをしてくれずちょっと困りますが、まだ時間はたっぷりあるので明日以降に期待だ!

オオトラツグミ

2日目

天気予報よりも少しマシな小雨&曇り。5時出発だったので到着してもまだ暗く明るくなるまで待機をしてある程度視界がとれるようになってからお弁当を食べるが・・・そのボリュームにびっくり!おむすび2つくらいかなと思ったが夕食用と勘違いするボリューム!ただしおいしいから許すしかない(笑)
薄暗い中、森の中を歩いてアマミヤマシギを探します。しかし・・・いません。そうなればオオトラツグミを狙うしかありません。約3時間待って5回ほど出現してくれたので移動します。そしてアカヒゲポイントへ行くとこれまた大サービスで撮影をさせてくれました。

アカヒゲ

さて残るはルリカケス。下見の時によく出ていた場所で待つと終了時間前に出てくれてこれまた大サービスで撮影させてくれます。12時で切り上げなので「名残惜しいですが」と参加者のみなさんを駐車場に促し歩き出すと、ルリカケスが飛び去った森に何かが?飛んで来て木の幹にとまった?オーストンオオアカゲラだ!静かにそれでいて小走りに近づき撮影をします。メスでしたがしっかりと撮影できちょうど飛び去ると12時ジャスト!タクシーに乗り込むと雨が降り出す。みなさんもってるわ!夜はナイトツアーがあるのでお弁当を買ってホテルで時間まで休憩です。

ルリカケス
オーストンオオアカゲラ

21時45分ホテルのロビーにナイトツアーのスタッフがお迎えに来たのでジープに乗って出発です。ポイントは時間予約制なのでゲートインまで準備をします。いざ入るとすぐに水路にヒメハブ!すごい擬態で絶対自分では見つけられない。他にもアマミハナサキガエルが道路上を飛び跳ねます。5分も進むといきなりアマミノクロウサギが出現!その後も結構な出現率ですが子供が多い。初めは数を数えていたがあまりにも出るのでもうやめた!フロントガラスを倒し、幌を外しているのでどのポジションからも撮影できるのがこのツアーの一番のいいところだろう。満月は雲に隠れているが時々明るくなる。そのためか森の奥からオオトラツグミの美声が響き渡ります。寝ている姿を探すも姿は見当たりませんでした。私たちが一番期待するアマミヤマシギは気づくと飛ばれることが多くちょっぴりストレスがたまりだしていたが、出現率が上がれば確もが上がるので撮影がスムーズにできるようになりみなさん余裕が出てきます。

アマミノクロウサギ
アマミヤマシギ

残るはリュウキュウコノハズクですが、とにかく小さく木のちょっとしたこぶに見えるので、説明してもなかなか見つけられず「あそこ、ほらあそこ」と説明をしているとも1羽が飛んで来て求愛給餌した!給餌した個体はすぐに飛び去り、エサをもらった個体も食べ終わると飛び去ったため私も撮影ができなかったがこんなシーンを見られただけでもラッキーだ。その後電線にとまった姿は近くで撮影できた。電線を伝わり歩くアマミケナガネズミも撮影できたし、道路わきを飛び跳ねるアマミトゲネズミも見られたし想像以上の出来だったと思います。ホテルに戻ると1時を過ぎていましたがこれで文句を言う参加者はいないだろう(笑)

リュウキュウコノハズク
アマミケナガネズミ

3日目

昨夜が遅かったので今日はのんびりスタート。みなさんに「朝食バイキング期待してね」と伝えてあったがアイスクリームの位置を教えることを忘れたのが失点だ。9時スタートで出発するも外は雨と霧。風も強く外に出る気になれない。前2日でほぼ予定している鳥の撮影もできているし昨夜の疲れもあるので管理棟の休憩室で13時30分までのんびりしていただき、雨・霧が収まった来たので森に入り撮影をします。17時まででしたが少し寒いし暗いのでジャンボタクシーの到着を待って早々に帰路につきました。

朝の風景

4日目

天気は晴れ!朝食のお弁当は「減らして」とお願いしてあったのでちょうどいいかちょっと多めな感じ。今日は予定していた場所ではないので、ジャンボタクシーは送迎のみ。なので荷物をまとめ置きしておき私は荷物番をしながら待機。みなさんすでに勝手知ったる森の中なので自由に散策と撮影を楽しんでもらいます。荷物を置いた場所の近くがとても見晴らしがいい場所なのでここでルリカケスとサシバが飛翔する姿を狙ってもらいます。
終了時間が近づいてきたのでジャンボタクシーにこちらへ迎えに来てもらおうと駐車場に行くがなかなか来ない。私も着ていた雨具の上下をザックにしまおうとみなさんのもとに戻ると、オオアカゲラのメスが近くで採餌していた!最後の最後まで引き当てるとはさすがです。12時になったので駐車場に行くとジャンボタクシーが待っていました。ドライバーさんに車を回していただきピックアップ。空港へ向かいます。ここでお別れですが、帰宅するのは1名だけであとは全員後泊するとのことで、やはりここまで来たのだからなぁと納得して終了となりました。

サシバ
リュウキュウサンショウクイ

 


撮影できた鳥・生き物
サシバ・アマミヤマシギ・リュウキュウコノハズク・アマミコゲラ・オーストンオオアカゲラ・リュウキュウサンショウクイ・アマミヒヨドリ・アカヒゲ・シロハラ・オオトラツグミ・アマミヤマガラ・アマミシジュウカラ・リュウキュウメジロ・ルリカケス・アマミノクロウサギ・アマミケナガネズミ・ヒメハブ・アマミハナサキガエル

 

見られた鳥・生き物
リュウキュウツミ・リュウキュウキジバト・ズアカアオバト・リュウキュウツバメ・ツバメ・ダイサギ・リュウキュウハシブトガラス・アマミトゲネズミ・クマネズミ(外)・イシカワガエル・シリケンイモリ

 

声が聞かれた
アオバズク・カラスバト

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

春の奄美大島でバードウォッチング三昧

Report by 吉成才丈 / 2022年3月17日~20日

<1日目>

予定通りに空港で集合。ローカルコンビニで軽い昼食をとった後、空港近くの港や海辺を観察しました。港にはめぼしい鳥の姿はありませんでしたが、潮が引いた海岸ではサルハマシギやトウネン、ムナグロ、オオメダイチドリなどのシギ・チドリが観察されました。
その後は建物で繁殖中のルリカケスをチェックし、早めにホテルにチェックイン。
そう、この夜はナイトツアーが控えているので、夜の準備をする必要があったのです。

早めの夕食をとった後に再出発し、夜の林道を巡るツアーに参加しました。直前まで雨が降っていて心配しましたが、林道のナイトツアーは雨上がりが一番よいコンディションなんだそうです。出発早々、日本で一番美しいというアマミイシカワガエルやアマミハナサキガエルなどが出現し、幸先の良いスタートとなりました。

アマミハナサキガエル(撮影:藤塚裕美様)

そろそろ鳥も..と期待していると、林道脇にアマミヤマシギも登場してくれました。2羽で並ぶ姿も見られましたが、オス・メスの識別は難しそうでしたね。
そしてナイトツアーの主役といえば、やはりアマミノクロウサギですね。この日は成獣から幼獣まで、いろいろな個体に出会うことができました。また、道路沿いにある巣穴も教えてもらい、アマミノクロウサギの生態を垣間見ることができました。

アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)
アマミノクロウサギ(撮影:藤塚裕美様)

 

主役も登場して満足していると、多くの人にとっては嬉しくない、あの危険ないきものも登場しました。「水たまりは危ない..」と脅かされましたが、どうやら脅しではなく、本当に危ないと身をもって感じることができましたね。(ハブやヒメハブの画像は出さないでおきます)
めったにできない体験に興奮しながらホテルに戻りました。

 

<2日目>

この日は暗いうちに出発し、地元のガイドさんに案内されて金作原に向かいました。金作原は奄美大島の中でも亜熱帯植物の原生林が残る自然ゆたかなエリアで、まさに奄美大島を象徴するスポットなのです。あいにくの雨模様で鳥の姿は少なかったのですが、アカヒゲやオオトラツグミの鳴声も聞かれ、奄美大島の自然を肌で感じることができました。

午後は名瀬から南の方面に向かい、森や草地、水辺の鳥をチェックしながら移動。オーストンオオアカゲラのドラミングのほか、カラスバトやズアカアオバトの鳴声、ササゴイ、クロサギ、ミサゴなどの姿を確認しました。昨夜は遅く、今朝も早かったので、この日も早めにホテルに戻ってお休みいただきました。

<3日目>

昨日も暗いうちに出発したのですが、この日はもっと早い時間に出発して、未明から明け方の観察を行いました。夜の鳥のメインターゲットは、初日のナイトツアーでは後ろ姿しか見られなかったリュウキュウコノハズクです。林道に入るとあちこちから鳴き声が聞こえ、姿もバッチリ確認することができました。全長20cmくらいしかない小さなフクロウは、本当にかわいいですよね。
リュウキュウコノハズクは耳で探し、目ではアマミヤマシギを探しながら、ゆっくりゆっくりと車を走らせてもらうと、道路脇にアマミヤマシギも発見。

リュウキュウコノハズク(撮影:藤塚裕美様 )
アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)

そして夜明け頃にはオオトラツグミの声も聞くことができ、未明時の探鳥は充実していました。
ホテルでの朝食後には、また別のスポットを訪ねてみました。小学校のグランド(というより草も生えている庭)では、ムクドリやツグミに混じってギンムクドリが採餌してました。
グランド際のアマミシジュウカラを見ていると、校舎のすぐ近くから、牛のようなカラスバトの声が..。まさかと思って探してみると、カラスバトが飛んで木の中に入りました。角度を変えて木の中を探すと、かろうじて頭だけ見ることができました。
それにしても、海沿いの学校なのに、ギンムクドリやカラスバトがいる学校なんて、すばらしいですよね。ちなみに登校日ではなかったので、学校にはだれもいませんでした。

ギンムクドリ(撮影:藤塚裕美様)
カラスバト

そして、奄美の知人に紹介してもらった場所に行ってみると、聞いていたとおりにルリカケスが近くで出迎えてくれました。ここは斜面上部に建物があるため、目線や眼下にルリカケスを見ることができるんですね。

ルリカケス(撮影:藤塚裕美様)

また道路際の斜面では、今回は姿はあきらめかけていたアカヒゲのオスが出現。ルリカケスに続いて大興奮でした。
午後は耕作地に立ち寄ると、予想していなかった暗色のサシバがいきなり出迎えてくれました。すぐに飛び立つと一気に移動し、その後は見つからなかったため、そのまま渡って行ったのかもしれません。とてもラッキーでした!

アカヒゲ(撮影:藤塚裕美様)
サシバ(暗色型)

<4日目>

最終日の朝は、ホテルの敷地でのんびり観察しました。近くで繁殖するルリカケスは定期的に現れ、駐車場のごみ箱などにもとまったりします。見ることすら大変だった過去があるとは思えない光景でした。

チェックアウト後には近くにクロサギでもいないか..と、海辺を流してもらいました。すると、岩にとまっているウミウを発見。しかしよく見ると、同じ岩にクロサギが座っていました。そう、陸から離れた海面に突き出した岩で抱卵していたのです。陸地からは適度な距離があったため、ちょっと観察させてもらいました。

 

クロサギ黒色型(撮影:藤塚裕美様)

また、もう少し進んだ海岸では、クロサギの白いタイプも発見。白いクロサギなんて紛らわしいですが、奄美大島には両方のタイプがいます。目の前を何度か飛んでくれたため、皆さん写真もバッチリ撮れたようです。

クロサギ白色型(撮影:藤塚裕美様)

そして空港近くの耕作地でサシバやシロハラクイナなどを観察し、ランチタイムには奄美パークで自由行動としました。銘々が田中一村の美術館を見たり敷地内で探鳥したりして楽しみ、奄美空港で解散しました。

今年はどこも冬鳥が少なく、奄美大島も例外ではありませんでしたが、いろいろな鳥たちに出会うことができ、ぐ~っと濃縮された4日間でした。

(観察種数60種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

冬の九州縦断 越冬珍鳥を求めて【後編】

Report by 簗川堅治 / 2022年2月13日~17日

3日目。朝食前にツルのねぐら立ち観察です。曇り空の中、次々とツルたちが餌場に飛び立っていきます。給餌が始まると、今度は餌場の方からどんどんどんどん戻ってきて、ものすごい乱舞です。声もうるさいほど。

今度はミヤマガラスの大群がやってきて、コクマルガラスが7羽は混じっていました。ホシムクドリの小群も観察できました。

朝食後は、ホシムクドリやコイカルを探しましたが、出会えず。次は今季、全国的に当たっている珍鳥シベリアジュリンを探しにいきました。道中、ニュウナイスズメの群れに遭遇し、しばし観察。

ニュウナイスズメ

シベリアジュリンを探す前にヘラサギとクロツラヘラサギの群れがいたので観察。シベリアジュリンはなかなか来ず、オオジュリンばかり。ようやく比較的近くにシベリアジュリンが出てきました!しかし、ほどなくして飛んでしまい、その後は結局で会えませんでした。

 

この日の最後はとある公園でサンカノゴイです。対岸のヨシ原に出るとのことで、ただただひたすらに待つのみ。目の前のバン、オオバン、ヨシガモなどで楽しみながら、待ちます、待ちます、待ちます……。しかし出てきたのはクイナくらいで、ここも結局は出会えずに終わりました。

サンカノゴイのポイント

4日目。東よか干潟からスタートです。今日は曇りなので、南向きで観察する東よか干潟には好都合です……と思ったら、なんと雪が舞い始めました。しかも強風!まさかの雪の中での東よか干潟です。

雪の中での東よか干潟

ある意味、貴重な体験ですが、参りました。まずはソリハシセイタカシギ15羽の群れを観察。日本でこんな群れを見るのはとても珍しいでしょう。いつもの顔ぶれ、たくさんのダイシャクシギ、ズグロカモメ、ツクシガモもいます。他に、ダイゼン、アオシシギ、コアオシシギ、ツルシギなどを見て、寒いので早めに引き上げました。

ソリハシセイタカシギ

次はアカツクシガモのいる池に行きました。アカツクシガモを探していたら、マガンがいました。望遠鏡で見ても強風でブレブレです。ほどなくアカツクシガモを発見しましたが、全身がよく見えなかったので移動して観察。遠いし、やはり強風でなかなか大変ながらも、なんとか全身は見れました。ホシムクドリもいるはずなのですが、強風で出てきてくれませんでした。

アカツクシガモ

 

昼食をとり、トモエガモ狙いで行った池は、ハシビロガモがたくさんいて、ミコアイサもいました。しかし、トモエガモはいませんでした。

 

最後は今津です。しかし、ここも強風で大した成果を上げられないまま、この日は宿入りしました。

5日目。今日も強風、しかも昨日よりも寒いです。福岡の最低気温は今シーズン初のマイナス。

まずはメジロガモを見に行きました。あっさりと見れましたが、嘴を背中に入れて、なかなか顔が見れません。付近にいるゴイサギやカワセミを見ている最中に、ようやく顔を出し、少し羽繕いをしました。

メジロガモ(撮影:上山功夫様)

次は超ド珍鳥狙いです。ラッキーなことに誰もいなかったので、我々だけでその鳥が出てくるのを待つことにしました。寒い上に風も強く、待つにはかなりの忍耐が必要でした。約一時間後、鳴き声とともにその姿がちらっと見えました。時間切れとなり、結局、その後は出ず、チラ見で終わってしまいました。残念!

珍鳥狙いに特化した5日間。特に4、5日目は、九州にしては異例の寒さで貴重な体験をしました。参加者のみなさん、お疲れ様でした。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

冬の九州縦断 越冬珍鳥を求めて【前編】

Report by 簗川堅治 / 2022年2月13日~17日

冬の九州と言えば、憧れの珍鳥オンパレードですが、今冬は珍鳥どころか、普通種ですら少ない異常事態です。

 

1日目。集合前までは雨だったものの、空港を出発する頃には上がり、いいスタートを切りました……と言いたいところでしたが、最初に訪れた一ツ瀬川河口では名物のクロツラヘラサギの姿はなく出鼻をくじかれました。マガモ、ヒドリガモ、コガモ、そしてミサゴなどを見て早々に引き上げ、次の場所に向かいました。

オシドリ

トイレ休憩をした道の駅では、越冬ツバメがすいすいと飛んでいました。さすが宮崎県です。

珍鳥コウライアイサのポイントに到着です。出迎えたのは200羽ほどのオシドリの群れ。かわいらしい声で「クエッ」と鳴いています。ここでもミサゴが飛んでいました。ヤマセミは声のみ。マガモやヒドリガモ、キンクロハジロはいますが、肝心のコウライアイサが見つかりません。場所を変えながら探しましたが、とうとう見つけることはできませんでした。残念!

クロツラヘラサギ

2日目。昨日の挽回をすべく、まずは海沿いの調整池へ。早速、ツクシガモとクロツラヘラサギがたくさんいました。つがいなのか、お互いに羽繕いをするクロツラヘラサギもいました。そして、ほどなくしてソリハシセイタカシギも見つかりました。今冬、全国的に当たっているソリハシセイタカシギ。ここにもいたんですね。ヨシ原ではツリスガラとオオジュリンの声もしています。ハヤブサが上空を通過したと思ったら、対岸にはオオタカの姿が。次々と出てくる鳥たちで忙しい時を過ごしました。

ソリハシセイタカシギ(撮影:上山功夫様)

続いては、外海に行かないと見られないカツオドリを陸地から、しかも至近距離で見られるポイントへ。カツオドリは我々の目の前で何度もダイビングしては、魚を捕っていました。顔が水色の♂もいます。

カツオドリ(撮影:上山功夫様)

この日最後は出水市のツルです。まずはソデグロヅルのポイントへ。あっさり見れました。隣の田んぼではカナダヅル、そしてクロヅルもいました。一ヶ所でナベ、マナ、カナダ、クロ、そしてソデグロを見ることができました。

ソデグロヅル(撮影:上山功夫様)
クロヅル(撮影:上山功夫様)

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

有明海から日本最大のツルの渡来地・出水へ

Report by 吉成才丈 / 2022年1月16日~20日

1日目:福岡空港~佐賀~東よか干潟

集合地の福岡空港の外は雨…。
でも皆さんが集合して出発するころには晴れ間も見えはじめ、幸先良いスタートとなりました。
まずは佐賀市内のため池から探鳥をスタートすると、トモエガモやカワセミ、ジョウビタキなどが出現。その後は東与賀干潟に向かいましたが、干潟の直前でカササギに遭遇。佐賀では目撃する機会が減っているカササギだけに、じっくり撮影もして頂きました。

カササギ
カササギ

そして東与賀干潟では、潮が引いている時の干潟を見て頂きました。干潟というと、潮が引いている時に鳥を見る印象があるかもしれませんが、水際の汀線がどこにあるか分からいほど広大な干潟が広がっており、シギ・チドリ類やヘラサギ類ははるか彼方…。実はこの周辺は満潮時と干潮時の干満差がとても大きく、最大で6mにもなる日があるのです。この日は下見を兼ねて干潮時の様子をみて頂き、明日の満潮時の状況を想像して頂きました。

東与賀干潟
東与賀干潟

2日目:佐賀~東よか干潟~諫早干拓地~諫早

さあ、今日は東与賀干潟観察の本番です。満潮間近の干潟に着くと、昨日とは打って変わって鳥が近くにいます。この冬は12羽も飛来しているソリハシセイタカシギ、2000羽を超えるツクシガモなどをご覧頂き、ヘラシギやクロツラヘラサギ、ズグロカモメ、ダイシャクシギ、ツルシギなどを1種ずつ確認していきました。

ソリハシセイタカシギ(森久美子様撮影)
ソリハシセイタカシギ(森久美子様撮影)
ヘラサギ(森久美子様撮影)
ヘラサギ(森久美子様撮影)
ツルシギ(森久美子様撮影)
ツルシギ(森久美子様撮影)

すると、いきなりシギ・チドリの大きな群れが、ひとつの生き物のようにうねりながら飛翔しはじめました。その群れはいくつもあり、個体が反転するたびに暗色(背面)と白(腹面)の塊に色が切り替わる様子が観察できました。これだけの数のシギ・チドリが見られる干潟は少なく、日本一とも呼ばれる東与賀干潟の野鳥を堪能できました。

シギ・チドリの群れの飛翔
シギ・チドリの群れの飛翔

この日の午後には諫早の干拓地に移動し、まずはリクエストの多かったタゲリをじっくり撮影して頂きました。耕作地ではホオアカなどもご覧頂き、ヨシ原ではハイイロチュウヒやチュウヒ、コチョウゲンボウなどを狙いました。ハイイロチュウヒのオスは個体数も少なくワンチャンスでしたが、メスタイプは個体数も多く、皆さんもかなり撮影できたと思います。

ハイイロチュウヒのオス(森久美子様撮影)
ハイイロチュウヒのオス(森久美子様撮影)
ハイイロチュウヒのメスタイプ(森久美子様撮影)
ハイイロチュウヒのメスタイプ(森久美子様撮影)
チュウヒ(森久美子様撮影)
チュウヒ(森久美子様撮影)

3日目:諫早~諫早干拓地~熊本~出水

この日の朝には再び干拓地を訪れ、島原発昼頃のフェリーで熊本に渡りました。この航路はたった1時間なのですが、鳥の観察もおもしろいのです。フェリーにはユリカモメやウミネコがついてきますので、雲仙と一緒にスマホでもパチリ!

ユリカモメと雲仙岳
ユリカモメと雲仙岳

海上ではカツオドリも飛翔していますが、岸近くの堤防にはたくさんのカツオドリが休んでいました。その数なんと、200羽以上!

カツオドリ
カツオドリ

そして夕方には、いよいよツルの待つ出水に到着です。今期のツルは5種の飛来が確認されていますが、個体数の少ないツルは1種でも今日中に見ておきたいところです。するとまず、道路のすぐ近くにカナダヅルを発見。皆さん初めての出会いなので真剣に撮影していましたが、ふと目線を遠くにやるとクロヅルも発見。ちょっと写真には遠すぎましたが、車の進行方向に視線を戻すと、9年ぶりに飛来したというソデグロヅルまで見つかってしまいました。カナダヅルやクロヅルは一桁、ソデグロヅルに至ってはたったの1羽しか飛来していないため、ほっと一安心です。ちなみに、個体数のもっとも多いナベヅルは10,000羽以上、マナヅルは1,000羽以上が飛来しているようです。

カナダヅル(森久美子様撮影)
カナダヅル(森久美子様撮影)
ソデグロヅル(森久美子様撮影)
ソデグロヅル(森久美子様撮影)

4日目:出水(出水干拓地)

この日の朝は快晴。運よく月も出ており、まずは月とツルを撮影できました。

月とツル
月とツル

一方、快晴なので朝焼けは短かったですが、朝焼けをバックにツルも少し飛んでくれました。

朝日とツル
朝日とツル

午前中はツルの撮影や周辺の湿地を観察し、午後は少し山の方に遠征してみました。山ではオシドリやシロハラ、カケスなどが観察できました。
夕方には再び出水の干拓地に戻り、ムクドリの仲間やニュウナイスズメなどを求めて周辺を散策しました。ニュウナイスズメは日中は姿が見えないのに、夕方には300羽ほどが集団で観察されました。

カラムクドリ
カラムクドリ
ニュウナイスズメ
ニュウナイスズメ
コクマルガラス
コクマルガラス

5日目:出水~熊本空港

朝は晴れましたが雲も多く、朝焼けの状況は毎日異なりますね。この日は朝の飛翔を見た後にホテルに戻り、朝食後にチェックアウト。わずかな残り時間をツルを見て過ごし、帰路につきました。

撮影をされた方はツルをはじめ、たくさんの種が撮れたと思います。冬の九州は、東与賀でも出水でも10,000羽を超える野鳥が観察できるので、初心者にも最適な探鳥地だと思います。今回は天候にも恵まれ、5日間で102種を記録することができました。冬の九州は楽しいですね!
(観察種数102種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

初冬のみちのく 宮城・山形の海から山まで目指せ120種!

Report by 簗川堅治 / 2021年12月2日~5日

本格的な積雪を前に、冬鳥も揃ったみちのく宮城県、そして山形県で多くの鳥を楽しもうというツアーです。

 

冬型の気圧配置で天候が心配されましたが、ツアー開始前には穏やかになりました。まずはガイド簗川の地元でアオシギです。こちらは難なく観察することができました。しかし、あまりのカモフラージュさに、望遠鏡を使っても「どこ、どこ?」となる場面もありました。さすが、アオシギです!

アオシギ(撮影:高後洋子様)

 

マガモ、コガモ、そして数羽のヨシガモがいる沼をほんの少しだけ観察し、伊豆沼へと向かいました。冬型の気圧配置なので太平洋側は晴れです。伊豆沼ではハクガンを探しましたが、ガンの大きな群れ自体がほとんどおらず、四苦八苦しました。あきらめて移動する時に、遠くで大きな群れが飛び立ちました。と同時に、2羽のハクガンを発見!ところが、段々遠くなり、よく見ないうちに行ってしまいました。残念。

続いてカリガネのポイントに行きました。もうお馴染みの場所です。こちらもいることはいたのですが、遠い。それでも望遠鏡で餌をついばむカリガネの家族を見ることができました。

 

カリガネ

 

最後はもちろん、ガンのねぐら入りです。まずはコチョウゲンボウのねぐら入りを待ちます。いつの間にか現れ止まっていました。♂のようです。今度は、遠くから続々とガンの大群がやってきました。一体、どこにこんなにいたのかと思うくらいです。

場所を変え、さらにねぐら入りの観察です。頭上、そして目の前に次々にガンがやってきます!シジュウカラガンもたくさんいるようです。そして、何かがあったのか、一斉に舞い上がりました。ものすごい数です。上空を一周して、再び沼に舞い降りました。いつもながら、この何万羽というガンのねぐら入りは、本当に感動的です。

 

ツアー2日目

当然、ねぐら立ち観察です。蕪栗沼に行きました。シジュウカラガンの大群が水面見えます。そして、日の出の時刻に地響きを伴い数万羽のガンが飛び立っていきます。ある群れは北東に、またある群れは南東に、南西に…真上も通過し、ただただ「すごい!」の一言です。

シジュウカラガンとマガン

 

朝食後は、昨日、チラッとしか見られなかったハクガンを探しに行きましたが、残念ながら出会えず。再び蕪栗沼に。今度は散策路を歩き、ベニマシコ、ジョウビタキ、シメなどの小鳥類や亜種オオヒシクイやチュウヒを観察しました。

ベニマシコ(撮影:高後洋子様)
オオヒシクイ(撮影:森久美子様)
チュウヒ(撮影:森久美子様)

午後は南三陸でコクガンです。その前に東日本大震災で犠牲になった大川小学校へ立ち寄り、津波のおそろしさ、むごさを実感しました。そんな中、オオワシが真上を通過していきました。

震災直後は、港にたくさんの海藻が生え、コクガンが漁港にたくさん入りました。しかし、港の工事が終わった今は、昔のようにちょっと沖の養殖場にいることが多くなりました。それでも、一ヶ所の漁港で25羽以上のコクガンを比較的近くでじっくり観察することができました。オオワシやワシカモメの姿もありました。

コクガン(撮影:高後洋子様)

ツアー3日目

天気予報通り、朝から雨降りです。雨の中、最上川河口へハクチョウのねぐら立ちを見に行きました。こんな天気の時は、ハクチョウのねぐら立ちもゆっくりなので、日の出時刻を過ぎても飛び立ちません。その代わり、ゆっくりと観察できる利点はあります。ここのところの大雨で増水して中洲がなくなったためか、ハクチョウの数はかなり少なめです。コハクチョウがほとんどなので、亜種アメリカコハクチョウを探しました。それっぽい個体はいましたが、ちょっと黄色部が広めなので、合いの子のようです。

 

朝食後は、海岸沿いを回りました。ヒメウやハマシギなどを観察。その後、田んぼでミヤマガラス、そしてオオワシを見ることができました。柿の実にくるムクドリの群れやツグミなども見ました。レンジャクを期待したものの、残念ながら会えませんでした。

オオワシ(撮影:吉田徹様)

お昼を挟んで、今度は大山上池下池でカモの観察です。しかし、カモは例年よりかなり少なく、ちょっとがっかり。それでも、ここの名物、トモエガモはたくさん見ることができました。その他、ミコアイサ、カワアイサ、ハシビロガモなども見ました。オジロワシもいるはずですが、あちこち探しても見当たらず。

続いて、また海岸です。カモメ類はほとんどおらず、期待はずれな感じはありましたが、ウミウ、スズガモ、そしてシノリガモとウミアイサを楽しむことができました。

シノリガモ(撮影:吉田徹様)

帰り際、オオワシの近くに止まるオジロワシも見られましたし、柿の実のそばでは2羽のオオタカも見ることができました。

オジロワシ(撮影:吉田徹様)

ツアー4日目

最終日です。まずは沼でカモ類です。トモエガモを納得いくまで観察。マヒワ、アトリが上空を通過して行きました。

トモエガモ

今度はスペシャルメニューで、急きょ、鷹匠の家へ訪問し、鷹狩りに使うイヌワシ、クマタカなどをじっくり見せてもらい、目の前のワシとタカに大興奮!そして面白い鷹匠の体験話に思わず笑顔になりました。

 

最後は、初日のアオシギにまた挑戦しましたが、あいにく見ることはできませんでした。残念。

目標の120種には及びませんでしたが、初冬のみちのく宮城・山形の海から山までたくさんの鳥に出会うことができました。4日間、大変お疲れ様でした。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!