初夏の石垣島でツルクイナ、オリイヤマガラに挑戦【後編】

Report by 簗川堅治 / 2021年6月4日~6日

 

ツアー2日目

なんと台風が近づいているようです。荒れる前に、まずはツルクイナのポイントへ。しかし、残念ながら鳴かず飛ばず。その替わり(?)クロハラアジサシが6羽、現れてくれました。台風の強風を逃れてきたのでしょうか?

クロハラアジサシ(撮影:荒井隆之さま)

一旦、ホテルへ戻り、朝食をとって再出発。ところが段々雨も風もひどくなってきたため、平田原でセイタカシギの群れやオグロシギを見て、ホテルへ戻り待機することにしました。

セイタカシギ(撮影:荒井隆之さま)

幸いにも台風の勢力は弱く、しかも足早に通り過ぎていきました。再再出発です。再び平田原へ。ムラサキサギが飛んできました。降り立った位置がよく見えないので移動すると、なんとタマシギのつがいがいました、これはラッキー!こちらをやや気にしているのか、段々と遠ざかっていきました。ムラサキサギの存在を忘れてしまうほど、みなさん、タマシギに夢中でした。他、セイタカシギの群れ、シロハラクイナの親子などを観察しました。

タマシギ(撮影:荒井隆之さま)

台風は過ぎ去ったとはいえ、いい天気ではなく、時々雨です。今日も(オリイ)ヤマガラに挑戦することはできなさそうです。しかし、こんな時は日中でもツルクイナのチャンスなので、またツルクイナのポイントへ移動です。いい条件ではあり、いかにも出そうでしたが、残念ながら出ませんでした。

カンムリワシ(撮影:大塚敦雄さま)

気を取り直して、バンナ公園へ。到着早々、カンムリワシが目の前に!一同、大興奮です。しばし、カンムリワシを満喫しました。(リュウキュウ)アカショウビン、(リュウキュウ)サンコウチョウ、そしてズグロミゾゴイも出てきました。(チュウダイ)ズアカアオバトがアカギ実を食べにやってきたり、あずまやにリュウキュウコノハズクがいたりと、忙しく、かつ、幸せな時間を過ごしました。

ズグロミゾゴイ(撮影:大塚敦雄さま)
(チュウダイ)ズアカアオバト(撮影:大塚敦雄さま)

他にリュウキュウコノハズクや(イシガキ)シジュウカラなどを見て、夕方、またまたツルクイナのポイントへ。今度は声をちょっとだけ聞くに留まりました。やはり手強いです。

最後は数百羽のリュウキュウツバメのねぐらを見て、2日目を終えました。

 

 

ツアー3日目 

朝食前にツルクイナですが、まずは平田原に行ってリュウキュウヨシゴイを狙います。早速、草の上にいるリュウキュウヨシゴイの♂がいました。綺麗です。

リュウキュウヨシゴイ(撮影:大塚敦雄さま)

気をよくしてツルクイナのポイントへ。地上にいる所をぜひ見たいものです。固唾を飲んで、じっと待ちます……しかし、姿も声も確認できないまま時間切れとなりました。残念!

朝食後、新川川河口でアオアシシギを見たあと、オオアジサシのポイントへ。飛んでます、飛んでます。ちょっと遠いですが、複数のオオアジサシの黒い頭と黄色い嘴が確認できます。時折、近くに飛んでくる個体もいました。大きいです。

オオアジサシ(撮影:荒井隆之さま)

今日も天候が悪く、於茂登岳の(オリイ)ヤマガラのポイントへは行けないため、登山口周辺で探しましたが、そう簡単には出ません。林道では、(リュウキュウ)キビタキのさえずりが聞こえましたが、生い茂った葉の陰で見ることはできませんでした。

そろそろ時間がなくなってきました。ここで石垣島では珍しいカイツブリの親子を観察しました。ヒナはだいぶ大きくなっていましたが、まだまだかわいいです。最後は空港近くでカタグロトビです。しかし、またあっという間に林の陰へ消えてしましました。

 

梅雨時期なので天候が不順で思うように行かず、(オリイ)ヤマガラは見るどころか、ポイントにさえ行けませんでした。それでも難関のツルクイナを全員が見ることができたのは、非常に大きな成果です。それ以外にも、南西諸島ならではのたくさんの鳥たちに会えた3日間でした。参加者のみなさん、お疲れ様でした。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

夏の仲ノ御神島&石垣島アジサシ観察

Report by 五百澤日丸 / 2021年7月15日~7月18日

ツアー下見のため、4日前から石垣島に入って島内を細かく見て回りました。何度も来ている石垣島ですが、毎年同じ場所にいるとは限りません。環境の改変によって、ポイントも大きく変わるので、ツアー直前の下見は非常に大切です。心配していた海況も、非常に穏やかでクルーズ船の航行には問題が無いことを確認し、胸をなでおろしました。

 

初日、石垣空港で参加者の皆様と無事に合流しました。皆さん、挨拶もそこそこに開口一番「船は大丈夫ですか!?」でした。海況は穏やかで問題が無いことをお伝えすると、仲ノ御神島クルーズに2回行こうとして、2回とも欠航で悔しい思いをしているので心配されていたとのことでした。

 

潮の時間がちょうど良く、引き始めで干潟が拡がりつつある状況を生かして、まずは海岸へ向かいます。7月中旬にもなると、シギ・チドリ類が増え始める頃です。干潟には、トウネン、キアシシギ、アカアシシギ、キョウジョシギ、オオメダイチドリ、ダイゼンなどの姿が見られました。今回のメインとなる、アジサシ類はエリグロアジサシとコアジサシが干潟に降りて休んでいました。強い陽射しの中、真っ白い姿は暑さを忘れさせてくれるほど美しかったです。

エリグロアジサシ
エリグロアジサシ(撮影:長谷川誠様)
クロアジサシ
クロアジサシ(撮影:長谷川誠様)

続いて住宅地にある林、水田地帯、その他のポイントを巡り、リュウキュウアカショウビン、シロハラクイナ、ムラサキサギ、移入種で世界的に分布を拡げつつあるカバイロハッカなどを確認して、この日は明日に備えてホテルへ入りました。

 

翌朝、外は今日もいい天気です。皆さんの体調も万全です。朝食後、ホテルから歩いてクルーズ船へ向かいました。すでにクルーズ船のスタッフの方は準備して待っていました。以前にもお世話になった船長さんと挨拶し、今日は穏やかな海況であるとのことで、参加者の皆さんのテンションもあがります。

仲ノ神島遠景(船上より)
仲ノ神島遠景(船上より)(撮影:長谷川誠様)

石垣港を就航して、リーフ内を滑るように船は進みます。竹富島や黒島などを見ながら、所々にある灯浮標にとまるオオアジサシ、エリグロアジサシなどを観察しました。リーフを出ると、さすがにうねりが出てきます。それでも今日はかなり穏やかな方です。遠くに仲ノ御神島が見えてくると、周辺の海域にはアナドリ、クロアジサシ、カツオドリなどが飛び始めます。やがて仲ノ御神島が目の前に迫ってくると、たくさんのカツオドリが船の上に集まってきました。ごく近くを大きなカツオドリが飛ぶと迫力があります。その表情もはっきりと分かります。

仲ノ神島近景(船上より)
仲ノ神島近景(船上より)(撮影:長谷川誠様)

波の少し穏やかな場所へ入り、聳える岩壁を見上げると、白っぽいカツオドリがいます。例年、白い綿羽に覆われたカツオドリのヒナがたくさんいる時期なので、「白いのはカツオドリの幼鳥です」と説明して、双眼鏡を覗いてびっくり!しました。なんと、アオツラカツオドリの成鳥でした。それもあちこちにいます!私を含め、船上は騒然となりました。数えること、最大同時64羽のアオツラカツオドリを確認しました。これは国内でも最大級の数です。巣は確認出来なかったので、これから繁殖するのか、たまたまやってきたものなのかわかりませんでした。

アオツラカツオドリ
アオツラカツオドリ(撮影:長谷川誠様)

島を1週しながら、一番波がおだやかな場所へ行きます。セグロアジサシ、マミジロアジサシ、クロアジサシが無数に舞い、夢のようなひとときを楽しみます。島の北東側でアンカーをおろし、しばし、観察を楽しみます。斜面を飛ぶ白いカツオドリがいます。「こちらにもアオツラがいますね・・・」と、言いかけてまたしてもびっくり!しました。なんと尾が白いのです。「アカアシカツオドリです!」と、またしても予想外の展開に、皆さんと再び大興奮となりました。飛んできたアカアシカツオドリがとまった木には12羽のアカアシカツオドリがとまっているではありませんか!それも巣があり抱卵中?の個体もいます。茶色いのは幼鳥ではなく、褐色型のようです。さあ、次はネッタイチョウ類!と、期待しながら待ちますが、残念ながらそれらは出ませんでした。それでもアオツラカツオドリとアカアシカツオドリがたくさん見られただけでも十分贅沢な瞬間でした。こうしているうちに、あっという間に蛙時間となりました。アジサシ類とカツオドリ類の大コロニーの島、仲ノ御神島をあとに、心地よい疲労感の中、船は一路石垣島へと向かいました。

アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ(撮影:長谷川誠様)

翌日は、石垣島内の各ポイントを巡ります。穏やかな海だったとはいえ、やはり揺れない陸地は快適です。島の各ポイントを巡り、カンムリワシ、シロハラクイナ、リュウキュウツバメ、ムラサキサギ、ズグロミゾゴイ、オオアジサシ、クロハラアジサシなどを観察しました。今年は、石垣島で繁殖するアジサシ類は例年よりも少なくて、やや物足りない状況でした。ちょっと残念ですが、これも自然界のことです。来年に期待したいところです。

カンムリワシ
カンムリワシ(撮影:長谷川誠様)
ズグロミゾゴイ
ズグロミゾゴイ(撮影:長谷川誠様)
リュウキュウアオバズク幼鳥
リュウキュウアオバズク幼鳥(撮影:長谷川誠様)

最終日、皆さんにどこで何を目的に回るか相談して、そのリクエストに応える形にしました。まだ行っていない地域を中心に出現する可能性がある、オニカッコウのポイントのほか、リュウキュウアカショウビン、オリイヤマガラ、カタグロトビなどを探しました。時間があまりなかったので、粘ることは出来ず、全部は見られませんでしたが、それなりに楽しむことができました。

リュウキュウアカショウビン
リュウキュウアカショウビン(撮影:長谷川誠様)

とにかく暑くて大変でしたが、最大の目的である、チャーター船で行く仲ノ御神島クルーズが欠航することなく、無事に終了することが出来たのはなによりでした。やはり石垣島は何度来ても素晴らしいところでした。参加者の皆さん、お疲れ様でした。そしてありがとうございました。

この記事を書いた人

五百澤 日丸 いおざわ ひまる
新潟県在住。(有)レイヴン・所属。鳥類調査を中心に、執筆、写真撮影、ツアーガイドを行う。一番の関心事は、ヒマラヤ山脈から台湾・南西諸島・朝鮮半島・日本にかけての鳥類の分類・分布。主な著書に「日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版」(共著/文一総合出版)、「日本の野鳥650」(共著/平凡社)など。他にも著書多数。