沖縄・やんばるの森でバードウォッチング三昧

report by 吉成才丈 2022年10月19日~22日

 

沢沿いを散策
沢沿いを散策

1日目
那覇空港に集合後、専用車でヤンバル方面に移動。途中で昼食を済ませ、まずはノグチゲラとアカヒゲの目撃例が多い沢沿いを散策しました。

 

歩き始めてすぐ、ノグチゲラが今年掘りかけた穴を見せてもらいました。さらに進むとアカヒゲの声が数ヵ所で聞かれましたが、ヤブの中で動き回る姿がチラチラ見えただけでした。

次に近くの耕作地に行くと、セイタカシギやクサシギ、タカブシギなどのシギ・チドリ類やシマアジやハシビロガモなどのカモ類を発見。さすが沖縄、越冬するシギチも多いですね。

セイタカシギ
セイタカシギ

 

この日は時折雨も混じる天気で翌朝も早かったため、早めにホテルにチェックインしました。ホテルの部屋からは一晩中、ヤンバルクイナやリュウキュウコノハズクの声が楽しめ、贅沢な夜で眠りが浅かった方もいたかもしれませんね。

2日目
まだ暗いうちにスタートし、まずは、木の上で休むヤンバルクイナを探しました。幸いにも数羽が見つかり、短時間の観察をさせてもらいました。宿泊したホテルにも「夜間の観察は5分程度にとどめる」とあったため、慌ただしく観察を終えました。

ヤンバルクイナ(渡辺 溶 様 撮影)
ヤンバルクイナ(渡辺 溶 様 撮影)

 

ヤンバルクイナやノグチゲラは沖縄本島北部にしか生息しないため、このツアー最大のターゲットの1つがクリアできて安心しました。そして、さらに進むと、木の枝に垂直に伸びるコブのようなものを発見。寸胴に見えたその部分をよく見ると、なんとオオコノハズクでした。リュウキュウコノハズクは出会う機会が多いですが、オオコノハズクはめったに出会ないため、とてもラッキーでした。

オオコノハズク(渡辺 溶 様 撮影)
オオコノハズク(渡辺 溶 様 撮影)

 

そして明るくなってホテルへの帰り際、一瞬でしたが、またヤンバルクイナに出会えました。

ヤンバルクイナ(渡辺 溶 様 撮影)
ヤンバルクイナ(渡辺 溶 様 撮影)

 

午前中は、もうひとつの固有種・ノグチゲラを中心に探しました。過去の観察実績のあるダムサイトや林道を巡ると、沢沿いで「ピッ、ピッ」という声が聞こえました。声のする方に静かに近づくと、ノグチゲラのメスが忙しく木を上下していました。幹の陰に回り込むことも多く、じっくりと姿は観察できなかったものの、なんとか姿は捉えることができました。道の駅で昼食を済ませて午後には、プライベートのバタフライガーデンを訪ねました。

バタフライガーデン
バタフライガーデン

 

ここでは様々なチョウを呼ぶため、いろいろな食草を植えてチョウを誘致しており、まるで楽園のようにチョウが舞っていました。

イシガケチョウ
イシガケチョウ
ツマベニチョウ
ツマベニチョウ

 

チョウの生態や識別方法などにとどまらず、植物などのレクチャーを受けながらの観察は楽しく、あっという間に時間が過ぎていきました。アゲハは大きくて目立ちますが、驚いたのが小指の爪ほどしかない小さなリュウキュウウラボシシミです。教わらなければチョウとは思えないほど素早い動きに、皆さん夢中になってシャッターを切ってました。

3日目
この日も暗いうちにスタートしましたが、ヤンバルクイナは昨日堪能したため、フクロウ類をターゲットにして行先を変えてみました。すると、昨日と違い蒸し暑さもあって動きが活発だったのか、枝にとまるリュウキュウコノハズクを発見。昨日出会ったオオコノハズクよりも小さくやや細身なので、縦に伸びた枝かと思いましたが、頭を動かしてくれたのでフクロウだとわかりました。

リュウキュウコノハズク(渡辺 溶 様 撮影)
リュウキュウコノハズク(渡辺 溶 様 撮影)

 

そしてダムサイトでは、アオバズクも出現。フクロウ類は1種見られればよいかと思っていましたが、これで3種すべてをクリアしてしました。

アオバズク(渡辺 溶 様 撮影)
アオバズク(渡辺 溶 様 撮影)

 

朝食後にはダムサイトなどを覗き、午後には金武の耕作地を訪ねました。ここは鳥の種類も多いのですが、とくにシギチやカモなどの水辺の鳥を狙いました。水の張ってある畑地や水路ではコアオアシシギやタカブシギ、ヒバリシギなどのシギチがたくさん見られました。そして畑地では、アマサギやツメナガセキレイなども観察。ツバメとリュウキュウツバメも仲良く並んでいましたね。

ツバメとリュウキュウツバメ
ツバメとリュウキュウツバメ

耕作地の鳥たちを堪能した後は那覇市内に戻り、三角池を覗いてみました。ここで一番目立つのはクロツラヘラサギで、毎年数羽が越冬しています。この日も3羽が休んでいました。

クロツラヘラサギ(手前)とダイサギ
クロツラヘラサギ(手前)とダイサギ

 

他にはアカアシシギ、アオアシシギ、ヒバリシギ、バンなどもいて、小さな池の割にたくさんの水辺の鳥が観察できました。

4日目
この日は比較的ゆっくり(昨日までが早すぎ?)スタートして三角池へ行くも、潮の具合が悪く、昨日の1/5ほどしか鳥たちがいませんでした。近くの干潟へ移動すると、おそらく昨日は三角池にいたとみられるクロツラヘラサギ3羽を発見。他にチュウシャクシギやダイゼン、カワセミなども観察できました。その後は海岸線を南へ向かい海岸の環境も観察すると、黒いタイプのクロサギと白いタイプのクロサギが追いかけあってました。

白いタイプのクロサギ
白いタイプのクロサギ

 

他には、ムナグロ200羽の群れやヒバリシギ、ハマシギ、トウネンなどのシギチ、ヒドリガモやハシビロガモ、ミサゴ、コシアカツバメなども出現しましたが、皆さん暑さでバテ気味だったので、早めに車に戻りました。そして最後に、漫湖水鳥・湿地センターを訪ねると、三角池では見られなかったヘラサギを発見。ヘラサギもクロツラヘラサギも、マングローブがよく似合いますね。

ヘラサギ
ヘラサギ

 

残り時間が少なくなったため、アカアシシギを横目で見ながら空港に向かい、那覇空港で解散しました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

 

(観察種数70種)

 

吉成才丈

 

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

秋の石垣島で
アカハラダカ・カンムリワシ・ムラサキサギを狙う

Report by 戸塚学 / 2022年9月23日~25日

 

台風14号の影響で、下見の出発が1日遅れたものの無事石垣島へ入ることができた。現地の方たちから情報が入るものの・・・シギやチドリが少ない。どうやら抜けたようだ。

ツアーは23日~25日なのでまだ時間があるものの24・25日が雨予報。ところが23日に天気予報が一気に変わり前日の晴れ!特に24日は今年初めての大当たり!他にも連日鳥たちの撮影を堪能できてみなさま大満足の3日間となりました。

 

*本文中「リュウキュウ○○」という表記を「R」に省略させていただきます。

<1日目>

空港に時間通りみなさん集合されたので、専用車でまずは前日から出ているソリハシセイタカシギ(アボセット)の出ている田へ直行します。少し遠いのですが、超珍鳥なので時間をかけてしっかりと撮影を楽しんでいただきました。他にも周辺の田をゆっくりと車で流しながらシギやチドリを堪能します。途中数は減りましたが、まだクロハラアジサシやハジロクロハラアジサシが飛んでいるので、車から降りて撮影を楽しみました。

クロハラアジサシ
クロハラアジサシ

カンムリワシが飛んできたのですが、すぐに飛んで行ってしまったことで撮影ができず悔しい思いもしましたが次回のチャンスという事で引き続き時間いっぱいまで鳥たちを探しては撮影を繰り返しました。一旦18時にホテルに戻り、各自食事をとっていただいた後、ナイトサファリは19時30分から開始です。現地ガイドさんの案内で、Rアオバズク、Rコノハズク、ヤエヤマオオコウモリを無事撮影ができたので別の場所へ。

ヤエヤマオオコウモリ
ヤエヤマオオコウモリ
リュウキュウコノハズク
リュウキュウコノハズク

この場所は遊歩道を歩きながら生き物を探すスタイル。外来種のオオヒキガエルやサソリモドキ、オカヤドカリ、各種ゴキブリ、Rアオヘビも撮影しました。鳥はRコノハズク、ズグロミゾゴイの成鳥が撮れたのはラッキーでした!

オオヒキガエル
オオヒキガエル
ズグロミゾゴイ
ズグロミゾゴイ
リュウキュウアカショウビン
リュウキュウアカショウビン

<2日目>

7時にホテルを出発して展望台を目指します。アカハラダカはだいたい8時から10時の間に飛ぶのですが、少し早めに来て場所の説明や光の回り方、アカハラダカの出現の仕方を説明して待ちました。チョウゲンボウが皮切りに飛び出した後、ズアカアオバトがとまっているのを発見して撮影をすることができました。

ズアカアオバト
ズアカアオバト

風もいい、晴れているというベストコンディション。そして今年はまだアカハラダカの大きなあたりが無いので「今日が当たるかも・爆発ですよ!」なんて冗談交じりに参加者の皆さんには話していたのが、本当になっちゃった!パラパラ飛んできたかなと思ったら頭上でタカ柱!遠くに見つけたタカ柱が上空高くに消えたかと思ったらいきなり目の前にジャンジャン飛んできたりとみなさん大興奮!

タカ柱
タカ柱
アカハラダカ♀
アカハラダカ♀
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂

この時一番驚いたのはカンムリワシが目線でこちらに向かって飛んできたこと!こんなことは滅多にないし、私も初体験で焦ってしまった。

カンムリワシ
カンムリワシ

9時30分を過ぎた頃には渡りも落ち着いてきたのでシベリアムクドリ・カラムクドリが出ているポイントへ早めに移動。現地に着くと知り合いの現地ガイドさんがいて、いろいろと教えてもらい大助かり。おかげでシベリアムクドリ・カラムクドリは撮れました。

シベリアムクドリ
シベリアムクドリ

11時~15時まで休憩を入れてあるので、ここで一時解散です。この状況でみなさん歩いてホテルまで戻るわけもないので、好きなだけここで撮影をしてもらう事にしました。ただ水分補給だけは忘れないように伝えて私はホテルへ戻りました。さて皆さんの撮影結果はRサンコウチョウ、サメビタキ、シロガシラ、オサハシブトガラス、イソヒヨドリが撮れたと後から報告をいただきました。

シロガシラ
シロガシラ

15時専用車で再び田んぼを巡る旅です。もしかしてアボセットが昨日より近い場所にいるかもと行くと・・・本当にいた!昨日よりも撮りやすく近くて、がっつり撮影ができました!「とまっているカンムリワシ~」というリクエストで探すが見つからない。かわりにツメナガセキレイ、アカガシラサギ、ムラサキサギを撮ることができてみなさん満足そうです。時間になったのでホテルに戻りました。

ツメナガセキレイ
ツメナガセキレイ
アカガシラサギ
アカガシラサギ
ムラサキサギ
ムラサキサギ

<3日目>

ホテルの前の電線にツバメがとまっていた。朝日に照らされ若干赤っぽく見えていた。何気なく双眼鏡で見ると???Rツバメだった。今回ツバメは多かったがRツバメは見られなかったので急に撮影大会になってしまった。

リュウキュウツバメ
リュウキュウツバメ

とはいえいつまでも撮影していては本命がおろそかになるので、展望台へ向かいます。みなさんの期待が高まるも昨日のようにアカハラダカが爆発しません。時折近くに出てもそういう時に限って太陽が雲に隠れてしまう。この日はアカハラダカ以外にチョウゲンボウ・チゴハヤブサ・ハヤブサを見ることができました。残念ながら昨日を超える渡りは望めませんでした。10時なったので田んぼ巡りを開始です。やはり今日も「とまってるカンムリワシ~」というリクエストでカンムリワシを探します。飛んでいる姿を確認できたが見失ってしまった・・・残念。そんな時ドライバーさんが「あのスプリンクラーの上は違うかな?」と指さす先に、いた!カンムリワシです。ちょっと距離はあったがしっかりとその雄姿を撮影ができました。

その後も田を巡り最後まで撮影を楽しみます。12時近くになったので空港近くの田に移動します。運が良ければ何か入っていないかなと思っているとまたしてもドライバーさんが「あれ、何?」と指さす先にムラサキサギの成鳥が!みなさん夢中で撮っていると、突然ムラサキサギは飛び立った!時計を見ると12時30分まるで時計を持っているかのような行動です。本当に最後の最後まで撮影を堪能して空港で無事終了解散となりました。

みなさまお疲れさまでしたね、それにしても超ツキまくりの3日間でした。

リュウキュウツミ
リュウキュウツミ
シマアカモズ
シマアカモズ

 


撮れた鳥
ズグロミゾゴイ・アカガシラサギ・アマサギ・ダイサギ・チュウサギ・コサギ・アオサギ・ムラサキサギ・カルガモ・アカハラダカ・Rツミ・カンムリワシ・ハヤブサ・チョウゲンボウ・チゴハヤブサ・シロハラクイナ・バン・コチドリ・トウネン・ヒバリシギ・エリマキシギ・アカアシシギ・コアオアシシギ・アオアシシギ・クサシギ・イソシギ・タシギ・(チュウシャクシギ?)・セイタカシギ・ソリハシセイタカシギ・クロハラアジサシ・ズアカアオバト・Rコノハズク・Rアオバズク・Rアカショウビン・ツメナガセキレイ・シロガシラ・Rサンコウチョウ・シマアカモズ・イソヒヨドリ・サメビタキ・セッカ・カラムクドリ・シベリアムクドリ・オサハシブトガラス

 

観られた鳥・さえずり
Rヨシゴイ・シマアジ・コガモ・ムナグロ・ツバメチドリ・ハジロクロハラアジサシ・Rキジバト・キセキレイ・Rサンショウクイ・Rヒヨドリ・Rメジロ

 

その他
ヤエヤマオオコウモリ・サキシマキノボリトカゲ・サツマゴキブリ・サソリモドキ・オオヒキガエル・Rアオヘビ

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

夏の富士山・奥庭の野鳥と大磯海岸でのアオバト観察

Report by 吉成才丈 / 2022年8月22日~24日

<1日目>

途中から乗車する方を除き、新宿のバスターミナルに集合。ここから乗り換えなしで、標高約2,300mの富士山五合目まで行かれるのは本当に便利です。

予定より少し遅れて奥庭荘に着き、先着組に様子を聞くと、「この日の午前中はウソが1回出ただけ..」という不安な返答。

奥庭荘の水場
奥庭荘の水場

たしかに、昼食を済ませてじっと待っても、小鳥たちは出てきてくれません。

雨が多いことも影響しているのだろうと思ってさらに待つと、夕方になってようやく、ルリビタキやウソ、キクイタダキなどが出てきてくれました。
頂いた写真はどれもどアップですが、被写体までの近さが感じられますよね。

ルリビタキ(冨安市子様撮影)
ルリビタキ(冨安市子様撮影)

ウソ(冨安市子様撮影)
ウソ(冨安市子様撮影)

奥庭荘は山小屋なので夜間の消灯も早いのですが、早めの夕食後には、ガスの中で赤く染まる富士山も見られました。

ちなみに、奥庭荘の夕食は山小屋にしては豪華でウナギもついており、皆さん驚かれていました。

夕方の富士山山頂付近
夕方の富士山山頂付近

<2日目>

昨夜は時折強い雨が降ったものの、未明には雲がない時間帯もあったようで、素晴らしい星空の写真を撮られていた方がいて驚かされました。

夜明けの富士山の風景も美しく、これだけでも来る価値があると思います。

夜明けの富士山
夜明けの富士山

昨日は水場への飛来が少なくハラハラしましたが、この日は朝からルリビタキやウソ、メボソムシクイ、ヒガラなどがコンスタントに出てくれました。

メボソムシクイ(冨安市子様撮影)
メボソムシクイ(冨安市子様撮影)

光線状態もよく、シャッターチャンスも多かったと思いますが、平地では見慣れないウソの幼鳥はかわいかったですね。

ウソの幼鳥
ウソの幼鳥

そして、水場には降りてきませんでしたが、ホシガラスは近くのカラマツなどにとまってくれました。

ホシガラス(冨安市子様撮影)
ホシガラス(冨安市子様撮影)

奥庭荘の水場はすぐ目の前にあり、最短のポジションだと10mを切るほどの近さなので、観察は双眼鏡でも十分楽しめ、撮影は大砲レンズでなくても大丈夫です。

また奥庭荘の良さは、自分のペースで鳥見や撮影が楽しめる点にもあり、近くの散策路で景色や植物を見ながら鳥を探したり、奥庭荘で頼めるコーヒーを飲みながら座敷で鳥を見ることもできます。

なかには2階の室内から窓を開けて見下ろす方もおり、銘々に亜高山の鳥を楽しんでいただきました。

翌日のアオバト観察に備え、昼食後には大磯方面へ移動しました。

<3日目>

大磯・照ヶ崎海岸のアオバトは早朝からの飛来が多いため早めに現着したものの、すでに10名以上のカメラマンがスタンバイしていました。

アオバトは数羽から30羽ほどの群れがコンスタントに飛来し、磯におりては海水を飲む行動が観察されました。

アオバトの群れ
アオバトの群れ

アオバト
アオバト

海水を飲みに降りたアオバト
海水を飲みに降りたアオバト

しかし、この日はハヤブサ幼鳥が頻繁にアオバトを狙って群れに突っ込み、アオバトも落ち着いて海水を飲んでいられませんでした。

ハヤブサは若く、狩りも未熟なため、なかなかアオバトを捕らえることができません。おかげで(?)、緊迫の狩りの様子を何度も見ることができました。

やっとアオバトを捕らえたと思ったら、その後、海上に獲物を落としてしまいました…

獲物を捕らえたハヤブサ
獲物を捕らえたハヤブサ

アオバト以外にもクロサギやカワセミが出たり、ミサゴが海に飛び込んだりで、あっという間に時間が過ぎていきました。

トビ(冨安市子様撮影)
トビ(冨安市子様撮影)

ミサゴ
ミサゴ

クロサギ(冨安市子様撮影)
クロサギ(冨安市子様撮影)

暑さもあり、アオバトの飛来も少なくなるので早めに切り上げて解散しましたが、皆さん、チェックアウトしていなかった部屋に戻り、シャワーを浴びてお帰りになられたと思います。

大磯のアオバトは早朝の時間帯がよいので奥庭荘と組み合わせてみましたが、環境にも鳥にも変化があり、バラエティに富んだ鳥見ができたと思います。

また、ほぼ歩かずに自分のペースで楽しめるので、のんびり楽しみたい方には最適だと感じました。

(観察種数29種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

初夏のみちのく山形 海から山まで -目指せ100種!-

Report by 簗川堅治 / 2022年6月9日~12日

 

山形県を一周し、初夏の鳥たちをできるだけ多く楽しむツアーです。結果としては雨も降らなかったことが幸いし、104種を確認することができました。

 

1日目。出発はガイドの簗川の地元・天童市です。まずは「こんな所で?」という場所でコチドリを観察。ヒバリが鳴き、ノスリが電柱に止まっています。

続いては神社へ。沼のほとりで朝をとるヨシゴイ、飛び交うコムクドリ、そして「キーキーキー」と鳴くチゴハヤブサを確認。次の目的地に移動中にオナガをゲット。

ヨシゴイ
ヨシゴイ

チゴハヤブサ
チゴハヤブサ

今度は違う神社で巣立って大きくなったフクロウを観察。かわいい!また移動して、こちらでも巣立って大きくなったバンの兄弟を観察。

フクロウ
フクロウ

今度は猛禽類を観察しに行く途中で、越夏中のキンクロハジロをゲットし、山間部へ到着です。猛禽類の定点です。しばらくしてノジコを観察、サシバが登場し、オシドリが通過。残念ながら、イヌワシ、クマタカは出ませんでした。

ノジコ
ノジコ

次の場所に移動中にハリオアマツバメとアマツバメなどを追加し、この日、最後の場所でトラフズクを観察しました。

トラフズク
トラフズク

2日目。早朝探鳥でアカショウビン、キバシリ、そしてオオアカゲラを狙います。しかし、それどころか、他の鳥もあまり鳴いておらず閑古鳥状態。結局、キバシリとアカショウビンは声のみ、オオアカゲラはそれらしい声は聞こえましたが確認まで至らず。他、ノジコやコサメビタキ、コガラ、ニュウナイスズメなどを確認して朝食の時間となりました。

山頂
山頂

朝食後は山間部で猛禽類を探すも時間帯が早かったせいもあり収穫はなし。河原ではカワガラスやオシドリを確認しました。

続いては、ちょっと難関のコジュリンとオオジュリン、そしてアリスイに挑戦。見づらかったものの、コジュリン、オオジュリンは確認できました。アリスイは声すらせず。他、コヨシキリやホオアカ、そして居残りのオオハクチョウを観察しました。

コヨシキリ
コヨシキリ

お昼を挟んで、シロチドリ探しです。いるはいるものの、遠すぎて陽炎ゆらゆらの中での観察でした。キアシシギは思わぬ収穫です。

続いて、ミサゴの巣を離れた場所から観察しようとしたところ、真上につがいが登場!ラッキーでした。

ミサゴ
ミサゴ

今度は、これまた難関のチゴモズです。しかし、けっこうあっさりと登場。オオタカも確認できました。おまけはイスカでした。

チゴモズ
チゴモズ

なかなか順調なので、ササゴイに挑戦。しかし、現れてくれませんでした。それでもカッコウやノスリ、そして小鳥を追いかけるオオタカの姿が観察できした。

この日最後はコアジサシを探しました。ところが今年はひと月前に100羽ほどいた群れが全くいなくなり、残念な結果になりました。それでも愛想の良いシロチドリで楽しいひとときを過ごしました。

シロチドリ
シロチドリ

3日目。まずは山形県唯一のカンムリカイツブリの繁殖地へ。無事見られ、マガモも追加。しかし、他はパッとしなかったため、山へ移動し、巣材をくわえたイカルや巣立ったエナガなどを観察しました。

イカル
イカル

カンムリカイツブリ
カンムリカイツブリ

朝食後は移動途中でハヤブサの親子と観察し、その後、コシアカツバメをじっくりと観察し、山間部へ。ここでまたクマタカを待つも現れず。移動中にクロサギを探すも、これまた現れず。

コシアカツバメ
コシアカツバメ

一旦、新潟県に入り、再び山形県内へ入り、ブッポウソウを待ちます。無事、観察できました。クマタカも期待しましたが、今度も現れず。

ブッポウソウ
ブッポウソウ

移動して湿地帯でケリを探しましたが、これも外しました。しかし、チョウゲンボウと山形県ではもっとも見づらい鳥のひとつ、セッカを確認。

この日の最後は、急きょ予定を早め亜高山帯へ。翌日が雨予報だったためです。高山帯では、きれいなウソが間近で見られたり、ホシガラス、メボソムシクイなどを追加確認しました。

4日目。雨予報でしたが、結果としては降らずに済みました。ラッキーです。早朝、ビンズイ、ルリビタキなどで楽しみ、朝食後は㊙の鳥を観察。

ルリビタキ
ルリビタキ

解散の時間も迫ってくる中、市街地の公園でアオバズクやチゴハヤブサを観察して、すべての行程を終え、最後は山形名物「冷たい肉そば」でお腹も満腹にして解散しました。

アオバズク
アオバズク

せわしない日程でしたが、たくさんの鳥を観察することができました。ありがとうございました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

バードアイランド三宅島・野鳥撮影の旅

Report by 戸塚学 / 2022年5月16日~18日

 

5月16日(月) 初日移動
明日の三宅島の天気予報はあまりよくないが竹芝桟橋は曇り。予定通り出航した。出航してすぐは甲板からレインボーブリッジ通過の瞬間を見られるとあって数人が見学に行った。

 

5月17日(火) 三宅島 雨時々曇り
5時に新鼻荘の送迎車で宿へ。なんとなく雨が小降りになってきたので、レンジャーの話ではタネコマドリは「迷子椎」近くで出がいいというので大路池の周回散策路を歩きながら、鳥達の声を楽しみつつ、姿を探して移動。しかし三宅島の暗い森は厳しい・・・。声はすれども姿は見えず。アカコッコは道路に出てもすぐに飛び去る・・・。迷子椎のところでもタネコマドリの声はすれども姿は見えず・・・。いいところまで近づくが・・・去って行く。望み薄な感じなのでトイレのある桟橋まで足を延ばす。桟橋からは対岸にダイサギの姿が見られ、小雨が降る暗い中だがいい雰囲気なので撮影をしてもらう。そうこうしているうちにオシドリのペアが飛んできたので遠いけれどもこちらも撮ってもらう。湖岸の桑の実にシチトウメジロが集まるのでこちらも撮影してもらい、一旦アカコッコ館を目指す。

ダイサギ

オシドリ

シチトウメジロ

アカコッコ館では雨宿りをしながら撮影を試みるが暗いし視界が無くて手に負えないため、早々に切り上げ宿へ戻る。宿に戻るとおかみさんが庭にもアカコッコや小鳥が来るから撮ればいいと解放してくれたので12時まで撮影をすることにした。アカコッコは来なかったがオーストンヤマガラとカワラヒワが良くエサ台に来てくれたのと、上空を飛翔するカラスバトは10回以上見ることができた!

オーストンヤマガラ

カワラヒワ

12時タクシーが迎えに来たので目的地を急遽変えていつもお世話になっている宿へ行ってもらう。今年この宿の周辺だけアカコッコが多いというのだ。そこで傘を差しながら細い道を進むとアカコッコがいた!結構な頻度でアカコッコを見つけることができたのでみなさん何とか撮影ができたようでほっとする。ここで問題が!私のミスで明日が3時間、今日が2時間の予定を勘違いしてしまいタクシーの運転手に明日2時間に変更できるかと聞いてOKが出てほっとする。まぁミスのおかげでアカコッコを堪能できたのだから結果OKだろう。宿に戻ってからも庭の撮影をしているとアカコッコが来てくれたが、私は撮るどころか見ることもできなかった・・・いとかなし。そのまま終了して夜は地魚と地元の食材のおいしい晩御飯をいただきました。

アカコッコ

5月18日(水) 三宅島 晴れ
4時半から庭の小鳥とアカコッコ撮影。6時にタクシーが来たので伊豆岬へ移動。到着してドアを開けると・・・!すでにウチヤマセンニュウのさえずりがあちこちから聞こえる。すぐに双眼鏡で覗くと、いるいるいっぱいいる!できるだけ近い個体を見つけ場所を教えて撮ってもらう!よかったこんなに早くカタが付くとは。他にもウグイスのさえずりも目立つところでしていたのでしっかりと撮ってもらう。カラスバトも多くいるのだがこちらは遠い・・・。

ウチヤマセンニュウ

ウグイス

昨日のミスで2時間になってしまったがとても有効な2時間を堪能することができた。
一旦宿に戻り朝食を食べたのち、荷物をまとめて大路池の遊歩道へ。今日は迷子椎まで行かず途中のポイントで鳥を探すことにする。あまり鳥たちの姿が見られないので、各自で移動撮影をしてもらったことが良かったようで一部の方たちはタネコマドリやモスケミソサザイを撮ることができたようだ。残念ながら私は、モスケミソサザイは見られたがタネコマドリは見ることができなかった。

 

12時に宿のおかみさんに港に送ってもらう途中、阿古の集落にある溶岩が入った中学校を見学。火山島の生の姿を実感することができた。船上では甲板で鳥を探すが島を離党してすぐのカンムリウミスズメは外した。しかしオオミズナギドリや時々混じる黒いハシボソミズナギドリを観察&撮影しながら伊豆大島近くに来るとイルカの群れが現れた。ここでようやくクロアシアホウドリが2羽出てくれた!この先はオオミズナギドリ以外の期待が持てないこともあり、皆さん疲れたようで流れ終了(笑い)。夕日と富士山や夕焼けと羽田空港の飛行機を狙いつつ船は無事竹芝桟橋へ・下船と同時にそのまま解散となりました。

クロアシアホウドリ

オオミズナギドリ&ハシボソミズナギドリ

本当ならアカコッコ間の水場でばっちり撮影ができるはずが今年は鳥達の動きがいつもと違う+雨という天候不良により歩かないつもりが相当歩く結果になったことは申し訳なく思いましたが、地元の方たちの情報のおかげで歩いたことでアカコッコの撮影ができたことは何物にも代えがたい収穫だったのではと感じました。

 


撮れた鳥
カラスバト・ハシボソミズナギドリ・クロアシアホウドリ・ダイサギ・ミヤケコゲラ・シジュウカラ・オーストンヤマガラ・ウグイス・イイジマムシクイ・シチトウメジロ・ウチヤマセンニュウ・モスケミソサザイ・アカコッコ・タネコマドリ・カワラヒワ・オシドリ
観られた鳥・さえすり
コジュケイ・二ホンキジ・ウSP・アマツバメ・ウミネコ・ミサゴ・トビ・ノスリ?・アオバズク・ハシブトガラス・ヒヨドリ・イソヒヨドリ・スズメ
哺乳類
イタチ

 


この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

渡り鳥の楽園・春の与那国島【後編】

Report by 簗川堅治 / 2022年3月23日~26日

 

3日目。朝食前に宿周辺を探鳥し、バライロムクドリ、カラムクドリ、ギンムクドリを観察。港の芝生でホオジロハクセキレイ、タイワンハクセキレイを見て、またしてもチョウセンウグイスは声のみでした。

 

朝食後、チョウセンウグイスの姿を見るべく粘りました。その間、タイワンヒヨドリ、ホオジロハクセキレイ、タイワンハクセキレイなどを見て過ごしましたが、結局、チョウセンウグイスは声のみでした。

ハクセキレイの亜種ホオジロハクセキレイ(撮影:上山功夫様)
ハクセキレイの亜種ホオジロハクセキレイ(撮影:上山功夫様)

今日は反時計回りで島を回ることにしたので、自衛隊の前を通り、昨日、たくさんのセイタカシギとオジロトウネンがいた田んぼへ。セイタカシギは増えていました。オジロトウネンも健在。時折、一斉に飛ぶ姿がきれいでした。

 

比川でまたセイタカシギやリュウキュウツバメを見て、お昼にしました。今日は地元のクルマエビが乗ったクルマエビそばを食べました。とてもおいしく、みなさん、いい顔です。

 

今度は小休止と観光を兼ねて、アヤミハビル館へ行きました。館内に入って早々、職員の方からヤツガシラがいるとのことで、館内見学後、早速ヤツガシラ観察です。柵の上にいるヤツガシラを発見。脇の縦斑をしっかりと確認。冠羽を広げないかと、みなさん、シャッターチャンスを狙います。地面に降りた瞬間など、何度か冠羽を広げてくれました。

ヤツガシラ(撮影:上山功夫様)
ヤツガシラ(撮影:上山功夫様)

祖納へ移動です。オジロトウネン、オウチュウがまだいてくれました。カワセミも登場。続いて、これまた観光を兼ねてティンダバナへ。迫力満点の岩場です。祖納の集落を一望できました。

ティンダバナから祖納を望む
ティンダバナから祖納を望む

製糖工場の裏では、サトウキビのかすにハクセキレイの亜種ニシシベリアハクセキレイがいました。与那国島でも3回程度しか記録がないド珍鳥です。

ハクセキレイの亜種ニシシベリアハクセキレイ(撮影:上山功夫様)
ハクセキレイの亜種ニシシベリアハクセキレイ(撮影:上山功夫様)

近くには似ている亜種でお馴染みになったホオジロハクセキレイがいました。両種の違いをじっくりと観察。ニシシベリアハクセキレイの方が気が強いようで、ホオジロハクセキレイを追い払う場面もしばしば。

 

ニシシベリアハクセキレイを堪能後は祖納の墓地でシロチドリ、コチドリを見て、久部良ミト、そして校庭を回り、この日を終えました。

 

4日目。最終日です。今日も朝食前に宿付近で探鳥です。昨日、クロウタドリを見たという情報があったので学校周りを探しましたが、残念ながら見当たらず。ムクドリの群れも見当たりません。しかしその後、複数のムクドリがいて、その中にコムクドリが1羽入っているのを見た方がいました。ホオジロハクセキレイの数も減ったようです。

 

チェックアウト後、久部良ミトでクロツラヘラサギやシラサギ類を見て、昨日のニシシベリアハクセキレイの場所へ。今日もホオジロハクセキレイと一緒にいました。タイワンハクセキレイやセッカもいるようです。

セッカ(撮影:上山功夫様)
セッカ(撮影:上山功夫様)

時間がなくなってきました。最後は祖納の墓地でオオチドリに期待します!……が、コチドリ、シロチドリ、メダイチドリはいるもののオオチドリの姿はありませんでした。ただ、岩場でクロサギの収穫はありました。

クロサギ(撮影:上山功夫様)
クロサギ(撮影:上山功夫様)

昼食用においしいと評判のパン屋さんでパンを買って、空港へと向かい、ツアーは終了しました。

 

今回は鳥の種数も個体数も少なく、期待したオオチドリやクロウタドリには出会えませんでしたが、与那国島でも珍しいバライロムクドリやニシシベリアハクセキレイが見られたことは大収穫だったと思います。4日間、大変お疲れ様でした。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

渡り鳥の楽園・春の与那国島【前編】

Report by 簗川堅治 / 2022年3月23日~26日

 

飛行機は20分遅れで与那国島に到着しました。春の琉球らしく(?)ぐずついた天気の中、スタート。まずは、好調のムクドリ類を抑えに久部良集落へ。到着早々、強風の中、バライロムクドリ成鳥を見ることができました。与那国島でもなかなか成鳥は見られません。しかし、ちょっと見ただけで飛んでいき、周囲を探すも見つからず。小休止を兼ねて久部良ミトへ。すると今度はヤツガシラが飛び出し、全員で観察。アマサギやシロガシラも複数いました。

ヤツガシラ(撮影:簗川)
ヤツガシラ

続いて祖納へ。集落を歩き回るも、小雨が降ってきたので退散。インドハッカを見た程度でした。田んぼでは、複数のタカブシギ、コチドリ、アマサギなどを見て、比川へと向かいました。

比川ではセイタカシギやシラサギ類の群れなどを見て、久部良へ戻りました。

セイタカシギ(撮影:簗川)
セイタカシギ

雨も上がったので集落を歩いて、バライロムクドリを探しました。ほどなく、ムクドリの群れにいるバライロムクドリ、カラムクドリ、ギンムクドリを発見し、時間を掛けてじっくりと楽しみました。

ムクドリ類(撮影:浅井賢治様)
ムクドリ類(撮影:浅井賢治様)

バライロムクドリの分布の西端が、今、世界中で心配されているウクライナの南東部、一躍有名になったマリウポリ辺りです。ロシアの侵攻で逃げてきたのか?と冗談にならない思いが巡りました。

バライロムクドリ(撮影:浅井賢治様)
バライロムクドリ(撮影:浅井賢治様)

2日目。夜明け前に出発して、祖納へ向かう林道を走りました。独特の「ファッ、ファッ……ファッ、ファッ……」というオオクイナの声を聞くことができました。道路に降りていたヤマシギも何度か飛びました。ヒヨドリの亜種タイワンヒヨドリやメジロの亜種リュウキュウメジロが鳴き始め、騒がしくなってきたところで祖納到着です。

 

まずは田んぼを見ました。早速、ツバメチドリを発見。疲れていたのか、じっとしています。何とも言えない独特の顔。コチドリ、タカブシギもいました。ムネアカタヒバリ、ツメナガセキレイが飛んできました。

ツバメチドリ(撮影:浅井賢治様)
ツバメチドリ(撮影:浅井賢治様)

朝食後、久部良集落と久部良バリを回りました。久部良バリでムナグロの群れとツメナガセキレイを見て、集落ではムクドリの群れにバライロムクドリ、カラムクドリも発見。まだいてくれたようです。

ムナグロ(撮影:浅井賢治様)
ムナグロ(撮影:浅井賢治様)

また、やたら人馴れしているアカモズの亜種シマアカモズをじっくりと観察しました。

アカモズの亜種シマアカモズ(撮影:浅井賢治様)
アカモズの亜種シマアカモズ(撮影:浅井賢治様)

港でハクセキレイの亜種ホオジロハクセキレイ、そして亜種タイワンハクセキレイを見ていたら、いつの間にかヤツガシラがいました!大人気のヤツガシラ、みなさん、気分も高まります。しきりに地面をつついて採餌しています。ウグイスの亜種チョウセンウグイスはさえずりのみでしたが、聞くことができました。その後は久部良ミトへ移動し、アカガシラサギ夏羽も見ることができました。

アカガシラサギ(撮影:浅井賢治様)
アカガシラサギ(撮影:浅井賢治様)

祖納へ行く途中、水の張った田んぼでは、たくさんのセイタカシギ、タカブシギに混じって、ツルシギとオジロトウネンがいました。川の藪ではコムシクイの地鳴きが聞こえていました。

セイタカシギ(撮影:上山功夫様)
セイタカシギ(撮影:上山功夫様)

再び祖納です。オウチュウ情報があった場所でしばらく探しましたが、出会えず。タイワンハクセキレイ、ホオジロハクセキレイ、チョウゲンボウ、インドハッカなどで楽しみました。田んぼへ移動し、オジロトウネンを観察したあと、オウチュウ発見!全員で堪能することができました。お気に入りの場所からフライング・キャッチを繰り返して虫を捕っていました。

オウチュウ(撮影:上山功夫様)
オウチュウ(撮影:上山功夫様)

続いて東崎。マミジロタヒバリ、ムネアカタヒバリがいましたが、じっくり見る前に飛ばれてしまい、残念。比川に行く途中、ヤツガシラ情報の場所に行くものの、こちらは出会えず。

 

比川では、普段はあまりよく見られないシロハラクイナを見ることができました。森林公園で休憩し、最後は観光で日本最西端の西崎へ行き、この日を終えました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

春の奄美大島でバードウォッチング三昧

Report by 吉成才丈 / 2022年3月17日~20日

<1日目>

予定通りに空港で集合。ローカルコンビニで軽い昼食をとった後、空港近くの港や海辺を観察しました。港にはめぼしい鳥の姿はありませんでしたが、潮が引いた海岸ではサルハマシギやトウネン、ムナグロ、オオメダイチドリなどのシギ・チドリが観察されました。
その後は建物で繁殖中のルリカケスをチェックし、早めにホテルにチェックイン。
そう、この夜はナイトツアーが控えているので、夜の準備をする必要があったのです。

早めの夕食をとった後に再出発し、夜の林道を巡るツアーに参加しました。直前まで雨が降っていて心配しましたが、林道のナイトツアーは雨上がりが一番よいコンディションなんだそうです。出発早々、日本で一番美しいというアマミイシカワガエルやアマミハナサキガエルなどが出現し、幸先の良いスタートとなりました。

アマミハナサキガエル(撮影:藤塚裕美様)

そろそろ鳥も..と期待していると、林道脇にアマミヤマシギも登場してくれました。2羽で並ぶ姿も見られましたが、オス・メスの識別は難しそうでしたね。
そしてナイトツアーの主役といえば、やはりアマミノクロウサギですね。この日は成獣から幼獣まで、いろいろな個体に出会うことができました。また、道路沿いにある巣穴も教えてもらい、アマミノクロウサギの生態を垣間見ることができました。

アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)

アマミノクロウサギ(撮影:藤塚裕美様)

 

主役も登場して満足していると、多くの人にとっては嬉しくない、あの危険ないきものも登場しました。「水たまりは危ない..」と脅かされましたが、どうやら脅しではなく、本当に危ないと身をもって感じることができましたね。(ハブやヒメハブの画像は出さないでおきます)
めったにできない体験に興奮しながらホテルに戻りました。

 

<2日目>

この日は暗いうちに出発し、地元のガイドさんに案内されて金作原に向かいました。金作原は奄美大島の中でも亜熱帯植物の原生林が残る自然ゆたかなエリアで、まさに奄美大島を象徴するスポットなのです。あいにくの雨模様で鳥の姿は少なかったのですが、アカヒゲやオオトラツグミの鳴声も聞かれ、奄美大島の自然を肌で感じることができました。

午後は名瀬から南の方面に向かい、森や草地、水辺の鳥をチェックしながら移動。オーストンオオアカゲラのドラミングのほか、カラスバトやズアカアオバトの鳴声、ササゴイ、クロサギ、ミサゴなどの姿を確認しました。昨夜は遅く、今朝も早かったので、この日も早めにホテルに戻ってお休みいただきました。

<3日目>

昨日も暗いうちに出発したのですが、この日はもっと早い時間に出発して、未明から明け方の観察を行いました。夜の鳥のメインターゲットは、初日のナイトツアーでは後ろ姿しか見られなかったリュウキュウコノハズクです。林道に入るとあちこちから鳴き声が聞こえ、姿もバッチリ確認することができました。全長20cmくらいしかない小さなフクロウは、本当にかわいいですよね。
リュウキュウコノハズクは耳で探し、目ではアマミヤマシギを探しながら、ゆっくりゆっくりと車を走らせてもらうと、道路脇にアマミヤマシギも発見。

リュウキュウコノハズク(撮影:藤塚裕美様 )

アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)

そして夜明け頃にはオオトラツグミの声も聞くことができ、未明時の探鳥は充実していました。
ホテルでの朝食後には、また別のスポットを訪ねてみました。小学校のグランド(というより草も生えている庭)では、ムクドリやツグミに混じってギンムクドリが採餌してました。
グランド際のアマミシジュウカラを見ていると、校舎のすぐ近くから、牛のようなカラスバトの声が..。まさかと思って探してみると、カラスバトが飛んで木の中に入りました。角度を変えて木の中を探すと、かろうじて頭だけ見ることができました。
それにしても、海沿いの学校なのに、ギンムクドリやカラスバトがいる学校なんて、すばらしいですよね。ちなみに登校日ではなかったので、学校にはだれもいませんでした。

ギンムクドリ(撮影:藤塚裕美様)

カラスバト

そして、奄美の知人に紹介してもらった場所に行ってみると、聞いていたとおりにルリカケスが近くで出迎えてくれました。ここは斜面上部に建物があるため、目線や眼下にルリカケスを見ることができるんですね。

ルリカケス(撮影:藤塚裕美様)

また道路際の斜面では、今回は姿はあきらめかけていたアカヒゲのオスが出現。ルリカケスに続いて大興奮でした。
午後は耕作地に立ち寄ると、予想していなかった暗色のサシバがいきなり出迎えてくれました。すぐに飛び立つと一気に移動し、その後は見つからなかったため、そのまま渡って行ったのかもしれません。とてもラッキーでした!

アカヒゲ(撮影:藤塚裕美様)

サシバ(暗色型)

<4日目>

最終日の朝は、ホテルの敷地でのんびり観察しました。近くで繁殖するルリカケスは定期的に現れ、駐車場のごみ箱などにもとまったりします。見ることすら大変だった過去があるとは思えない光景でした。

チェックアウト後には近くにクロサギでもいないか..と、海辺を流してもらいました。すると、岩にとまっているウミウを発見。しかしよく見ると、同じ岩にクロサギが座っていました。そう、陸から離れた海面に突き出した岩で抱卵していたのです。陸地からは適度な距離があったため、ちょっと観察させてもらいました。

 

クロサギ黒色型(撮影:藤塚裕美様)

また、もう少し進んだ海岸では、クロサギの白いタイプも発見。白いクロサギなんて紛らわしいですが、奄美大島には両方のタイプがいます。目の前を何度か飛んでくれたため、皆さん写真もバッチリ撮れたようです。

クロサギ白色型(撮影:藤塚裕美様)

そして空港近くの耕作地でサシバやシロハラクイナなどを観察し、ランチタイムには奄美パークで自由行動としました。銘々が田中一村の美術館を見たり敷地内で探鳥したりして楽しみ、奄美空港で解散しました。

今年はどこも冬鳥が少なく、奄美大島も例外ではありませんでしたが、いろいろな鳥たちに出会うことができ、ぐ~っと濃縮された4日間でした。

(観察種数60種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。