夏の小笠原でゆったり探鳥入門

Report by 吉成才丈 / 2022年9月2日~7日

 

<1日目>
竹芝桟橋を出港したおがさわら丸が横須賀沖にさしかかると、オオミズナギドリが増えはじめました。そして外洋にでるとアナドリも出始め、本格的に海鳥観察をスタートしました。

おがさわら丸デッキでの観察
おがさわら丸デッキでの観察

初日はオオミズナギドリが中心で、アナドリやシロハラトウゾクカモメ、アカアシカツオドリなども出現しましたが、遠い個体が多かったため、じっくり見られたのはオオミズナギドリだけだったかと思います。海鳥を覚えるには、まずオオミズナギドリをじっくり見ることが大事です。

2日目は、オオミズナギドリがほぼ見られなくなる替わりにオナガミズナギドリが出てきますので、初日は基本種をばっちりご覧いただきました。

オオミズナギドリ
オオミズナギドリ

 

<2日目>
日の出の少し前にデッキの扉が開き、薄暗い時間帯から観察を開始しました。まだ暗く、撮影できない時間帯にアオツラカツオドリが出現。

夜明け
夜明け

その後はオナガミズナギドリやアナドリ、カツオドリに交じり、オガサワラミズナギドリやオガサワラヒメミズナギドリ、ハグシロハラミズナギドリなども出現しましたが、肉眼で識別できる距離ではなく、写真判定でようやくわかる程度でした。

オガサワラミズナギドリ
オガサワラミズナギドリ

父島に着くと、ははじま丸に乗り継ぎ、海鳥観察を再スタートしました。ははじま丸はおがさわら丸より小さいため海鳥までの距離も近く、双眼鏡で識別できる距離でオナガミズナギドリやアナドリを観察。

オナガミズナギドリ
オナガミズナギドリ

ちょっとレアなクビワオオシロハラミズナギドリも観察し、母島が近づくと、恒例のカツオドリ祭りが始まりました。

クビワオオシロハラミズナギドリ
クビワオオシロハラミズナギドリ

カツオドリは、船に驚いて海面近くに出てきたトビウオを狙って船と並走するのですが、冗談ではなく、本当に触れそうな近さまで接近してくれます。そして、トビウオを見つけたカツオドリは降下して海面に飛び込むのですが、いつ訪れるかわからないシャッターチャンスを待ち、皆さんは並走するカツオドリをファインダーで追い続けました。

トビウオを探すカツオドリ
トビウオを探すカツオドリ
トビウオを狙ったカツオドリ
トビウオを狙ったカツオドリ

母島の港に着くと、迎えに来ていたそれぞれの宿にチェックイン。一息ついたのちに専用車に迎えに来てもらい、この日は港周辺のポイントを軽く巡り、ハハジマメグロやメジロなどを観察しました。ハハジマメグロは集落にもいますが、鳴声がわかると比較的簡単に探せます。

世界で母島周辺にのみ生息するハハジマメグロ (森久美子様 撮影)
世界で母島周辺にのみ生息するハハジマメグロ(森久美子様 撮影)
ゲットウの花に来たメジロ(森久美子様 撮影)
ゲットウの花に来たメジロ(森久美子様 撮影)

<3日目>
まずは日の出頃に出発し、朝食前の朝探で畑周辺をチェックしました。狙いは、早朝の時間帯に出会うことが多いオガサワラカワラヒワとアカガシラカラスバトでしたが、カワラヒワは声のみ、カラスバトは飛翔が見られたのはお1人だけでした。朝食後には、母島の自然や植物のレクチャーを受けながら北港方面に移動。午後は沢沿いやダム周辺を探鳥し、渡ってきていたオオバンなども観察しました。そしてグランドでは、ヤツガシラを発見。母島でヤツガシラに出会うとは思いませんでしたが、この鳥は何度であっても興奮しますね。

ヤツガシラ(森久美子様 撮影)
ヤツガシラ(森久美子様 撮影)
ヤツガシラ(森久美子様 撮影)
ヤツガシラ(森久美子様 撮影)

しかし、それ以上に興奮したのがオガサワラノスリとの出会いでした。いつもなら簡単に、それも比較的近い距離で出会えるのですが、今回は遠くを飛翔する1羽が確認されただけでした。ところが、オガサワラノスリとの出会いを熱望されていた方が、電柱にとまる個体を発見。慎重に近づいてもらうと、予想外の至近距離で観察することができました。

オガサワラノスリ
オガサワラノスリ

<4日目>
今日は午後の便で父島に戻る予定でしたが、まさかのははじま丸欠航が決まり、母島にもう1日滞在することになりました。早朝は昨日に続き、オガサワラカワラヒワとアカガシラカラスバトを狙いました。カワラヒワは気配もありませんでしたが、参加者のお1人が、林内でカラスバトらしき鳥2羽を目撃。慎重に林内をのぞき込むと、アカガシラカラスバト2羽が樹上にとまっていました。朝の林内なので薄暗かったのですが、比較的見やすい父島での鳥見ができない今回は、これが唯一のチャンスになる可能性が高かったため、頑張って撮影頂きました。

アカガシラカラスバト
アカガシラカラスバト

朝食後には南崎の林内やグランドを、昼食後には畑や港などを訪ね、ゆっくり島内を巡りました。

ハハジマメグロ(森久美子様 撮影)
ハハジマメグロ(森久美子様 撮影)

<5日目>
今日はおがさわら丸の出航日でしたが、ははじま丸は予定通り、昼12時の出航が決まりひと安心..。早朝は最後のカワラヒワ狙いで出かけましたが、やはり出会うことができませんでした。朝食後のわずかな時間はハハジマメグロやヤツガシラを堪能しましたが、最後の最後で、なかなか姿を見せなかったハシナガウグイスが姿を見せてくれました。何度か丸見えになる状態ででてきたので、皆さんもバッチリ撮影できたと思います。

ハシナガウグイス(森久美子様 撮影)
ハシナガウグイス(森久美子様 撮影)

ははじま丸では、往きと同じくアナドリやオナガミズナギドリなどが近くを飛びましたが、きれいなアカアシカツオドリも船と並走してくれました。

アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ

父島到着後はおがさわら丸に乗り込み、小笠原海域での最後の海鳥観察に臨みました。恒例のお見送り後には、オナガミズナギドリやアナドリ、クロアジサシなども姿を見せて見送ってくれました。

恒例のお見送り
恒例のお見送り

<6日目>
最終日も日の出の少し前にデッキが解放され、薄暗いうちからスタンバイしました。明るくなると、遠くに青ヶ島が見えてきました。

クビワオオシロハラミズナギドリやカワリシロハラミズナギドリなども遠くに飛ぶなか、オオミズナギドリの数が徐々に増えてきました。オナガミズナギドリがオオミズナギドリに変わることで帰ってきたことを実感していると、アカアシカツオドリの集団が近づいてきました。白い個体や暗色タイプの成鳥、若鳥など、いろいろなタイプの個体が入り混じっており、合計で8羽くらいいたようです。ここまで様々な個体が入り混じる群れに出会ったことはなく、興味深い出会いでした。

アカアシカツオドリの集団
アカアシカツオドリの集団

船の北上に伴い、八丈島や御蔵島、三宅島、大島が見えてきました。大島沖を過ぎるころには浮上した潜水艦が目の前を横切り、東京湾に入るころに一旦、ご挨拶をして解散しました。観光客の多くは母島を訪ねることはありませんが、逆に言えば、母島はたくさんの自然で溢れており、固有種のハハジマメグロやオガサワラカワラヒワなどの希少な種が生息しています。

 

今回は、想定外のははじま丸欠航で母島に3泊することになりましたが、母島を隅々まで巡ることができ、貴重な体験ができたと思います。

 

(観察種数45種)

 

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

夏の富士山・奥庭の野鳥と大磯海岸でのアオバト観察

Report by 吉成才丈 / 2022年8月22日~24日

<1日目>

途中から乗車する方を除き、新宿のバスターミナルに集合。ここから乗り換えなしで、標高約2,300mの富士山五合目まで行かれるのは本当に便利です。

予定より少し遅れて奥庭荘に着き、先着組に様子を聞くと、「この日の午前中はウソが1回出ただけ..」という不安な返答。

奥庭荘の水場
奥庭荘の水場

たしかに、昼食を済ませてじっと待っても、小鳥たちは出てきてくれません。

雨が多いことも影響しているのだろうと思ってさらに待つと、夕方になってようやく、ルリビタキやウソ、キクイタダキなどが出てきてくれました。
頂いた写真はどれもどアップですが、被写体までの近さが感じられますよね。

ルリビタキ(冨安市子様撮影)
ルリビタキ(冨安市子様撮影)
ウソ(冨安市子様撮影)
ウソ(冨安市子様撮影)

奥庭荘は山小屋なので夜間の消灯も早いのですが、早めの夕食後には、ガスの中で赤く染まる富士山も見られました。

ちなみに、奥庭荘の夕食は山小屋にしては豪華でウナギもついており、皆さん驚かれていました。

夕方の富士山山頂付近
夕方の富士山山頂付近

<2日目>

昨夜は時折強い雨が降ったものの、未明には雲がない時間帯もあったようで、素晴らしい星空の写真を撮られていた方がいて驚かされました。

夜明けの富士山の風景も美しく、これだけでも来る価値があると思います。

夜明けの富士山
夜明けの富士山

昨日は水場への飛来が少なくハラハラしましたが、この日は朝からルリビタキやウソ、メボソムシクイ、ヒガラなどがコンスタントに出てくれました。

メボソムシクイ(冨安市子様撮影)
メボソムシクイ(冨安市子様撮影)

光線状態もよく、シャッターチャンスも多かったと思いますが、平地では見慣れないウソの幼鳥はかわいかったですね。

ウソの幼鳥
ウソの幼鳥

そして、水場には降りてきませんでしたが、ホシガラスは近くのカラマツなどにとまってくれました。

ホシガラス(冨安市子様撮影)
ホシガラス(冨安市子様撮影)

奥庭荘の水場はすぐ目の前にあり、最短のポジションだと10mを切るほどの近さなので、観察は双眼鏡でも十分楽しめ、撮影は大砲レンズでなくても大丈夫です。

また奥庭荘の良さは、自分のペースで鳥見や撮影が楽しめる点にもあり、近くの散策路で景色や植物を見ながら鳥を探したり、奥庭荘で頼めるコーヒーを飲みながら座敷で鳥を見ることもできます。

なかには2階の室内から窓を開けて見下ろす方もおり、銘々に亜高山の鳥を楽しんでいただきました。

翌日のアオバト観察に備え、昼食後には大磯方面へ移動しました。

<3日目>

大磯・照ヶ崎海岸のアオバトは早朝からの飛来が多いため早めに現着したものの、すでに10名以上のカメラマンがスタンバイしていました。

アオバトは数羽から30羽ほどの群れがコンスタントに飛来し、磯におりては海水を飲む行動が観察されました。

アオバトの群れ
アオバトの群れ
アオバト
アオバト
海水を飲みに降りたアオバト
海水を飲みに降りたアオバト

しかし、この日はハヤブサ幼鳥が頻繁にアオバトを狙って群れに突っ込み、アオバトも落ち着いて海水を飲んでいられませんでした。

ハヤブサは若く、狩りも未熟なため、なかなかアオバトを捕らえることができません。おかげで(?)、緊迫の狩りの様子を何度も見ることができました。

やっとアオバトを捕らえたと思ったら、その後、海上に獲物を落としてしまいました…

獲物を捕らえたハヤブサ
獲物を捕らえたハヤブサ

アオバト以外にもクロサギやカワセミが出たり、ミサゴが海に飛び込んだりで、あっという間に時間が過ぎていきました。

トビ(冨安市子様撮影)
トビ(冨安市子様撮影)
ミサゴ
ミサゴ
クロサギ(冨安市子様撮影)
クロサギ(冨安市子様撮影)

暑さもあり、アオバトの飛来も少なくなるので早めに切り上げて解散しましたが、皆さん、チェックアウトしていなかった部屋に戻り、シャワーを浴びてお帰りになられたと思います。

大磯のアオバトは早朝の時間帯がよいので奥庭荘と組み合わせてみましたが、環境にも鳥にも変化があり、バラエティに富んだ鳥見ができたと思います。

また、ほぼ歩かずに自分のペースで楽しめるので、のんびり楽しみたい方には最適だと感じました。

(観察種数29種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

春の奄美大島でバードウォッチング三昧

Report by 吉成才丈 / 2022年3月17日~20日

<1日目>

予定通りに空港で集合。ローカルコンビニで軽い昼食をとった後、空港近くの港や海辺を観察しました。港にはめぼしい鳥の姿はありませんでしたが、潮が引いた海岸ではサルハマシギやトウネン、ムナグロ、オオメダイチドリなどのシギ・チドリが観察されました。
その後は建物で繁殖中のルリカケスをチェックし、早めにホテルにチェックイン。
そう、この夜はナイトツアーが控えているので、夜の準備をする必要があったのです。

早めの夕食をとった後に再出発し、夜の林道を巡るツアーに参加しました。直前まで雨が降っていて心配しましたが、林道のナイトツアーは雨上がりが一番よいコンディションなんだそうです。出発早々、日本で一番美しいというアマミイシカワガエルやアマミハナサキガエルなどが出現し、幸先の良いスタートとなりました。

アマミハナサキガエル(撮影:藤塚裕美様)

そろそろ鳥も..と期待していると、林道脇にアマミヤマシギも登場してくれました。2羽で並ぶ姿も見られましたが、オス・メスの識別は難しそうでしたね。
そしてナイトツアーの主役といえば、やはりアマミノクロウサギですね。この日は成獣から幼獣まで、いろいろな個体に出会うことができました。また、道路沿いにある巣穴も教えてもらい、アマミノクロウサギの生態を垣間見ることができました。

アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)
アマミノクロウサギ(撮影:藤塚裕美様)

 

主役も登場して満足していると、多くの人にとっては嬉しくない、あの危険ないきものも登場しました。「水たまりは危ない..」と脅かされましたが、どうやら脅しではなく、本当に危ないと身をもって感じることができましたね。(ハブやヒメハブの画像は出さないでおきます)
めったにできない体験に興奮しながらホテルに戻りました。

 

<2日目>

この日は暗いうちに出発し、地元のガイドさんに案内されて金作原に向かいました。金作原は奄美大島の中でも亜熱帯植物の原生林が残る自然ゆたかなエリアで、まさに奄美大島を象徴するスポットなのです。あいにくの雨模様で鳥の姿は少なかったのですが、アカヒゲやオオトラツグミの鳴声も聞かれ、奄美大島の自然を肌で感じることができました。

午後は名瀬から南の方面に向かい、森や草地、水辺の鳥をチェックしながら移動。オーストンオオアカゲラのドラミングのほか、カラスバトやズアカアオバトの鳴声、ササゴイ、クロサギ、ミサゴなどの姿を確認しました。昨夜は遅く、今朝も早かったので、この日も早めにホテルに戻ってお休みいただきました。

<3日目>

昨日も暗いうちに出発したのですが、この日はもっと早い時間に出発して、未明から明け方の観察を行いました。夜の鳥のメインターゲットは、初日のナイトツアーでは後ろ姿しか見られなかったリュウキュウコノハズクです。林道に入るとあちこちから鳴き声が聞こえ、姿もバッチリ確認することができました。全長20cmくらいしかない小さなフクロウは、本当にかわいいですよね。
リュウキュウコノハズクは耳で探し、目ではアマミヤマシギを探しながら、ゆっくりゆっくりと車を走らせてもらうと、道路脇にアマミヤマシギも発見。

リュウキュウコノハズク(撮影:藤塚裕美様 )
アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)

そして夜明け頃にはオオトラツグミの声も聞くことができ、未明時の探鳥は充実していました。
ホテルでの朝食後には、また別のスポットを訪ねてみました。小学校のグランド(というより草も生えている庭)では、ムクドリやツグミに混じってギンムクドリが採餌してました。
グランド際のアマミシジュウカラを見ていると、校舎のすぐ近くから、牛のようなカラスバトの声が..。まさかと思って探してみると、カラスバトが飛んで木の中に入りました。角度を変えて木の中を探すと、かろうじて頭だけ見ることができました。
それにしても、海沿いの学校なのに、ギンムクドリやカラスバトがいる学校なんて、すばらしいですよね。ちなみに登校日ではなかったので、学校にはだれもいませんでした。

ギンムクドリ(撮影:藤塚裕美様)
カラスバト

そして、奄美の知人に紹介してもらった場所に行ってみると、聞いていたとおりにルリカケスが近くで出迎えてくれました。ここは斜面上部に建物があるため、目線や眼下にルリカケスを見ることができるんですね。

ルリカケス(撮影:藤塚裕美様)

また道路際の斜面では、今回は姿はあきらめかけていたアカヒゲのオスが出現。ルリカケスに続いて大興奮でした。
午後は耕作地に立ち寄ると、予想していなかった暗色のサシバがいきなり出迎えてくれました。すぐに飛び立つと一気に移動し、その後は見つからなかったため、そのまま渡って行ったのかもしれません。とてもラッキーでした!

アカヒゲ(撮影:藤塚裕美様)
サシバ(暗色型)

<4日目>

最終日の朝は、ホテルの敷地でのんびり観察しました。近くで繁殖するルリカケスは定期的に現れ、駐車場のごみ箱などにもとまったりします。見ることすら大変だった過去があるとは思えない光景でした。

チェックアウト後には近くにクロサギでもいないか..と、海辺を流してもらいました。すると、岩にとまっているウミウを発見。しかしよく見ると、同じ岩にクロサギが座っていました。そう、陸から離れた海面に突き出した岩で抱卵していたのです。陸地からは適度な距離があったため、ちょっと観察させてもらいました。

 

クロサギ黒色型(撮影:藤塚裕美様)

また、もう少し進んだ海岸では、クロサギの白いタイプも発見。白いクロサギなんて紛らわしいですが、奄美大島には両方のタイプがいます。目の前を何度か飛んでくれたため、皆さん写真もバッチリ撮れたようです。

クロサギ白色型(撮影:藤塚裕美様)

そして空港近くの耕作地でサシバやシロハラクイナなどを観察し、ランチタイムには奄美パークで自由行動としました。銘々が田中一村の美術館を見たり敷地内で探鳥したりして楽しみ、奄美空港で解散しました。

今年はどこも冬鳥が少なく、奄美大島も例外ではありませんでしたが、いろいろな鳥たちに出会うことができ、ぐ~っと濃縮された4日間でした。

(観察種数60種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

冬の道東でバードウォッチング三昧!【後編】

Report by 吉成才丈 / 2022年2月8日~13日

 

4日目
この日の朝は、風連湖の凍結した湖面でのワシ撮影からスタートです。うす暗いうちから周辺にスタンバイするワシの姿がありましたが、給餌の時間が迫ると飛来する個体も増えてきました。そして待望のお食事タイムが到来すると、ワシの乱舞が始まりました! ワシが飛翔するたびに、皆さんの夢中でシャッターを切っていたようです。

オジロワシとオオワシ
オジロワシとオオワシ(大野一郎様 撮影)
オジロワシとオオワシ(大野一郎様 撮影)
オジロワシとオオワシ(大野一郎様 撮影)
オジロワシとオオワシ(大野一郎様 撮影)
オジロワシとオオワシ(大野一郎様 撮影)

迫力あるワシを堪能した後は、森に入って小鳥を狙いました。すると、前日までは1時間に1度しか飛来しなかったというシマエナガが、なんと出ずっぱり! 写真もバッチリお撮り頂けました。参加者の皆さん、もってますね!

シマエナガ(大野一郎様 撮影)
シマエナガ(大野一郎様 撮影)
シマエナガ(森久美子様 撮影)
シマエナガ(森久美子様 撮影)
シマエナガ(奥田恵子様 撮影)
シマエナガ(奥田恵子様 撮影)
シマエナガ(奥田恵子様 撮影)
シマエナガ(奥田恵子様 撮影)

午後は周辺の港をめぐり、美しいカモたちを狙いました。今年は冬鳥が少なく、道東のカモたちも例外ではありませんでしたが、コオリガモやクロガモなどもゲットできました。

コオリガモ(森久美子様 撮影)
コオリガモ(森久美子様 撮影)
クロガモ(大野一郎様 撮影)
クロガモ(大野一郎様 撮影)

5日目
この日は落石ネイチャークルーズの午前便に乗船。幸いにも海は穏やかで、ウミバトやケイマフリなどの海鳥を堪能することができました。やはり、海鳥は船に乗ると近くで観察できますね。

ウミバト(大野一郎様 撮影)
ウミバト(大野一郎様 撮影)
ケイマフリ(大野一郎様 撮影)
ケイマフリ(大野一郎様 撮影)
シノリガモ(大野一郎様 撮影)
シノリガモ(大野一郎様 撮影)

そして愛くるしいラッコも登場。お約束のポーズで貝を割る仕草のほかに、子供を抱いた個体も見られました。

ラッコ(森久美子様 撮影)
ラッコ(森久美子様 撮影)

午後は羅臼までロングドライブし、夕食後にシマフクロウにトライ。最近は朝方に出るということで、残念ながらこの日は、早い時間帯には出でくれませんでした。明日は日の出前からワシのクルーズなので、早めに切り上げました。

6日目
いよいよ最終日です。今朝は早起きして真っ暗な内に宿を出て、羅臼港へ向かいました。流氷ウォッチングのクルーズ船に乗り込み、流氷に向けて出港。流氷の近くに船を停めて夜明けを待ち、美しい朝焼けとワシを堪能しました。この美しい景色と迫力満点のワシを見たら、寒さも忘れてしまいますよね。

オオワシとオジロワシ(大野一郎様 撮影)
オオワシとオジロワシ(大野一郎様 撮影)
オオワシとオジロワシ(大野一郎様 撮影)
オオワシとオジロワシ(大野一郎様 撮影)
オオワシとオジロワシ(大野一郎様 撮影)
オオワシとオジロワシ(大野一郎様 撮影)
オオワシとオジロワシ(大野一郎様 撮影)
オオワシとオジロワシ(大野一郎様 撮影)

そして、この旅の最後に訪れたのが野付半島です。野付半島ではユキホオジロが時折観察されているのは知っていましたが、今回は滞在時間も短いため、正直なところ見られるとは思いませんでした。でも、残り時間が15分もない頃、偶然に偶然が重なって見られちゃったんです。じっくり観察や撮影ができずに残念でしたが、我々を見送るように、すぐに遠くへ飛んで行ってしまいました。

今回は鳥見に特化したコースを設定してもらったため、かなり効率的に見られたと思います。

ユキホオジロ(大野一郎様 撮影)
ユキホオジロ(大野一郎様 撮影)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

冬の道東でバードウォッチング三昧!【前編】

Report by 吉成才丈 / 2022年2月8日~13日

 

厳冬期の道東に行ってきました。
冬鳥が少ない傾向は北海道でも例外ではありませんでしたが、たくさんの成果がありましたので、参加者の皆さんから寄せられた写真をもとに結果をレポートします。

 

1日目
釧路空港で集合後、小林牧場でタンチョウを観察。雪原には50羽以上のタンチョウがおり、幼鳥を交えた家族群れの姿もある一方、つがいが幼鳥を追い払いような行動もみられました。

タンチョウ
タンチョウ(大野一郎様 撮影)
タンチョウ
タンチョウ(大野一郎様 撮影)

そして夕暮れが近づくと、数羽から十数羽単位でねぐらに向かいはじめます。夕焼けのタンチョウは、とてもきれいでしたね。

タンチョウ
タンチョウ(大野一郎様 撮影)
タンチョウ
タンチョウ(奥田恵子様 撮影)

 

2日目
この日は日の出前後のツルのねぐらを観察するため、かなり早い時間に出発。現地では暗いうちにスタンバイして夜明けを待ちましたが、気温はマイナス18度と程よい寒さ..。少しずつ明るくなると、はるか先にツルの集団が見えてきました。毛嵐のなかにたたずむツルたちを、刻々と変わる光線状況で堪能できました。

タンチョウ
タンチョウ(大野一郎様 撮影)

そして午前は、2箇所のフクロウポイントを訪ねました。幸いにも両方とも在宅で、異なるシチュエーションで休息するフクロウが観察できました。フクロウは何度見てもいいですよね。

エゾフクロウ
エゾフクロウ(大野一郎様 撮影)
エゾフクロウ
エゾフクロウ(大野一郎様 撮影)

午後は火散布で、おもにカモを狙ってみました。ホオジロガモはディスプレイを行っており、ユーモラスな仕草が楽しめました。

ホオジロガモ
ホオジロガモ(森久美子様 撮影)

ウミアイサも結構近くで観察でき、虹彩の色までバッチリ確認されました。冬の北海道のカモは美しい種が多く、どれも見逃せませんね。

ホオジロガモ
ホオジロガモ(森久美子様 撮影)

水に入るタンチョウの姿も見られましたが、雪原にいるよりも寒そうに感じられました。

タンチョウ
タンチョウ(大野一郎様 撮影)

3日目
この日も朝は、火散布を訪ねました。見られた鳥自体は昨日と変わりませんが、陸で休むホオジロガモを発見。あまり見ない光景ですね。

ホオジロガモ
ホオジロガモ(大野一郎様 撮影)

岸辺では、オオハクチョウとエゾシカの姿も見られました。北海道らしい光景ですね。

オオハクチョウ
オオハクチョウ(大野一郎様 撮影)

火散布のあとには霧多布を訪ね、電線にとまっていたケアシノスリをゲット。獲物を狙ってとまり位置を変えたり、狩りを試みる様子も観察できました。また海上では、ラッコの姿も確認できました。

ケアシノスリ
ケアシノスリ(大野一郎様 撮影)
ケアシノスリ
ケアシノスリ(大野一郎様 撮影)

午後には一気に根室半島先端に移動し、温根元や納沙布岬で海鳥を観察。遠くて写真は難しかったですが、ケイマフリやウミバト、アカエリカイツブリなどが見られました。

温根元のハイド
温根元のハイド
美しい夕焼け
美しい夕焼け

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

有明海から日本最大のツルの渡来地・出水へ

Report by 吉成才丈 / 2022年1月16日~20日

1日目:福岡空港~佐賀~東よか干潟

集合地の福岡空港の外は雨…。
でも皆さんが集合して出発するころには晴れ間も見えはじめ、幸先良いスタートとなりました。
まずは佐賀市内のため池から探鳥をスタートすると、トモエガモやカワセミ、ジョウビタキなどが出現。その後は東与賀干潟に向かいましたが、干潟の直前でカササギに遭遇。佐賀では目撃する機会が減っているカササギだけに、じっくり撮影もして頂きました。

カササギ
カササギ

そして東与賀干潟では、潮が引いている時の干潟を見て頂きました。干潟というと、潮が引いている時に鳥を見る印象があるかもしれませんが、水際の汀線がどこにあるか分からいほど広大な干潟が広がっており、シギ・チドリ類やヘラサギ類ははるか彼方…。実はこの周辺は満潮時と干潮時の干満差がとても大きく、最大で6mにもなる日があるのです。この日は下見を兼ねて干潮時の様子をみて頂き、明日の満潮時の状況を想像して頂きました。

東与賀干潟
東与賀干潟

2日目:佐賀~東よか干潟~諫早干拓地~諫早

さあ、今日は東与賀干潟観察の本番です。満潮間近の干潟に着くと、昨日とは打って変わって鳥が近くにいます。この冬は12羽も飛来しているソリハシセイタカシギ、2000羽を超えるツクシガモなどをご覧頂き、ヘラシギやクロツラヘラサギ、ズグロカモメ、ダイシャクシギ、ツルシギなどを1種ずつ確認していきました。

ソリハシセイタカシギ(森久美子様撮影)
ソリハシセイタカシギ(森久美子様撮影)
ヘラサギ(森久美子様撮影)
ヘラサギ(森久美子様撮影)
ツルシギ(森久美子様撮影)
ツルシギ(森久美子様撮影)

すると、いきなりシギ・チドリの大きな群れが、ひとつの生き物のようにうねりながら飛翔しはじめました。その群れはいくつもあり、個体が反転するたびに暗色(背面)と白(腹面)の塊に色が切り替わる様子が観察できました。これだけの数のシギ・チドリが見られる干潟は少なく、日本一とも呼ばれる東与賀干潟の野鳥を堪能できました。

シギ・チドリの群れの飛翔
シギ・チドリの群れの飛翔

この日の午後には諫早の干拓地に移動し、まずはリクエストの多かったタゲリをじっくり撮影して頂きました。耕作地ではホオアカなどもご覧頂き、ヨシ原ではハイイロチュウヒやチュウヒ、コチョウゲンボウなどを狙いました。ハイイロチュウヒのオスは個体数も少なくワンチャンスでしたが、メスタイプは個体数も多く、皆さんもかなり撮影できたと思います。

ハイイロチュウヒのオス(森久美子様撮影)
ハイイロチュウヒのオス(森久美子様撮影)
ハイイロチュウヒのメスタイプ(森久美子様撮影)
ハイイロチュウヒのメスタイプ(森久美子様撮影)
チュウヒ(森久美子様撮影)
チュウヒ(森久美子様撮影)

3日目:諫早~諫早干拓地~熊本~出水

この日の朝には再び干拓地を訪れ、島原発昼頃のフェリーで熊本に渡りました。この航路はたった1時間なのですが、鳥の観察もおもしろいのです。フェリーにはユリカモメやウミネコがついてきますので、雲仙と一緒にスマホでもパチリ!

ユリカモメと雲仙岳
ユリカモメと雲仙岳

海上ではカツオドリも飛翔していますが、岸近くの堤防にはたくさんのカツオドリが休んでいました。その数なんと、200羽以上!

カツオドリ
カツオドリ

そして夕方には、いよいよツルの待つ出水に到着です。今期のツルは5種の飛来が確認されていますが、個体数の少ないツルは1種でも今日中に見ておきたいところです。するとまず、道路のすぐ近くにカナダヅルを発見。皆さん初めての出会いなので真剣に撮影していましたが、ふと目線を遠くにやるとクロヅルも発見。ちょっと写真には遠すぎましたが、車の進行方向に視線を戻すと、9年ぶりに飛来したというソデグロヅルまで見つかってしまいました。カナダヅルやクロヅルは一桁、ソデグロヅルに至ってはたったの1羽しか飛来していないため、ほっと一安心です。ちなみに、個体数のもっとも多いナベヅルは10,000羽以上、マナヅルは1,000羽以上が飛来しているようです。

カナダヅル(森久美子様撮影)
カナダヅル(森久美子様撮影)
ソデグロヅル(森久美子様撮影)
ソデグロヅル(森久美子様撮影)

4日目:出水(出水干拓地)

この日の朝は快晴。運よく月も出ており、まずは月とツルを撮影できました。

月とツル
月とツル

一方、快晴なので朝焼けは短かったですが、朝焼けをバックにツルも少し飛んでくれました。

朝日とツル
朝日とツル

午前中はツルの撮影や周辺の湿地を観察し、午後は少し山の方に遠征してみました。山ではオシドリやシロハラ、カケスなどが観察できました。
夕方には再び出水の干拓地に戻り、ムクドリの仲間やニュウナイスズメなどを求めて周辺を散策しました。ニュウナイスズメは日中は姿が見えないのに、夕方には300羽ほどが集団で観察されました。

カラムクドリ
カラムクドリ
ニュウナイスズメ
ニュウナイスズメ
コクマルガラス
コクマルガラス

5日目:出水~熊本空港

朝は晴れましたが雲も多く、朝焼けの状況は毎日異なりますね。この日は朝の飛翔を見た後にホテルに戻り、朝食後にチェックアウト。わずかな残り時間をツルを見て過ごし、帰路につきました。

撮影をされた方はツルをはじめ、たくさんの種が撮れたと思います。冬の九州は、東与賀でも出水でも10,000羽を超える野鳥が観察できるので、初心者にも最適な探鳥地だと思います。今回は天候にも恵まれ、5日間で102種を記録することができました。冬の九州は楽しいですね!
(観察種数102種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

奥日光で冬鳥観察&会津でヤマセミ撮影にもチャレンジ!

Report by 吉成才丈 / 2021年11月9日~12日

 

初日の11/9は宇都宮駅に集合し、まずは奥日光へ向かいました。現地では、あいにくの雨予報で時折強く雨が降るという悪条件のもと、湯の湖畔や湯滝下、赤沼周辺で探鳥。この日はカワガラスやコガラ、ヒガラなどを観察し、ちょっと早めにチェックインしました。

カワガラス(上山功夫さま撮影)

2日目は天候も回復し、まずは湯滝周辺の川や小さな沢でアオシギ探し。カワガラスやミソサザイが出現するも、アオシギには出会えませんでした。でも散策路の終点近くで、コガラやゴジュウカラ、エナガ、コゲラなどの混群に遭遇。それぞれの種を楽しみながら、木の幹をらせん状に上るキバシリを探すと、運よく2羽を観察することができました。キバシリは。まるでネズミみたいですね。

湯滝
キバシリ(上山功夫さま撮影)

赤沼の木道ではマヒワも観察できましたが、今年の奥日光はズミやナナカマドの実がすくなく、結局、ツグミやウソ、アトリなどには出会えませんでした。

奥日光は湿地も樹林もすばらしく、雄大な景色をみているだけで癒されますので、いろいろな季節に訪ねてみたいですね。この日の午後には会津に移動し、翌日のヤマセミに備えて、早めにお休みいただきました。

戦場ヶ原

さあ3日目は、いよいよこのツアーのハイライト、ヤマセミの観察&撮影にチャレンジです。暗いうちにブラインドに入って静かに待つと、まずは6:15頃に1回目の飛来があり、以降も何度か、とまりや飛翔がありました。距離も近いので興奮しましたが、皆さん、オス・メス2羽のとまり写真もバッチリ撮れたようです。

ヤマセミのオス・メス(上山功夫さま撮影)

そして4日目も、昨日と同様にヤマセミの観察&撮影にチャレンジしました。皆さん、昨日でかなり満足されようですが、まだまだ撮影できるシチュエーションがあります。そう、この日は飛翔やハンティングのシーンも意識して狙って頂きました。この日はヤマセミの動きもよく、予想していた以上の成果があり、皆さんの撮られた写真に驚かされました! 論より証拠、参加された方々の写真をご覧ください。

 

ヤマセミのホバリング(奥田恵子さま撮影)
ハンティング後のヤマセミ(奥田恵子さま撮影)
ハンティング後のヤマセミ(上山功夫さま撮影)

一部しか紹介できませんでしたが、皆さんの写真はいかがでしたか?
本当に、すごいですよね!

 

ここでは、カメラや写真、ヤマセミに精通した地元のヤマセミガイドさんが撮影方法を指導してくれるので、皆さん自身が予想していた以上に撮れちゃうんです。背景もきれいでしょ!

バーダー憧れのヤマセミのいろいろな行動を見ることができ、また撮影まで上手くいき、ヤマセミ主体のツアーは大成功でした。来年は幼鳥が巣立った後の夏、そして紅葉もきれいな今回と同じ時期に計画してみたいですね。

 

(確認種59種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

秋の烏帽子岳と五島福江で
アカハラダカとハチクマの渡りを観る

Report by 吉成才丈 / 2021年9月16日~20日

バーダーにとって、タカの渡り観察は秋の一大イベントですが、九州西部の渡りは特別ですよね。朝鮮半島を南下してくるアカハラダカに続いてハチクマの渡りピークがくるのですが、今回のツアーはその両方を楽しむ目的で、期日を中間的な時期に設定して出かけてきました。

初日は福岡空港に集合し、専用車で烏帽子岳に向かいました。烏帽子岳で渡りの個体をカウントしていた地元の方に聞いたところ、朝方はアカハラダカが1,000羽ほど渡ったらしいのですが、烏帽子岳に渡ってくる方向の対馬の天候が悪く、我々が到着後のアカハラダカの確認はありませんでした。結局この日は、ハチクマやサシバ、チョウゲンボウ、エゾビタキ、コサメビタキなどを観察しただけで終了しました。

烏帽子岳の観察スポット

2日目は迷走台風がかなり接近するということで、福江島に向かう夕方の高速船も欠航。安全確保のため、泣く泣くホテル待機となりました。

3日目の朝には雨も上がり、高速船ではなくフェリーで福江島に渡りました。長崎港の近くではミサゴやハヤブサ、クロハラアジサシなどが出現し、昨日のうっ憤を晴らすように鳥見を楽しみました。少し沖に出てトビウオが飛び出すと、その直後にはカツオドリも出現。しばらくはトビウオを狙って船についてくれたので、バッチリ全員で楽しめました。

カツオドリ

福江島到着後、午後の早い時間に大瀬崎に到着。ハチクマがパラパラと出現しましたが、夕方になると近くを旋回したりで大興奮。ハチクマ観察のウォーミングアップにちょうどよかったですね。

4日目は薄暗いうちに大瀬崎に到着。先に朝食を済ませようと思いましたが、サンショウクイやハチクマ、ハリオアマツバメなどが続々と出現。ハチクマは海上などの低い位置から浮上して接近、ハリオアマツバメは羽音が聞こえるほど近くを飛翔、サンショウクイは枯れ枝にとまるなど、右に左に、朝食を忘れて盛り上がりました。

大瀬山周辺の朝焼け風景
海上を浮上してくるハチクマ
ハチクマ
サンショウクイ

早朝の賑わいが収まったと思ったら、烏帽子岳で見逃したアカハラダカの大きな群れが出現しました。その数なんと1,300羽。打ち上げ花火が上がったように、上空の大きな丸い塊の中を、アカハラダカがうじゃうじゃと旋回していました。この前日には烏帽子岳でも4,000羽以上が飛翔したようですが、関東なら1羽でただけで大騒ぎするアカハラダカですからね。皆さんも、はるばる遠くから訪れた甲斐があったと感じてくれたはずです。

アカハラダカの大群
アカハラダカ

午後はタカも高く飛び出したので、大瀬崎は切り上げて島内を巡りました。耕作地や河川、池では、台風通過で運ばれたクロハラアジサシやハジロクロハラアジサシを各地で確認しました。一昨日の情報だと100羽近くのヌマアジサシ類がまとめていたようで。この日は電線にとまる様子も見ることができました。他に海岸では、セイタカシギやオオソリハシシギ、ソリハシシギ、トウネン、オオメダイチドリ、メダイチドリ、シロチドリなど、耕作地ではツメナガセキレイやセッカなどを確認しました。

クロハラアジサシ

最終日の5日目も、薄暗いうちに大瀬崎に到着して観察を開始。昨日同様に近くを飛翔するハチクマを堪能しつつ、ハヤブサやブッポウソウ、コムクドリ、イカル、サンショウクイなども観察。この日も朝食のお弁当を食べる間がないほど、早い時間から盛り上がりましたね。

ハチクマの群れ
間近に出現したハチクマ幼鳥
ブッポウソウ

この日は飛行機の便に合わせて11時過ぎまで観察し、福江島での鳥見は終了となりました。今回は台風の影響も受けましたが、終わってみれば、たくさんのハチクマやアカハラダカに出会うことができました。撮影をされた方は、きっと素晴らしいカットがたくさんあったはずです。

秋のタカ渡り観察は台風に遭遇することもありますが、そんなリスクを忘れるほどの魅力があります。タカの識別ができない初心者の方も遠慮せず、ぜひ、こうした歳時記的な鳥見を楽しんで頂きたいと思います。

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。