奥日光で冬鳥観察&会津でヤマセミ撮影にもチャレンジ

report by 吉成才丈 2024年11月5日~8日

1日目
予定通りに宇都宮駅に集合し、貸切りバスで奥日光に向かいました。
夏から秋の暑さが長引いた影響で紅葉シーズンが遅れたため観光客が多く、多少の渋滞はあったものの、ほぼ時間通りに奥日光に到着。
昼食を済ませた後、川沿いの遊歩道を散策すると、すぐ近くでニホンザルが川に降りて採餌していました。川の周辺では、カワガラスが潜って採餌したりする様子や梢にとまって周囲を伺うミソサザイを観察。日光の川沿いはロケーションもよいので、皆さんでじっくり撮影させてもらいました。
この日は曇天で薄暗くなるのも早かったため、夕方は早めにホテルにチェックインしました。

ニホンザル

ミソサザイ

 

2日目
早めに朝食を済ませ、荷物をバスに積んでからホテル周辺を散策。昨年はこのあたりでイスカを観察しましたが、今年は赤い実も少なく、ゴジュウカラやイカルなどが少し見られただけ…。
今年は小鳥が少ないのかなと思い、トイレを済ませてバスに乗ろうとしたら、アトリの小群が近くの木に飛来。静かに観察・撮影していると次第に近寄ってきて、じっくり撮影させてくれました。またアトリにつられるようにカシラダカも群れに加わり、こちらもじっくり撮影できました。

アトリ

再び川沿いをチェックすると、昨日と同じようにカワガラスが出迎えてくれました。昨日の撮影状況を踏まえ、スローシャッターでの撮影などにも挑戦して頂いていると、とまっていた1羽にもう1羽が接近し、なんと交尾を開始!
これから寒さが増すこの時期に繁殖を始めることはないと思いますが、さすがに驚きました。

カワガラス

カワガラス撮影後には、別の入口から散策路にアプローチ。小鳥はこちらの方が多い傾向があり、ツグミの群れやアカハラ、シロハラなどを観察していると、ベニマシコの声が複数聞こえてきました。
少しずつ接近して待っていると、ようやく姿を現してくれました。真っ赤なオスではありませんでしたが、やはりベニマシコは興奮しますよね。

アトリ

午後は明日のヤマセミに備え、会津に移動しました。

 

3日目
いよいよ今日、明日がヤマセミ撮影の本番です。
まだ暗いうちに迎えに来てもらい、明るくなる前にハイドに身を隠して息をひそめます。この日は時折小雨が降り、風も強めでコンディションは芳しくない状況。いつもなら目前の河川上空を通過したり、すぐ近くの枝にとまる姿を見せてくれるのですが、なかなか姿を現しません。やきもきしていると、小さな声が聞こえた後、2羽が追いかけあうようにいきなり目の前に出現し、下流方向に飛翔していきました。いつもなら河川上空を飛来するので間に合うのですが、ハイドと同じ岸の陰から突然現れたため、満足に撮影できた方はいませんでした。
その後は下流から上流方向に低く飛翔する様子が1回あり、参加された方のお1人が見事に捕えてくれました。ヤマセミは見慣れない方が多いので、ついつい撮るのを忘れて見てしまうんですよね。
だから2日間連続チャレンジなのですが、明日に期待ですね。

ヤマセミ

午後は貸切り車で市内を巡り、お堀のカモ類やエナガ、シジュウカラ、ヤマガラなどの小鳥類を撮影して回りました。
また猪苗代湖畔の耕作地も巡り、ノスリやチョウゲンボウ、コハクチョウなども撮影しましたが、今朝は暗いうちから活動していたため、早めにホテルに戻りました。

エナガ

コハクチョウ

 

4日目
前日に続き、まだ暗いうちに迎えに来てもらい、明るくなる前にハイドに身を隠して息をひそめました。この日は風もほぼなく、星空も見えるといった状況で期待が高まります。しかし昨日同様、ヤマセミはなかなか姿を現してくれません。一昨日までは明け方から頻繁にチャンスがあり、また昨日は天候の影響もあったようでイレギュラーな日だと思っていましたが、いつもと異なる状況に、少しずつ不安が募り始めます。
時折、遠くで飛翔やとまりが見られたりはしたものの、結局この日は、ヤマセミは目の前には現れてくれませんでした。ここまで出が悪い日が続くことはめったになく、現地ガイドさんが考えるには、この2日間でも観察されたハイタカなどの猛禽類に追われて怖い思いをしたのではないかとのことでした。たしかに東京周辺でも、ヤマセミがオオタカなどに襲われて命を落としたこともあり、行動に影響を及ぼしても不思議ではありません。自然やいきもの相手なので仕方ないとはいえ本当に残念で、ご参加いただいた方には申し訳ない限りです。

ヤマセミがとまるはずだった枝にはカワセミが…

いつも元気なセグロセキレイ

撤収後はホテルに戻り、ご挨拶後に解散。宿泊したホテルはチェックアウト時間に余裕があるので、皆さんの都合で銘々に帰路についていただきました。

2~3日後に現地のヤマセミの状況を聞いたところ、すでにいつも通りに回復しているとのことでした。
昨年と一昨年のツアーではしっかりお撮りいただいてるので、また来年にチャレンジさせて頂こうと思います。

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

夏の富士山・奥庭で亜高山帯の野鳥と大磯海岸でアオバト観察

report by 吉成才丈 2024年8月21日~23日

1日目
今回も全員が新宿のバスターミナルに集合し、直行バスで標高約2,300mの富士山五合目に向かいました。
途中の高速は渋滞があったものの、ほぼ予定通りに水場に到着。

水場

さすがにTシャツ1枚では涼しいくらいの気温で快適でしたが、先着組の方によると「鳥がまったく出てこない…」という不吉な言葉が…
今回はOMシステムさんの協賛があるので、希望者にカメラとレンズをレンタルし、初めての方に使い方をレクチャーしてもらっていると、まずは、ヒガラが水場に出てきてくれました。

ヒガラ

ほっと一安心してさらに待つと、ウソやルリビタキのメスや幼鳥なども出てきてくれました。

ウソのオス・メス

ここは危険な生き物も生息しておらず景色もよく、富士山頂も望める散策路も整備されているので、水場で待機しながらも、個々で自由に過ごして頂きました。

山荘の夕食時間は早く、この日も16:30から夕食となりました。

山の上にもかかわらず豪華な夕食

夕食後でもまだまだ明るいので、皆さんと散策路を巡り、夕焼けや朝焼け、星空撮影のポイントをチェック。
なんと今回は、OM-1MkⅡや望遠ズームレンズの無料レンタルと共に、星空撮影のセミナーや体験撮影まであるという贅沢な内容なので、山荘に戻った後にOMシステムの社員の方に座学で、星空撮影時のカメラ設定や撮り方のコツを教えて頂きました。

外が暗くなると、いよいよ星空撮影の実践…だったはずなのですが、あいにく雲が広がり、皆さん揃っての撮影はできませんでした。
あとは適時、個々での撮影となりましたが、結局、雲はなかなか取れませんでした。

 

2日目
やはり多くの方が星空撮影を体験してみたかったようで、夜明け前の真っ暗なうちから何人もが、星空撮影ポイントに集まってきました。
そんな方々の願いが届き、夜明け少し前には雲が切れ、早起き組は星空撮影を楽しめました!
なかにはスマホで星空をきれいに撮る方もおり、そのまま朝焼けの撮影まで楽しむことができました。

富士山と星空
朝焼け

朝食後に水場で待機しているとウソやルリビタキなどが出てきてくれ、まずまずの撮影ができました。

その後、ある程度人数がいると降りてこないと言われていたホシガラスが水場に舞い降りました。
皆さんもホシガラスを驚かせないよう、息をひそめて静かに撮り続けます。
今までの小鳥とは、大きさも存在感も異なるホシガラスの登場で、満足度は一気に増したと思います。

ホシガラス

この日は昼過ぎまで撮影し、翌日のアオバト撮影に備えて平塚に移動しました。

 

3日目
平塚の朝は早く、夜明け前にホテルを出発して大磯に向かいました。
まだ薄暗いうちに撮影の準備を済ませて待つと、アオバトの群れが次々と飛来。
暗いうちの撮影は難しいのですが、明け方の様子も観察頂きながら、明るくなった後のシュミレーションをして頂きました。

明け方に飛来したアオバト

明るくなるにつれ、アオバトの行動パターンもわかってくると、いよいよ撮影の本番です。
飛翔する個体や岩に降りて海水を飲む個体の撮影のほか、波で飛び立つ瞬間も狙っていただきました。

海水を飲むアオバト
波で飛び立つアオバト
美しいアオバト

最初はカメラの仕組みや撮影の基本がわからず疑問だらけだった方も、いろいろなシチュエーションで撮影するうちに少しずつ理解し、野鳥撮影の楽しさを感じられたと思います。
いつもなら夏の大磯は暑くて大変なのですが、この日は曇りがちで暑さもやわらぎ、快適な条件下でアオバト撮影を楽しみました。

 

今回はミラーレス一眼の望遠撮影システムや星空撮影の機材レンタルにレクチャーがあり、撮影初心者の方にもお楽しみ頂けたと思います。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

 

2025年1月には、同じように機材レンタル付の霞ヶ浦や銚子をめぐる撮影ツアーもありますので、野鳥撮影未体験の方も、どうぞお気軽にお出かけください。

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

夏の小笠原 ゆったり探鳥入門スペシャル

report by 吉成才丈 2023年9月1日~6日

 

1日目
おがさわら丸が定刻で竹芝桟橋を出港するとウミネコが舞い始め、アクアライン周辺からはオオミズナギドリも出現。他に東京湾内ではカルガモやアジサシ、アオサギ、ダイサギなども観察できました。

ウミネコ
ウミネコ

 

東京湾から外洋にでると、アナドリやアカエリヒレアシシギ、ハイイロヒレアシシギ、シロハラトウゾクカモメ、アカアシカツオドリなども出現し、初日にしてはまずまずの成果がありました。船上での探鳥が初めての方もいましたので初日から無理はせず、皆さんのペースでお楽しみ頂きました。

オオミズナギドリ
オオミズナギドリ

 

2日目
デッキは日の出の30分ほど前に解放されるため、まだ薄暗いうちからデッキにでて観察を開始。心配された台風は熱帯低気圧に変わり、さらに予想ルートからも遠ざかり、予想外に静かな海でした。
そんななか、オナガミズナギドリやアナドリがポツポツと出始め、いよいよ南の海域に入ってきた印象が強まります。

オナガミズナギドリ
オナガミズナギドリ

 

完全に明るくなる前にアカアシカツオドリが一瞬横切り、シロハラミズナギドリやクロトウゾクカモメなども出現。
カツオドリは船に付き、船の周囲を飛翔しながらトビウオを狙います。海に飛び込むカツオドリを狙う方でデッキの動きも活発になり、恒例のカツオドリ祭りも盛況でした。

父島の二見港で下船すると慌ただしくははじま丸に乗り換え、ははじま丸からの海鳥観察を開始。オナガミズナギドリやアナドリ、クロアジサシなどが出現しますが、船が小さいため、おがさわら丸からよりも近くで観察できました。
母島が近づくと船に付くカツオドリが増え、カツオドリ祭り再開。皆さん、手を伸ばせば届きそうなほど接近するカツオドリに大興奮していました。

母島の港に着くと、迎えに来ていた宿の車に荷物を預け、母島の中心部を散策しながら宿に向かいました。もうすぐ宿というところで、目の前をオガサワラノスリが横切りました。もしかしたら..と思って1ブロック先まで進んで覗き込むと、期待通りに電柱にとまっていてくれました。光線状態や背景も考えて周囲を見回すと、我々がとまる宿の玄関がベストポジションであることが判明。さらに、皆さんの部屋からなら更に条件がよくなることがわかり、部屋からも撮影して頂きました。

オガサワラノスリ
オガサワラノスリ

 

一息ついたのちに専用車に迎えに来てもらい、この日は観察ポイント数か所を軽く巡り、ハハジマメグロやアカガシラカラスバトなどを探索。
そう、この日のうちにハハジマメグロとアカガシラカラスバトが見られてしまうと気が楽になるのですが、ハハジマメグロは橋の上から目線でちょろちょろしているところをゲット。

皆さんでメグロを撮影していると、同じ木の枝に黒っぽい大き目の鳥がとまっているのを発見。なんと、アカガシラカラスバトが橋から見下ろす枝にとまっていました。アカガシラカラスバトはずいぶん見ましたが、地上で採餌しているところを除くと、5mも見下ろす枝にとまっているのを見たのは初めてで驚かされました。

ハハジマメグロ
ハハジマメグロ(ケンスケ様 撮影)
アカガシラカラスバト
アカガシラカラスバト(ケンスケ様 撮影)

3日目
夜明け前の薄暗い時間に宿の前に集合すると、オガサワラオオコウモリが上空を飛翔していきました。
この日も朝食前の早朝、午前、午後と専用車で島を巡り、森や耕作地、港周辺などをじっくり観察。ハハジマメグロやオガサワラノスリ、キョウジョシギ、ムナグロなども観察しましたが、アカガシラカラスバトには出会えませんでした。

また、港にはカツオドリが飛び回っていたり建物の屋根にとまっていたりするなど、本州ではあまり見られない光景もお楽しみいただきました。こんな光景が落ち着いてみられるのも、母島2泊というのんびりプランのおかげですね。

カツオドリ
カツオドリ

 

4日目
この日も朝食前の薄暗い時間、朝食後の午前中に専用車で島を巡り、ハハジマメグロを堪能していただきました。
そして、午後のははじま丸で父島に移動。船上からの観察では、またまたカツオドリ祭りが開催されました。

カツオドリ
カツオドリ

 

父島では、早めの夕食後にナイトウォッチングに出発。地元ガイドさんの案内でオガサワラオオコウモリを探すと、カラスのような大きな姿を何頭も確認できましたが、あの大きさは、初めてご覧になった方は驚きますよね。

オガサワラオオコウモリ
オガサワラオオコウモリ

 

コウモリ観察の後は、光るキノコ<グリーンペペ>を求めて山に移動しました。父島のガイドさんが環境を整備したという場所でライトを消すと、真っ暗闇の中に星空のような光景が浮かび上がりました。このきのこは、ある程度雨が降らないと光らないという事でしたが、幸運にも緑色に光る光景を見ることができました。

そして驚くことに、周囲は真っ暗闇なのに、わずかな光しか放たないグリーンペペがミラーレスカメラで撮影できてしまったのです。もちろん、ISOをかなり上げましたが、暗闇の中で小さな光るキノコが、それも手持ちで撮影できるとは思いませんでした。

グリーンペペ
グリーンペペ

 

5日目
今年は宿の周辺にアカガシラカラスバトが降りないとのことで、早朝の探鳥はやめ、予定より早めに南島に渡り、帰った後に集落近くを散策するプランに変更。しかし強風で予定していた南島の船が欠航になったため、急遽、専用車で島内を巡ることになりました。

まず、グラウンドでシギ・チドリを探すと、数羽のムナグロを発見。ムナグロをじっくり観察していると、端の方ででタカブシギも見つかりました。続いて向かった八瀬川河口ではカワセミやオガサワラノスリを観察。

ムナグロ
ムナグロ(YK様 撮影)

 

そして最後に、認定ガイドと一緒でないと入れないというアカガシラカラスバトのサンクチュアリーを訪ねました。残念ながらカラスバトには出会えませんでしたが、これまでの経緯やとりくみ、現在の状況、ハトの生態などの話を実際の現場で見聞きでき、意義深い訪問だったと思います。

眺望のよい展望台で景色を楽しんだ後に街に戻ると、周辺を少し散策して一旦解散。各自で昼食をとったのちに港で集合しておがさわら丸に乗船し、出港後の見送りを受けたあとに海鳥観察を開始。
カツオドリやアカアシカツオドリ、オナガミズナギドリ、アナドリなどを観察し、聟島列島が見えなくなるあたりまでデッキで過ごしました。

カツオドリ
カツオドリ(YK様 撮影)
アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ(YK様 撮影)

 

6日目
いよいよ最終日となりましたが、海鳥観察のチャンスはまだあります。この日も、日の出前の薄暗い時間帯からデッキで観察しました。早朝の時間帯にはまだオナガミズナギドリもでていましたが、次第にオオミズナギドリが姿を見せるようになり、いつの間にかオナガミズナギドリとオオミズナギドリが入れ替わっていました。
他にアナドリなども見ながら大島沖まで進むと、ほぼ昨年と同じ位置で潜水艦が出現。浮上しながら大島方面に進む潜水艦と交差して東京湾に入るあたりで一旦観察を終了し、東京湾内は自由行動とさせて頂きました。

今年は船上から観察されるミズナギドリの種類が少なめでしたが、ツアーのタイトル通り、小笠原の固有(亜)種を含めてゆっくりお楽しみ頂けたかと思います。

 

(確認種33種)

 

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

夏の富士山・奥庭で亜高山帯の野鳥と
大磯海岸でアオバト観察

report by 吉成才丈 2023年8月21日~23日

 

1日目

今回は全員が新宿のバスターミナルに集合し、乗り換えなしのバスで、標高約2,300mの富士山五合目に向かいました。この暑い時期ですからね、高速道路上のバス停にとまる以外はダイレクトに現地に行くことができるので、本当に便利で快適です。

ほぼ予定通りに奥庭荘に着くと、さっそくかぶりつきで撮影する方、まずは昼食をとる方など、銘々で自由に行動していただきました。奥庭では散策もできますが、歩く距離も短く散策路も整備されていて危険は少ないため、各自で思い思いに行動できるのも魅力の一つだと思います。

水場
水場

水場では、ウソやルリビタキ、ヒガラ、キクイタダキ、メボソムシクイなどがパラパラと出てきてくれました。最短だと、鳥までは10mもない条件なので、手持ちの撮影システムで撮られていた方でも、バッチリと写っていると思います。この日の午後だけでも十分満足という声も聞こえるほど、小鳥たちは、かなりの頻度で出てきてくれました。

ウソ(HO様撮影)
ウソ(HO様撮影)
キクイタダキ(HO様撮影)
キクイタダキ(HO様撮影)

奥庭荘は山小屋なので、お風呂もシャワーもありません(涼しいので汗もかかず、朝晩は肌寒いほど)。夕食もまだ明るい時間の16時30分と早いのですが、食事の内容は山小屋とは思えないほど豪華です。

豪華でボリュームのある夕食
豪華でボリュームのある夕食

夕食を終えても明るいので、奥庭荘のご主人が散策路を案内してくれました。あいにく、西の空の雲が厚かったので富士山は赤く染まりませんでしたが、間近に見える富士山山頂も楽しめました。そして夜になると、雲の合間から星空も見えました。最近のスマホは性能がよく、星空も簡単に撮れてしまうのですね。2枚とも、iPhoneで撮影した画像です。

富士山と星空
富士山と星空
星空
星空

 

2日目

明け方は晴れており、富士山の稜線から昇るご来光も見ることができました。

日の出
日の出

昨日同様、この日も小鳥たちはよく出てきてくれました。昨日は出てこなかったルリビタキのオスも何度もやってきましたが、オスだけでも3個体いるような印象でした。本当に、ルリビタキのオスは美しいですね。

ルリビタキのオス(HO様撮影)
ルリビタキのオス(HO様撮影)
メボソムシクイ(左)、ルリビタキ(右)
メボソムシクイ(左)、ルリビタキ(右)
左からヒガラ、ウソ、メボソムシクイ
左からヒガラ、ウソ、メボソムシクイ

この日の午前中は奥庭荘で楽しみ、昼食後には、翌日のアオバト観察に備えて大磯方面へ移動しました。

 

3日目

あいにく、この日の天気予報は曇りベースの雨…。天候の回復を願い、まだ薄暗いうちにホテルを出発し、大磯・照ヶ崎海岸に到着。到着時から少し降りましたが、階段下のわずかなスペースで雨宿りしていると次第に雨が上がり、なんと晴れ間まででてきました。アオバトも飛来はするものの、なにかに警戒してなかなか岩場に降りません。また、飛来してくる方向の山はかなり雨が降っていたようで、晴天時よりはアオバトの個体数は少ないようでした。でもそのうち徐々に岩場に降りるようになり、海水を飲む様子なども観察できました。

飛来してきたアオバト
飛来してきたアオバト
海水を飲むアオバト
海水を飲むアオバト
波で飛び上がったアオバト(HO様撮影)
波で飛び上がったアオバト(HO様撮影)

そして、海水を飲んでいたアオバトが一斉に飛び立つと、ハヤブサの幼鳥が登場しました。アオバトを襲う様子は見られませんでしたが、やはりどこかに潜んでいたようですね。

ハヤブサ幼鳥
ハヤブサ幼鳥

最終日は雨予報でハラハラしましたが、昨年は快晴でかなり暑かったことを考えると、今年は過ごしやすくて助かった面もあります。観察を終えると、チェックアウト時間を延長していたホテルに戻って解散しました。きっと皆さん、シャワーを浴びてお帰りになられたことと思います。標高2,300mの亜高山の鳥と海岸のアオバトという面白い組み合わせですが、今年もバラエティに富んだ鳥見が楽しめました。

 

(観察種数27種)

 

 

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

有明海から日本最大のツルの渡来地・出水へ
【2022年12月・2本目】

report by 吉成才丈 2022年12月12日~16日

 

1日目
鹿児島空港に集合し、専用車で出水方面に向かいました。昼過ぎに出水に到着し、ツル探しからはじめました。まずはカナダヅルを見つけるもこの日は遠く、クロヅルやソデグロヅルを探しつつ、マナヅルやナベヅルをじっくり観察・撮影して頂くことにしました。

水を飲むマナヅルの家族群
水を飲むマナヅルの家族群
採餌していたナベヅル
採餌していたナベヅル

 


2日目

薄暗いうちに干拓地に到着し、まずは朝焼けとツルを観察しました。朝焼けをバックに飛翔するツルは美しく、皆さん夢中でシャッターを切っていました。

朝焼けとツル
朝焼けとツル
採餌するツル
採餌するツル

朝焼けのあとは、やはり電線にとまるコクマルガラスを狙いました。この日も、淡色タイプのシロマルに出会えました。

ミヤマガラス(右)、コクマルガラス(左2羽)
ミヤマガラス(右)、コクマルガラス(左2羽)

その後、観察センターの屋上でツルを観察していると、道路の陰に見え隠れするクロヅルを発見。じっと待っていると、他のツルから外れて全身が見える位置に移動してきました。今年はツルの数が少ないので、出会えるかどうかはタイミング次第なんですね。

クロヅル
クロヅル

クロヅルが出てくるのを待っているとハヤブサも出現し、耕作地で採餌していたカモ類は大騒ぎしていました。

ハヤブサ
ハヤブサ

その後は河川沿いを散策し、ツリスガラやホオアカなどを狙いました。ツリスガラはヨシ原で鳴声がしたあと、比較的近くに現れてくれました。とても小さな鳥で、現れた時にはまったく鳴かなかったので、皆さんに確認してもらう迄に時間がかかりましたが、なんとか全員で観察することができました。

ツリスガラ
ツリスガラ

ホオアカもコンクリート護岸にとまり、河川ではミサゴの水浴びも観察されました。飛翔を見ることが多いミサゴだけに、水の中にいる姿は珍しいですね。

水浴びするミサゴ
水浴びするミサゴ

午後は山に入り、ダムや渓流を観察しました。相変わらずオシドリは警戒心が強く、ダムの水面にはマガモやヒドリガモ、ホシハジロなどが見られました。薄暗い水際のオシドリを探していると、クマタカが滑翔で尾根陰入るところが一瞬だけ観察できました。そしてヤマセミのポイントに近づくと、流木にとまっているヤマセミを発見。ヤマセミは飛び立って枯木にとまったので、皆さんに教えながらスコープに入れようとしましたが、またすぐに飛び立ち、岬の裏側に入ってしまいました。また帰り際には、橋を渡るときにヤマセミの鳴声と飛翔する姿を確認。なんと2羽が一緒に、川の上流方向へ飛翔していきました。夕方には干拓地に戻り、ヘラサギ類やタゲリなどを観察しました。

ヘラサギ
ヘラサギ
タゲリ
タゲリ

3日目
この日も薄暗いうちに干拓地に到着しましたが、あいにく雲が厚く、朝焼けも月も見ることができませんでした。今日はダメかと残念に思いながら車中待機していると、右側に座っていた方が「ソデグロヅル…?」と呟きました。なんでも、白い大きなツルが降りてきたというので確認すると、まさかのソデグロヅルでした。
ソデグロヅルは、昨年は目立つところにずっといて見やすかったのですが、今年はなかなかじっくり見られないということだったので、一転して大逆転の幸運が転がり込んできたことになります。天気が悪かったため他に観察者もおらず、しばらく独占的に観察させてもらいました。

マナヅル(奥)とソデグロヅル(手前)
マナヅル(奥)とソデグロヅル(手前)

昼前のフェリーに乗るため早々に出水を発ち、熊本に向かいました。島原に向かうフェリーでは、出港前から乗船客のエビせんを求めるユリカモメで賑わっていました。どれほどの数のユリカモメがいたのかわかりませんが、出港後にはたくさんのユリカモメが船の後を着いてきました。

船についてくるユリカモメ
船についてくるユリカモメ

出港後には堤防で休むカツオドリの大群も観察しましたが、この日は船の近くを飛翔する個体もいました。

海上を飛翔するカツオドリ
海上を飛翔するカツオドリ

諫早の干拓地には広大な耕作地やヨシ原がありますが、ヨシ原ではハイイロチュウヒやオオジュリンなど、耕作地ではホシムクドリやチョウゲンボウなどが観察されました。

ハイイロチュウヒの幼鳥
ハイイロチュウヒの幼鳥
ホシムクドリ
ホシムクドリ

 

4日目
朝は再び諫早干拓地を訪ねました。ヨシ原周辺ではコチョウゲンボウやノスリなどの猛禽類を確認。コチョウゲンボウは、草地すれすれで小鳥を狙う様子も観察されました。

コチョウゲンボウ
コチョウゲンボウ
ノスリ
ノスリ

午後は佐賀の東与賀へ移動し、満潮時の干潟を観察。この日は満潮でも潮位が高くなく、広大な干潟にシギ・チドリ類やツクシガモ、ズグロカモメなどが点在していました。

干潟に点在する水鳥
干潟に点在する水鳥
スグロカモメ
スグロカモメ

干潟からホテルへ向かう途中の街中では、出会う機会がめっきり減ったカササギを発見。電線や家の屋根などにとまる様子が観察されました。

 

5日目
昨日カササギが見られたので予定を変更し、まずは調整池に向かいました。数千羽のトモエガモは健在で、大きな塊が水面に広がっていました。

飛び立ったトモエガモの大群の一部
飛び立ったトモエガモの大群の一部

ここでは1周3km弱の舗装道を散策し、トモエガモの大群を堪能するとともに、オオタカなどの猛禽類やオオジュリンなどの小鳥も観察しました。その後は河川を遡上し、清流でカワセミやイカルチドリ、カワガラスなどを観察。道の駅で地域クーポンを使用して頂き、解散地である福岡空港へ向かいました。

 

(確認種99種)

 

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

有明海から日本最大のツルの渡来地・出水へ
【2022年12月・1本目】

report by 吉成才丈 2022年12月7日~11日

 

1日目
福岡空港に集合し、専用車で有明海方面に向かいました。

途中、高速道のサービスエリアで昼食をとり、まずは調整池で鳥見を開始。昨年は数羽しかいなかったのに、今年はトモエガモが5,000羽以上も滞在しており、その数の多さに圧倒されました。

トモエガモの大群
トモエガモの大群

 

これだけカモがいるのですから、ハイイロチュウヒやオオタカなどの猛禽類も出現して楽しめたのですが、車に戻る際には、もっと嬉しいカササギの鳴き声を確認。
カササギは福岡や佐賀、長崎あたりに生息しているのですが、とくに佐賀周辺では個体数が減少傾向にあって出会えないときもあるので、慎重に近づいて観察しました。地上や樹上でエサを獲る様子もじっくり撮影でき、見られてホッとするとともに、その美しさを満喫できました。

採餌中のカササギ
採餌中のカササギ

その後は東与賀干潟へ行きましたが、干潮の時間帯であったため、広大な干潟をご覧いただいてホテルに向かいました。

 

2日目
午前中は、満潮の東与賀干潟でシギ・チドリ類などの水鳥を観察しました。昨日と違って鳥も近く、ハマシギの群れやダイシャクシギ、アカアシシギ、ツクシガモ、ズグロカモメなどの水鳥を見ていると、ハマシギの群れが一斉に飛び立ちました。ハマシギの群れは動きもシンクロしており、一斉に向きを変えたりする様子を楽しみました。やはり、日本を代表する東与賀の干潟は広大で素晴らしい環境ですね。

一斉に飛び立ったハマシギ
一斉に飛び立ったハマシギ

 

ダイシャクシギやツクシガモ
ダイシャクシギやツクシガモ

この日も高速道で昼食をとり、午後は諫早の干拓地へ向かいました。干拓地のヨシ原ではハイイロチュウヒやチュウヒ、コチョウゲンボウが飛び回り、耕作地ではタゲリやホシムクドリ、ホオアカ、水路ではクサシギなどを観察しました。またヨシ原ではタヌキを、耕作地ではイノシシも確認し、哺乳類も楽しめました。

チュウヒ
チュウヒ

 

ミヤマガラスとホシムクドリ
ミヤマガラスとホシムクドリ

3日目
朝方は再び干拓地を訪ね、セイタカシギやカワセミ、チョウゲンボウなどを観察。そして昨日に続き、耕作地ではイノシシを発見。昨日は走り去る後ろ姿でしたが、この日は近くでじっくり観察できました。

耕作地に現れたイノシシ
耕作地に現れたイノシシ

その後は島原からフェリーに乗り、船上でも鳥見を行いました。船が出ると、乗船客が与える餌を目当てに集まったユリカモメの群れがすぐ目の前に出現し、美しい雲仙岳をバックに飛び回る姿を楽しみました。

ユリカモメと雲仙岳
ユリカモメと雲仙岳

 

そして入港直前には、堤防の上で休む約600羽のカツオドリも観察できました。これだけの数が集まるのはすごいことだと思います。

堤防で休むカツオドリの一部
堤防で休むカツオドリの一部

 

フェリーを降りると一気に出水まで移動し、夕方のわずかな時間でしたが、干拓地のツルを観察しました。ナベヅルやマナヅルを見逃すことはないのですが、この日のうちに他のツルを見られると気が楽になるので探すと、カナダヅル2羽を発見できました。

カナダヅル
カナダヅル

 

4日目
ツルは早朝に給餌されるため、朝方にもっとも活発に動きます。この日は薄暗いうちに到着し、朝焼けや月をバックに飛翔するツルを狙いました。天気にも恵まれ、ほぼ満月という絶好の条件であったため、朝日の方向を狙ったり、反対側に出ている月の周辺を狙ったりという嬉しい忙しさを体験できました。まだ薄暗いうちには、カラスに突っかかられてコミミズクも出現しました。

月とツル
月とツル

 

 

朝焼けのツル
朝焼けのツル

ツルの動きが落ち着くと、つぎはコクマルガラスを狙いました。ちょうどこのタイミングでミヤマガラスの群れが電線に集まるのですが、その中にコクマルガラスも混じります。遠くからでもコクマルガラスの白いタイプ(通称シロマル)が見えていたので、苦労することなく全身が見えている状態で撮影できました。

コクマルガラス(左)とミヤマガラス
コクマルガラス(左)とミヤマガラス

電線の役割は電気を流すだけではないようで、同じ並びの電線にはニュウナイスズメの群れもとまっていました。雌雄同じ模様のスズメとは違い、ニュウナイスズメはオスとメスとで模様が異なり、とてもかわいい鳥です。

電線関連の鳥を観察後には、ツリスガラやホオアカを狙って河川沿いを散策しました。鳴き声は聞こえるものの、なかなか姿を現さなかったツリスガラでしたが、車に戻る寸前にようやく姿を確認できました。他に川沿いでは、ハマシギやミサゴ、ノスリ、オオジュリンなども出現しました。

ニュウナイスズメ
ニュウナイスズメ

 

午後には山間部のダムに向かい、ヤマセミやクマタカなどを狙いました。解放水面にはマガモやヒドリガモ、ホシハジロなどが休んでいました。水際の薄暗いところが好きなオシドリはもっとも警戒心が強く、かなり遠くても人間の姿が見えただけで飛ぶこともありました。残念ながら、クマタカやヤマセミには出会えませんでしたが、カケスやイカルなどの声も確認しました。夕方には再び干拓地に戻り、マナヅルやナベヅルもじっくり観察しました。

ミサゴ
ミサゴ
マナヅル
マナヅル
ナベヅル
ナベヅル

5日目
この朝も夜明け前に干拓地に到着し、朝のツルを観察しました。この日は月は雲に隠れ、朝焼けの状況も昨日とは異なり、日々の変化も体験できました。今年はツルが少ないのですが、朝の採餌の密集度は迫力があります。遠いところに撒かれたエサから食べ始め、徐々に人間に近づいてきます。

朝の採餌の様子
朝の採餌の様子

 

一旦ホテルに帰って朝食後にチェックアウトし、再び干拓地でツルやヘラサギ類などを観察しました。出水といえばツルの越冬地として有名ですが、他の鳥も多く、ヘラサギ類は道路のすぐ近くで休んだり、三面張りの水路で採餌したりしていて驚かされます。

ヘラサギ
ヘラサギ

時間いっぱいまで出水の鳥たちを堪能し、解散地の鹿児島空港に向かいました。今年は鳥インフルエンザの影響でツルは少なかったですが、ツル以外の小鳥や猛禽類も楽しめました。撮影主体のツアーではありませんでしたが、冬の九州は被写体が多く、参加された皆さんも、たくさん撮影されたことと思います。

 

(確認種99種)

 

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

奥日光で冬鳥観察&会津でヤマセミ撮影にもチャレンジ!

report by 吉成才丈 2022年11月7日~10日

 

<1日目>
予定通り、JR宇都宮駅に集合後、専用車で日光方面に移動。車窓から紅葉を楽しみながら進み、中禅寺湖で昼食後に戦場ヶ原に到着。まずは、アオシギを求めて沢沿いを散策しました。いきなり出迎えてくれたのはカワガラスで、滝の周囲でずっと採餌していました。目の前でずっとエサを獲っていたため、皆さんかなりの枚数を撮影したようです。このあたりはカワガラスが普通にいる地域ですが、撮り飽きるまでいてくれるのは珍しいことですね。

カワガラス(西川 恵美子様 撮影)
カワガラス(西川 恵美子様 撮影)

 

カワガラス(齊藤 茂雄様 撮影)
カワガラス(齊藤 茂雄様 撮影)

 

アオシギが見つからなかったので、冬の小鳥たちを求めて下流の木道に移動すると、アトリやアカハラ、カケスが目の前に出現。時折、マヒワの声も聞こえましたが、この日は飛び去る姿を遠くに見送るだけに終わりました。

アトリ(齊藤 茂雄様 撮影)
アトリ(齊藤 茂雄様 撮影)

 

カケス(西川 恵美子様 撮影)
カケス(西川 恵美子様 撮影)

その後は近くの牧場に立ち寄って希望者はアイスクリームを頂き、ホテルにチェックインしました。
  
<2日目>
まだ薄暗い時間にホテルのロビーに集合し、朝食前に近くの沢沿いを散策しました。この沢もアオシギのポイントなので、まだ誰も訪れていない早朝はチャンスだったのですが、ここでもアオシギには出会えませんでしたが、カケスの群れが採餌しながら通過していきました。

カケス(齊藤 茂雄様 撮影)
カケス(齊藤 茂雄様 撮影)

 

ホテルの近くでゴジュウカラやアカゲラなどを観察していると、遠くでウソの声が聞こえました。朝食後には、またアオシギを求めて沢沿いを散策すると、昨日と同じ場所にカワガラスがおり、やはり目の前でわき目もふらずに採餌していました。昨日あれだけ撮ったのに、やはりカメラを向けたくなりますよね。カワガラスを見ていると、いつも元気をもらえるような気がします。

ここでもアオシギには出会えなかったため、狙いを変えて湯の湖畔を散策。いつもなら、ナナカマドの実にアトリやウソなどがいるはずなのですが、お目当ての鳥には会えず、カラ類やヒドリガモなどを観察しました。その後、昨日も歩いた木道を歩いてみると、入口付近でゴジュウカラが出迎えてくれました。

ゴジュウカラ(西川 恵美子様 撮影)
ゴジュウカラ(西川 恵美子様 撮影)

 

先に進むと、先行していたカメラマンが何かを狙っていました。静かに近づいてみると、待望のマヒワの群れが採餌しており、鮮やかな黄色いオスの姿も確認されました。木道脇の広場だったので、皆さんでじっくり観察・撮影していると、参加者のお1人の写真にミヤマホオジロのオスが写っていてびっくりしました。少ないながらも冬の奥日光を楽しみ、午後には専用車で会津に向けて移動しました。
  
<3日目>
まだ真っ暗な4時20分に出発し、ヤマセミのポイントに向かいました。最近のヤマセミは朝方に出ることが多く、暗いうちからスタンバイしておかないと警戒されてしまうとのことで、期待と緊張の中ブラインドに到着。暗いうちにカメラをセットして待つと、ヤマセミはまだ薄暗い時間に飛来し、一番近い倒木にとまりました。

ヤマセミのメス
ヤマセミのメス

 

ヤマセミ(齊藤 茂雄様 撮影)
ヤマセミ(齊藤 茂雄様 撮影)

 

カワセミ(齊藤 茂雄様 撮影)
カワセミ(齊藤 茂雄様 撮影)

その後も、少し離れた木にとまったり、目の前を通過したりで何度もチャンスがありましたが、皆さん、はじめてのロケーションでチャンスを生かせなかった場面もあったと思います。(だからヤマセミは、二日間必要なんですね)

 

10時30分すぎにホテルに戻って銘々に昼食を済ませ、午後には周辺の林や耕作地を巡りました。小鳥も多いとのことで鶴ヶ城に行くと、とても美しい紅葉が出迎えてくれました。カラの仲間やカワラヒワ、エナガなどの小鳥のほか、お堀ではカルガモやコガモなどのカモ類も観察されました。

ヤマガラ
ヤマガラ

 

その後は、移動途中にチェックしておいたハクチョウの群れを狙って耕作地へ移動。耕作地で休んでいたコハクチョウが飛び立つと、磐梯山や飯豊連峰を背景に飛翔する姿を撮影して楽しみました。

コハクチョウ(西川 恵美子様 撮影)
コハクチョウ(西川 恵美子様 撮影)

 

コハクチョウと磐梯山(上田 恵様 撮影)
コハクチョウと磐梯山(上田 恵様 撮影)

  

<4日目>
昨日同様、まだ暗い4時20分に出発し、ヤマセミのポイントに向かいました。昨日の経験があるため、この日は気持ちに余裕があります。昨日と座り順を変えてブラインド内で待機していると、やや遠めの木にヤマセミ2羽がとまりました。約70mの距離で、薄暗い霧の中という悪条件でしたが、モノクロのような趣のある写真が撮れたようです。そうなんです、ピーカンだと普通の写真しか撮れないのですが、条件が変わると思いもよらなかったカットが撮れるのですね。

ヤマセミのオス・メス
ヤマセミのオス・メス

 

その後も、ヤマセミは近くにとまったり目の前を飛翔したりで、この日は昨日以上に楽しめました。ここは背景や水面の映り込みもきれいなので、たとえ後ろ姿であっても、皆さん美しい写真をたくさん撮られたようです。

 

ヤマセミは午前中が勝負なので11時前にホテルに戻り、ここで解散となりました。
ご参加いただいた皆様、お疲れさまでした。

ヤマセミ(上田 恵様 撮影)
ヤマセミ(上田 恵様 撮影)

 

ヤマセミ(上田 恵様 撮影)
ヤマセミ(上田 恵様 撮影)

 

ヤマセミ(西川 恵美子様 撮影)
ヤマセミ(西川 恵美子様 撮影)

 

ヤマセミ
ヤマセミ

(観察種数59種)

 

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

沖縄・やんばるの森でバードウォッチング三昧

report by 吉成才丈 2022年10月19日~22日

 

沢沿いを散策
沢沿いを散策

1日目
那覇空港に集合後、専用車でヤンバル方面に移動。途中で昼食を済ませ、まずはノグチゲラとアカヒゲの目撃例が多い沢沿いを散策しました。

 

歩き始めてすぐ、ノグチゲラが今年掘りかけた穴を見せてもらいました。さらに進むとアカヒゲの声が数ヵ所で聞かれましたが、ヤブの中で動き回る姿がチラチラ見えただけでした。

次に近くの耕作地に行くと、セイタカシギやクサシギ、タカブシギなどのシギ・チドリ類やシマアジやハシビロガモなどのカモ類を発見。さすが沖縄、越冬するシギチも多いですね。

セイタカシギ
セイタカシギ

 

この日は時折雨も混じる天気で翌朝も早かったため、早めにホテルにチェックインしました。ホテルの部屋からは一晩中、ヤンバルクイナやリュウキュウコノハズクの声が楽しめ、贅沢な夜で眠りが浅かった方もいたかもしれませんね。

2日目
まだ暗いうちにスタートし、まずは、木の上で休むヤンバルクイナを探しました。幸いにも数羽が見つかり、短時間の観察をさせてもらいました。宿泊したホテルにも「夜間の観察は5分程度にとどめる」とあったため、慌ただしく観察を終えました。

ヤンバルクイナ(渡辺 溶 様 撮影)
ヤンバルクイナ(渡辺 溶 様 撮影)

 

ヤンバルクイナやノグチゲラは沖縄本島北部にしか生息しないため、このツアー最大のターゲットの1つがクリアできて安心しました。そして、さらに進むと、木の枝に垂直に伸びるコブのようなものを発見。寸胴に見えたその部分をよく見ると、なんとオオコノハズクでした。リュウキュウコノハズクは出会う機会が多いですが、オオコノハズクはめったに出会ないため、とてもラッキーでした。

オオコノハズク(渡辺 溶 様 撮影)
オオコノハズク(渡辺 溶 様 撮影)

 

そして明るくなってホテルへの帰り際、一瞬でしたが、またヤンバルクイナに出会えました。

ヤンバルクイナ(渡辺 溶 様 撮影)
ヤンバルクイナ(渡辺 溶 様 撮影)

 

午前中は、もうひとつの固有種・ノグチゲラを中心に探しました。過去の観察実績のあるダムサイトや林道を巡ると、沢沿いで「ピッ、ピッ」という声が聞こえました。声のする方に静かに近づくと、ノグチゲラのメスが忙しく木を上下していました。幹の陰に回り込むことも多く、じっくりと姿は観察できなかったものの、なんとか姿は捉えることができました。道の駅で昼食を済ませて午後には、プライベートのバタフライガーデンを訪ねました。

バタフライガーデン
バタフライガーデン

 

ここでは様々なチョウを呼ぶため、いろいろな食草を植えてチョウを誘致しており、まるで楽園のようにチョウが舞っていました。

イシガケチョウ
イシガケチョウ
ツマベニチョウ
ツマベニチョウ

 

チョウの生態や識別方法などにとどまらず、植物などのレクチャーを受けながらの観察は楽しく、あっという間に時間が過ぎていきました。アゲハは大きくて目立ちますが、驚いたのが小指の爪ほどしかない小さなリュウキュウウラボシシミです。教わらなければチョウとは思えないほど素早い動きに、皆さん夢中になってシャッターを切ってました。

3日目
この日も暗いうちにスタートしましたが、ヤンバルクイナは昨日堪能したため、フクロウ類をターゲットにして行先を変えてみました。すると、昨日と違い蒸し暑さもあって動きが活発だったのか、枝にとまるリュウキュウコノハズクを発見。昨日出会ったオオコノハズクよりも小さくやや細身なので、縦に伸びた枝かと思いましたが、頭を動かしてくれたのでフクロウだとわかりました。

リュウキュウコノハズク(渡辺 溶 様 撮影)
リュウキュウコノハズク(渡辺 溶 様 撮影)

 

そしてダムサイトでは、アオバズクも出現。フクロウ類は1種見られればよいかと思っていましたが、これで3種すべてをクリアしてしました。

アオバズク(渡辺 溶 様 撮影)
アオバズク(渡辺 溶 様 撮影)

 

朝食後にはダムサイトなどを覗き、午後には金武の耕作地を訪ねました。ここは鳥の種類も多いのですが、とくにシギチやカモなどの水辺の鳥を狙いました。水の張ってある畑地や水路ではコアオアシシギやタカブシギ、ヒバリシギなどのシギチがたくさん見られました。そして畑地では、アマサギやツメナガセキレイなども観察。ツバメとリュウキュウツバメも仲良く並んでいましたね。

ツバメとリュウキュウツバメ
ツバメとリュウキュウツバメ

耕作地の鳥たちを堪能した後は那覇市内に戻り、三角池を覗いてみました。ここで一番目立つのはクロツラヘラサギで、毎年数羽が越冬しています。この日も3羽が休んでいました。

クロツラヘラサギ(手前)とダイサギ
クロツラヘラサギ(手前)とダイサギ

 

他にはアカアシシギ、アオアシシギ、ヒバリシギ、バンなどもいて、小さな池の割にたくさんの水辺の鳥が観察できました。

4日目
この日は比較的ゆっくり(昨日までが早すぎ?)スタートして三角池へ行くも、潮の具合が悪く、昨日の1/5ほどしか鳥たちがいませんでした。近くの干潟へ移動すると、おそらく昨日は三角池にいたとみられるクロツラヘラサギ3羽を発見。他にチュウシャクシギやダイゼン、カワセミなども観察できました。その後は海岸線を南へ向かい海岸の環境も観察すると、黒いタイプのクロサギと白いタイプのクロサギが追いかけあってました。

白いタイプのクロサギ
白いタイプのクロサギ

 

他には、ムナグロ200羽の群れやヒバリシギ、ハマシギ、トウネンなどのシギチ、ヒドリガモやハシビロガモ、ミサゴ、コシアカツバメなども出現しましたが、皆さん暑さでバテ気味だったので、早めに車に戻りました。そして最後に、漫湖水鳥・湿地センターを訪ねると、三角池では見られなかったヘラサギを発見。ヘラサギもクロツラヘラサギも、マングローブがよく似合いますね。

ヘラサギ
ヘラサギ

 

残り時間が少なくなったため、アカアシシギを横目で見ながら空港に向かい、那覇空港で解散しました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

 

(観察種数70種)

 

吉成才丈

 

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。