やんばるの森に生きる固有種を撮る

Report by 戸塚学 / 2024年9月8日~11日

下見中に熱帯低気圧が発生してツアー期間中すべて雨予報でしたが、不思議と撮影時間には雨が止みヤンバルクイナに関しては昼夜を問わずしっかりと撮影ができてみなさまとても満足をされていました。残念なのは天気のせいか、アカヒゲの出現が極めて少なく結局撮影ができませんでした。ノグチゲラも同様でしたが、最終日の朝ヤンバルクイナを待っているポイントで偶然撮影ができたのはラッキーでした。時間調整用のシギ・チドリのポイントは水が無くなり壊滅状態、干潟は悪天候で行く事ができなかったのは残念でしたが全体的にはメインのヤンバルクイナがしっかりと撮れたことで昨年よりは1日増やしたことで大成功だと言っていいでしょう。

<1日目>

13時に無事みなさん集合されたので、専用車で宿へ向かいました。本来なら喜如嘉へシギ・チドリを狙いに行くのですが今年の喜如嘉は耕作放棄地が目立ち、鳥たちがさっぱりなのでパスしました。宿へ荷物を降ろしてすぐにヤンバルクイナのポイントへ向かいます。30分ほど待っていると出てくれました。時間的に違う場所へすぐ移動して待つ事10分、予想通り川をゆっくり渡る姿を撮影することができました。

川を渡るヤンバルクイナ
川を渡るヤンバルクイナ

宿へ戻りすぐに食事を食べていただき、20時からは夜の撮影レクチャーです。昨年はここでヤンバルクイナとリュウキュウコノハズクが撮れたので期待をしましたが、残念ながら撮影はできませんでしたが撮影の方法は習得していただけたようです。

<2日目>

5時30分に出発してポイント近くで車のスライドドアを開けて、目隠し用のシートを張り一時的に「動くブラインド」にしてポイントで待ちます。待つ事10分、まだ暗い中さっそく1羽が出現します。しかしすぐにいなくなってしまいました。ポイントでアカヒゲが出てくれることを期待しましたが、声のみ。その後待ちくたびれていると、ヤンバルクイナは音もなく現れ撮影ができました。

ヤンバルクイナ
音もなく現れたヤンバルクイナ

雨風が激しいので一旦宿に戻り建物の庇からヤンバルクイナを待ちますが出ないまま11時になったので町に昼食と明日の朝食の買い出しを出かけました。その時参加者から「天気が悪いのでヤンバルクイナ生態展示館クイナの森」へ行きたいとリクエストが出たので食後はそちらでヤンバルクイナの「クー太」君を見に行きましたが、眠っていてこちらに出てくれません。ようやく出てくれても今度はアクリル板の前でまた寝てしまう(笑)手強い!ほかにも資料展示があるのを見て宿に向かい、休憩に入りましたが風雨がまったく収まる気配がないので夕方と夜を中止にいたしました。

 

<3日目>

5時30分に出発。昨日より早い準備を完了。風が強いのでシートは張らずにそのまま静かに待ちます。シートが無いのでちょっと警戒をしないかと不安を感じましたが、3回ポイントでのんびりする姿を撮影することができました。ダメ元で時間まで川沿いのポイントへ移動しますがヤンバルクイナは出ませんでしたが、みなさんトビハゼやコメツキガニやシオマネキを撮って楽しんでおられました。

雨の止み間を活かして宿に併設されている観察路で生き物を探します。昨年はアカヒゲもノグチゲラもよく出てくれたのですが、この日は風が強いせいか出が悪いです。鳥はさっぱりでしたが、オキナワキノボリトカゲ・シリケンイモリ・ヤンバルヤマナメクジ・リュウキュウアオヘビを観察撮影ができました。11時に食事に向かう途中いつもリュウキュウツバメとツバメがとまっている電線にとまっていれば撮影をする予定でしたが、1羽もいません。風が強すぎたせいでしょう。

リュウキュウアオヘビ
リュウキュウアオヘビ
オキナワキノボリトカゲ
オキナワキノボリトカゲ

食事後は近くの田んぼでセイタカシギとタカブシギを撮った後、夜もあるのでお昼寝タイムです。15時45分にヤンバルクイナを探しに行きますが、今日はいつもと違いなかなかポイントへ出てくれません。それでも17時30分近くに2回出てくれ、道路を渡る姿も確認できました。最後は川へ移動します。すぐに出たので期待をするとすぐに草むらに隠れてしまいました。15分過ぎた時でしょうか1名の方が高速連写で何かを撮っています?他の方もカメラを構えています。私の位置からは何も見えないので車の影に隠れてドライバーさんに「出てる?」と聞くと出てないよの答え。よく見るとレンズはかなりの下?後で聞くとカニを撮っていたようです「騙された!爆」

もう一度いつもの場所へ戻るとすぐにヤンバルクイナが出てくれました。みなさんに場所を小声で伝え、狙ってもらいます。ヤンバルクイナは採餌しながら川の中に移動してあちこち歩き廻った後、水浴びをゆっくりとしてくれました!

川を渡るヤンバルクイナ
川を渡るヤンバルクイナ
水浴びをするヤンバルクイナ
水浴びをするヤンバルクイナ

夕食時間もあるのでヤンバルクイナが草むらに入ると同時に宿へ向かいました。夕食後は20時に夜の生き物探しに出発です。走り出してすぐに1羽のヤンバルクイナを見つけたのですが時間が早い事と近すぎたことで逃げられてしまった。その後はさっぱりでちょっと焦りが出ます。それでもオリイオオコウモリのいるポイントへ向かい撮影をしてもらいました。下見ではここにリュウキュウオオコノハズクがいたので期待をしましたが見つかりません、残念!集落内からはリュウキュウアオバズクの鳴き声が聞こえますが集落内なので探しに行くのはやめました。

リュウキュウオオコノハズク
下見では観察できたリュウキュウオオコノハズク

さて再び移動しながら生き物を探すと森の奥からリュウキュウコノハズクの「コホッコホッ」の鳴き声が!鳴きまねをして近くまで来てくれることを期待しましたが来てくれませんでした。さてここからがえらいことになります。もう眠っているヤンバルクイナだらけ!いた!ここにもいた!と6羽までは確認して撮影をしていましたが、その後は角度が悪い、止まり位置が悪いと撮影をせず移動という贅沢すぎる状況です。ペアのとまりも確認できた時だけは撮影に熱が入りました。その後も3羽ほどは見つけたと思いますが全部で10羽以上発見しました。下見の2日は1羽しか見られなかったのに信じられない夜です。

ヤンバルクイナ!いた!
ヤンバルクイナ!いた!
ペアのヤンバルクイナ
ペアのヤンバルクイナ

*ヤンバルクイナの夜間撮影は10分以内で通常5分を目安にストレスを極力かけないようにしています。その後はフクロウ類の発見はないまま終了となり11時過ぎには宿に戻りました。

 

<4日目>

5時30分に出発してルーティーンで鳥たちを待ちます。ヤンバルクイナはなぜか出ません。ポイントの奥からはノグチゲラやアカヒゲの声は聞こえますが姿は見えず。ヤンバルクイナはその後出てくれましたのでほっと一息。1名の方が「カニが撮りたいから行っていいか?」と言われたのでヤンバルクイナも今までしっかり撮れているのでOKを出しました。彼女が出ていて10分もしたでしょうか?参加者の男性が上にカメラを向けています。そのあたりを見ていると黒い鳥が木の幹にとまっています・・・ノグチゲラです!めっちゃ近いのでみなさんに「ノグチゲラだから撮って!」と伝えました。結構長く出ていてくれみなさん撮れたと喜んでいます。最初に狙っていた方が「これノグチゲラだよね?」とモニターに映っている鳥はイソヒヨドリのメス?どうやら2羽出ていて私はイソヒヨドリに気がついていなかったようで、彼は本命ではないものをずって撮ってしまっていたようでした。

ノグチゲラ
ノグチゲラ
イソヒヨドリ
イソヒヨドリ

その後はシギ・チドリを狙う予定が2か所とも激しい雨風で外に出られそうもないのでそのまま空港に向かい終了となりました。

今回は過去最高というか私もびっくりするくらいのヤンバルクイナとの遭遇&撮影ができただけでなく最後はノグチゲラのサービスもありフクロウ類やアカヒゲは残念でしたが120点の内容だったと思います。


撮れた鳥
ヤンバルクイナ・セイタカシギ・タカブシギ・ノグチゲラ・リュウキュウヒヨドリ・リュウキュウメジロ・リュウキュウコゲラ・リュウキュウシジュウカラ・スズメ・イソヒヨドリ・オキナワキノボリトカゲ・シリケンイモリ・リュウキュウアオヘビ・ヤンバルヤマナメクジ
オリイオオコウモリ

見れた鳥・さえずりが聞けた鳥
ミサゴ・カラスバト・ズアカアオバト・リュウキュウコノハズク・リュウキュウアオバズク・リュウキュウアカショウビン・カワセミ・ツバメ・リュウキュウツバメ・リュウキュウサンショウクイ・ホントウアカヒゲ・ウグイス・リュウキュウハシブトガラス・クマネズミ・リュウキュウヤマガメ

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員